婚約者を腹違いの妹に寝取られ婚約破棄されましたが、何故か騎士様に求婚されたので幸せです!〜むしろ溺愛されすぎて困惑しています〜

るん。

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35話「冒険者ギルド」(4)

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「──ケイ様、アン。こんなところまで足を運んで頂きありがとうございます。……それに……ルタも来ましたか」

銀髪で美しいオッドアイが特徴的なハーフエルフは、ルタ様を見ると少しげんなりとした表情を見せた。



──街の中心街で1番大きな建物が“クラリス冒険者ギルド“だ。

まず正面にある大きな依頼カウンターが目に入り、受付嬢と思われる綺麗な女性が冒険者らしき人達とやり取りをしているのが見える。

周囲を見渡すと大きな丸い机が幾つも不規則に並んでいて、その丸い机を囲むように冒険者や住民と思われる人々が楽しそうに飲食をしていた。



「なんだか……とても活気がある場所ですね」
「ふふ、とても活気がある所でしょう?」
「はい、皆が生き生きとしていて素敵です。それと……ここは火災の被害を殆ど受けなかったと聞きましたが実際はどうだったのでしょうか」
「そうですね、ギルドは火災による被害は殆どありませんでしたよ。ここはクラリスの中心部であり、簡単には壊れないように出来ていますからね」


築100年を超えるというこの建物は火災の中心部であった中央街のど真ん中に位置していたのにも関わらず火災の被害は殆ど無かったとルタ様から聞いていた。マーシュはクラリスの建物は木造が多い中でギルドだけは石材で頑丈に造られているからだと言う。

「……まあいっその事、こんな古い建物は建て直して欲しかったですが」

マーシュは柔らかい笑みを浮かべながらとんでもない事を言う。彼の小さな小言は聞こえなかったことにしよう。



***


──マーシュに連れられ冒険者ギルドの2階へと上がっていく。ギルドは吹き抜けの構造となっており階段と2階部分から1階の様子が見渡せる造りになっていた。


「ギルド内には女性や高齢の方、子供までいるのですね」

冒険者ギルドを訪れて驚いたのは、冒険者達の男女比とその年齢層の幅だ。
冒険者ギルドには、たくましい体を持つ筋肉隆々の男性が多いと思っていたが、実際には若い男女は勿論、70~80歳代と思われるご高齢の方や10歳前後と思われる幼い子供さえもいた。


「……ふふ。意外とギルドはむさ苦しいところではないでしょう?」
「むさ苦しいだなんてそんな……。しかし、冒険者と言うと大剣を背負った筋肉隆々の男性方ばかりだと思っておりました」
「そういう冒険者にはイメージもありますよね。クラレンス領は領主のクラレンス家の方針もあって幼い頃から性別問わず義務教育で魔法や剣術を学ぶので戦える者が多いのです。その為、冒険者ギルドで冒険者として本職をしている者だけではなく、ちょっとしたお小遣い稼ぎに依頼をこなしている人達が沢山いるのですよ」
「クラレンス領に出現する魔物達は他の領土に比べて強力なことが多いからな。ギルドで依頼をこなして行けば、収入を増やせるというメリットだけではなく自衛する力を身に付けることが出来るという事もあるんだ。勿論、魔物の討伐など危険な依頼は実力が伴わないと受けることが出来ないし、代わりに騎士団が処理したりする。ケイの見た通り、冒険者の年齢や男女の垣根はあまりないのがクラリス冒険者ギルドの特徴だな」
「……ケイ様も冒険者登録すれば治癒魔術師ヒーラーとして依頼を受ける事が出来ますよ」
「──ひゃっ……!」

話の途中、マーシュがいきなり顔を近づけて来る。先程から歩いてる時に私の隣にピッタリと並んでいるなとは思っていたが、こんなに急に距離を詰めてくるなんて驚いた。

切れ長のライトグリーンとイエローの美しいオッドアイが私を捉えている。

彼に見惚れる訳では無いが、本当に美しい造形をしているなと美術品を見るような気持ちで彼の顔を見てしまう。

「……マーシュ」

私とマーシュの間にすかさずルタ様が入ってきて、私の手を取った。

「ルタ、私がケイに説明しているのですよ」
「お前がした説明ぐらい俺にも出来る。あとケイと少し離れろ、さっきから近いぞ」
「そうですマーシュ様。ケイ様はルタ様の婚約者です。先程から異様に距離感が近いように感じます。離れていただけますか」

その後もマーシュへルタ様とアンが批判の集中砲火を浴びせた。

私は彼に顔を近づけられるまで距離感が近いだなんて思わなかったのだけれど、言われてみればマーシュと合流してから常に隣に彼はいた気がする。

でも、マーシュという人物はパーソナルスペースが近いだけで、ルタ様やアンが言うように私を意識して近付いているという訳ではないと思うのだけれど。


「ケイは無防備過ぎて危なかっしい。やはり俺も来て正解だった」
「そうですね。マーシュ様相手では私だけではケイ様をお守りする事は難しいでしょう」
「あ、あの。二人共、気にしすぎですよ……?」
「「そんな事はありません」」


マーシュはその様子を見てフフフと微笑み、私は息ピッタリの二人の謎の圧に少し圧倒されるのだった。






✩︎誤って***から上の部分が抜けた物を更新してしまいました。更新直後にお読みいただいた方、大変申し訳ありません。
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