続きは第一図書室で

蒼キるり

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8.妹の秘密

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「お前、それ見ないほうが……美奈?」

 中を見ると絶句ものだろうと忠告したものの、美奈の様子がおかしい。
 頬を赤らめていて、なにやら息が少し荒い。熱でもあるんだろうかと心配するほどだ。でもそれよりおかしいのは、堪え切れないように口元に笑みが浮かんでいる事。

「美奈、お前……大丈夫か?」

「大丈夫かじゃないよ、お兄ちゃん!これ私が好きな作家さんの数少ない商業ものだよ!私も一冊持ってるけど、お兄ちゃんが見てるなんてびっくりしたよ!お兄ちゃん趣味良いね!」

「はっ!?いや、俺のじゃないから!」

 何言ってんの!?てかなんでこの本のこと知ってるんだよ!
 ふと、浩也が言っていた事を思い出して、もしやと尋ねてみる。

「お前、こういうの好きなの?」

「……お兄ちゃんもでしょ?」

「いや全く。いつも話してるだろ?浩也になんか入れられてただけで……」

 そこまで話すと先程と打って変わって美奈は心なしか顔を青くしている。

「……忘れてください」

 力が抜けたように美奈が床にへたり込む。
 今の違うから!と頭を振りながら懇願してくる。

「いや、別に良いだろ。……って、なんでそんな泣きそうになってるんだよ」

「……普通に社会的に死ねます。腐女子への風当たりは想像以上に強いのです」

 ……何言ってるのか、全然分からないんだが。
 つまり、美奈はこういう本みたいなのが好きで、でもそれを人に知られたくないって事……であってると思うんだけど、いまいちなんでこんなにテンパってるのかが分からん。

「俺はこういうの分かんねーけど、別に趣味だろ?そんな必死にならなくても大丈夫だろ」

「……お母さんに言わない?」

「言わない」

 そもそも言ったところで笑って好きにしなで終わると思うけどな、あの人は。

「……なら、いいや。お兄ちゃん絶対言わないでよ!」

「言わないから、さっさと英語の教科書見せろよ。お前なにしに俺の部屋来たんだよ」

 そう言うと忘れてたと教科書をぺらぺらとめくり出した。

「……お兄ちゃんさぁ、この本浩也って人に入れられたんでしょ?」

「そう。……これやっぱり読んだほうがいいのか」

「それは絶対読むことをお勧めするけどね。浩也って人、多分」

 暇だし読んでみるか。躊躇はすごくするが。

「で、多分なんだよ?」

「多分お兄ちゃんの事……やめとく。一般人のお兄ちゃんにはこの考え通じないだろうし。そもそも、そうだったとしたらお節介だし」

 ……何の話をしてるのかがさっぱり分からん。どんな考えだよ。てかお節介ってなんだ?

「んー、気にしないで。それよりここ教えて」

 教科書に挟んでいたらしいプリントを指差す。そもそも中一の英語って教えるも何もないよな、と思いながら英文に目を通した。
 首を捻っている美奈にこっちも首を捻りながら教え方を考える。
 あいつの言ってた練習もこんな風に教えるだけの気持ちだったんだろうかと、ふと思った。
 てことは、あいつは色々経験があるわけで……それを俺にするのも特に何とも思わない。こんな風にただ教えてやってるだけの気持ちで。
 それがなんとなく嫌だなと思ってしまった。
 それがどうしてかは、分からなかったけど。
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