前世で私を見殺しにした夫を選ばず、今度こそ愛してくれる人と幸せになります

ria_alphapolis

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第1話 処刑台

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 石畳の冷たさが足裏から伝わってくる。

 群衆の罵声が耳を劈く。

 魔女、売国奴、恥知らず。かつて祝福の声を浴びせてくれた民たちが、今は憎悪の眼差しを向けている。

 私はゆっくりと階段を登る。一段、また一段。頂上には断頭台が待っている。

 なぜ、こうなったのだろう。

 三年前、王子との婚約が決まった日を思い出す。
 
 花に囲まれた舞踏会。
 
 彼は優しく微笑み、私の手を取った。愛していると囁いてくれた。あの日は本当に幸せだった。

 結婚式も盛大だった。国中が祝福してくれた。私は王妃になり、この国の未来を彼と共に築くのだと信じていた。

 けれど、現実は違った。

 王宮に入ってすぐ、彼の態度が変わった。公務では丁寧に接してくれるが、二人きりになると目も合わせない。
 
 寝室は別々。会話は必要最小限。私が話しかけても、冷たい返事が返ってくるだけ。

 何が悪かったのか、何度も問いかけた。でも彼は答えなかった。ただ「国のため」とだけ繰り返した。

 そして一年前、突然の告発。王妃が敵国と内通していると。
 証拠は全て捏造だった。

 けれど誰も信じてくれなかった。

 夫も、父も、誰も。

 裁判は形だけのものだった。弁明は許されず、判決は既に決まっていた。死刑。

 階段の最上段に辿り着く。処刑人が無表情で私を見ている。その後ろには断頭台。刃が鈍く光っている。

 群衆の罵声が一層激しくなる。石が飛んでくる。頬に当たり、生温い液体が流れる。痛みはもう感じない。

 処刑台の前に立たされる。跪くよう命じられる。冷たい木の感触。首を乗せる場所が目の前にある。

 ふと、群衆の中に一人だけ違う表情の人物を見つける。

 騎士団長だ。

 彼は泣いていた。

 なぜ。

 私たちはそれほど親しくなかったはずだ。宮廷では時折すれ違う程度。

 言葉を交わしたことも数えるほどしかない。

 それなのに、なぜあんなに悲しそうな顔をしているのだろう。

 彼の瞳が私を捉える。その目には、罵声を浴びせる民たちとは全く違う感情があった。悲痛、後悔、そして。

 何か、知っているような。

 まるで、私の全てを理解しているような。

 そんな目で、私を見ていた。

 処刑人の声が響く。最期の言葉はあるか、と。

 私は首を横に振る。もう何も言うことはない。誰も信じてくれないのだから。

 首を台に乗せる。木の冷たさ。群衆の興奮した叫び声。

 もう一度だけ、騎士団長を探す。

 彼はまだそこにいた。涙を流したまま、じっと私を見つめていた。

 なぜ、あの人は泣いているの。

 その問いの答えを知ることなく、刃が落ちる音が聞こえた。

 世界が、暗転した。
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