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#3 罠と死体とみんなのアリバイ【復讐篇】

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 現時点で確実に分かっていること――星野崎が道場に入る姿は誰もが目撃しているということ。体育館の前に集まれと言われているのに、しかし道場に向かうのは明らかにおかしいし目立った。けれども、誰も星野崎に声をかけようとはしなかったし、わざわざ道場まで向かおうともしなかった。なぜなら、彼は当初よりクラスでは嫌われていて、爪弾きにされていたから。それに加えて、改めてクラスが一致団結を誓った際に、彼だけがいなかったというのも大きい。

 次に確実なことは、星野崎が道場に入ってから、香純が星野崎を発見するまでの間、道場には誰も出入りしていなかったということ。ちなみに、星野崎の遺体の第一発見者は香純である。体育館の前でみんなと姫乙を待っていたのだが、トイレに行くためにその場を離れたそうだ。道場にもトイレはあるものの、しかし星野崎が入ったまま出てこない道場の中に入るのも嫌だ。結果、道場の前を通り過ぎ、他のトイレに向かおうとしたところ、うっすらと開いたままだった道場の引き戸の隙間から、倒れている星野崎の姿を発見して、一同に知らせた。そして、現在にいたるわけだ。

 星野崎が道場に入ってから、遺体となって発見されるまでの間、体育館前から離れた人間はいたものの、道場に足を踏み入れた者はいない。しかし、遺体や現場の状況から考えると、明らかに道場の中に第三者がいた形跡がある。

「実は僕達の中に犯人がいない――なんてパターンはありなんだろうか?」

 ぽつりと漏らすと、本田が「もっと俺にも分かるように言ってくれ」と、溜め息混じりに漏らす。自分の頭の中だけで理解しても駄目だと、安藤は言葉を選びながら詳細を語る。

「僕達の中にはアベンジャーがいて、アベンジャーは罪を犯しても罪に問われない。だからこそ復讐……事件が発生する――という図式があるわけだけど、この学校内でアベンジャーではない人間が事件を起こしてはならないというルールはないんだよ。もちろん、暴かれてしまえば罪に問われるだろうし、国にも法律にも守ってもらえないだろうけど、でも事件を起こそうと思えば誰にでも起こせるんだ」

 できるだけ噛み砕いたつもりだったのだが、しかし本田にはうまく伝わらなかったようだ。首を傾げる彼の姿に、芽衣がフォローへと入ってくれた。

「簡単に言えば、姫乙が星野崎君を殺したって可能性も、ルール上だけで考えるならあり得るってことよ。まぁ、広義的――というか、常識的に考えるのであれば、犯人も犠牲者もモデルケースとなっている2年4組の中にいないとアンフェアだけどね。もし推理小説だったら大ブーイングの結末だわ」
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