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#2 ぼくとわたしと禁断の数字【糾弾ホームルーム篇】

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 自らの命を晒した無実の証明。安藤は【ナンバーキーパー】ではないから、宣言した【1】は【デスナンバー】ではない。ゆえに【1】を宣言して何事もなかった時点で、安藤が【ナンバーキーパー】ではなかったことが確定する。この手法を応用すれば【ナンバーキーパー】を絞り込むことができるだろう。

「昼安藤君の【デスナンバー】は承知しましたぁ。ではぁ、続いて五十嵐さぁぁん。五十嵐小雪さぁぁん」

 果たして小雪が応用に気付いてくれるのか。むしろ、全員が安藤のやったことを応用してくれれば、自ずと【ナンバーキーパー】だけがおかしな数字を【デスナンバー】として宣言することになる。ここでの彼女の判断は重要だった。

「――え、えっと。それじゃあ【33】で」

 ――その数字に果たして根拠はあるのか。ただなんとなく、漠然と提示したものではないのか。安藤は小雪のほうを見ずに、小さく溜め息を落とした。ここで彼女が宣言すべきだったのは【33】などという限界数ギリギリのナンバーではなくて【2】なのだ。小雪にとって最低限宣言しなくてはならなくなる【2】を宣言して欲しかった。そして、この流れに全員が乗って欲しかった。

 安藤は自分が宣言すべき最低限の数字を【デスナンバー】とした。これで【1】を宣言して何事も起きなければ、自身が【ナンバーキーパー】ではないと証明することができる。もちろん、必要最低限の数字しか宣言する必要がないから、順番的に次になる小雪が最低限宣言しなければならなくなる数字は【2】となる。後は安藤と同じ手順をたどれば、小雪が【ナンバーキーパー】ではないことが証明できる。

 安藤の策略は小雪にのみ通用するものではない。その次の伊勢崎は【3】を【デスナンバー】として指定し、実際に【3】を宣言すればいい。そのさらに次の芽衣は【4】を【デスナンバー】として指定して――と言った具合に、自分が指定した【デスナンバー】を、自分で宣言しなければならないという状況さえ作り出してしまえば、本物の【ナンバーキーパー】が尻尾を出していたはずなのだ。

 当たり前であるが、本物の【ナンバーキーパー】が指定した数字は、正真正銘の【デスナンバー】となる。つまり【ナンバーキーパー】は、それが【デスナンバー】だと知っておきながら、安藤の作り出した流れに沿って、自ら宣言しなくてはならなくなる。むろん、そのような結末になるのを避けるために、本物の【ナンバーキーパー】だけ流れに乗らないことになるだろう。つまり、安藤の考える流れが完璧に成立していた場合、本物の【ナンバーキーパー】だけ、流れから外れたトンチンカンな数字を宣言するはずなのだ。
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