368 / 468
#3 罠と死体とみんなのアリバイ【エピローグ】
2
しおりを挟む
その場では動かず、大人しくしていることもできただろう。しかしながら、それなりのリスクを犯したということもあり、このまま何もせずに終わるわけにはいかなかった。何よりも、決定打となる証拠がなければ安藤達が勝てなくなるかもしれない――そう考えると、何もせずにはいられなかったのだ。自分の存在価値を失ってしまいそうで恐ろしかった。
結果的に彼のやったことは安藤達にとってプラスになった。縁の下の力持ちとまではいかないが、人知れず安藤達をサポートできて嬉しかった。もっとも、こんな無茶なことをお願いしてきた彼女――大槻だけは、自分のやったことに気づいていたようであるが。
さてさて、なんとか一矢を報いることはできたものの、ここに長居をするわけにはいかない。何よりも勝手なことを自分がしてしまったせいなのか、姫乙がご立腹だった。もしも自分の正体が姫乙にでもばれてしまったら何をされるか分からない。
相も変わらず国営テレビが安藤達の姿を追っている。これまでと変わらずに正面玄関から彼らが出て行く様を放送するのであろう。そして、その場には姫乙が大抵一緒にいる。この時ばかりは、国民の意識はもちろんのこと、現場にいる人間の意識も正面玄関に集中する。だから、離脱するならその隙をついて裏口から――というのも大槻のアドバイスだった。彼は彼女の言う通りに学校の裏口へと向かう。
ガスマスクをつけているせいか妙に息が上がる。もうここまで来てしまったら、鑑識官に変装している必要もない。仮に誰かに見つかっても、自分は学校内に忍び込んでいても不思議ではない立場だ。咎められるようなことはあっても命までは取られまい。一方、鑑識官に扮して安藤達のサポートをしたことがばれたら、命どころの騒ぎでは済まなくなるかもしれない。
彼は途中の教員用のトイレに入る。一応、大槻から忠告された通り、監視カメラの位置には最大限の注意を払ったつもりだ。うまいこと監視カメラの死角をついてトイレに入ったつもりだし、トイレならば監視カメラも設置されていないだろう考えてのことだった。
「あー、思ったよりキツイわこれ」
ガスマスクを脱ぐと、とりあえず頭を大きく振る。汗が飛び散り、そして頬に張り付いていた髪の毛がほどける。
「さてと――次は国営テレビのアナウンサーとの接触だったか。俺は追放者だってのに、随分と人使いが荒いな、大槻のやつ」
鑑識官の服を脱ぐと個室のトイレに放り投げる。動きやすいようにとジャージで来たわけだが、結果的に大正解だったようだ。
――そこには、第二のホームルームで追放された坂崎朝陽の姿があった。
結果的に彼のやったことは安藤達にとってプラスになった。縁の下の力持ちとまではいかないが、人知れず安藤達をサポートできて嬉しかった。もっとも、こんな無茶なことをお願いしてきた彼女――大槻だけは、自分のやったことに気づいていたようであるが。
さてさて、なんとか一矢を報いることはできたものの、ここに長居をするわけにはいかない。何よりも勝手なことを自分がしてしまったせいなのか、姫乙がご立腹だった。もしも自分の正体が姫乙にでもばれてしまったら何をされるか分からない。
相も変わらず国営テレビが安藤達の姿を追っている。これまでと変わらずに正面玄関から彼らが出て行く様を放送するのであろう。そして、その場には姫乙が大抵一緒にいる。この時ばかりは、国民の意識はもちろんのこと、現場にいる人間の意識も正面玄関に集中する。だから、離脱するならその隙をついて裏口から――というのも大槻のアドバイスだった。彼は彼女の言う通りに学校の裏口へと向かう。
ガスマスクをつけているせいか妙に息が上がる。もうここまで来てしまったら、鑑識官に変装している必要もない。仮に誰かに見つかっても、自分は学校内に忍び込んでいても不思議ではない立場だ。咎められるようなことはあっても命までは取られまい。一方、鑑識官に扮して安藤達のサポートをしたことがばれたら、命どころの騒ぎでは済まなくなるかもしれない。
彼は途中の教員用のトイレに入る。一応、大槻から忠告された通り、監視カメラの位置には最大限の注意を払ったつもりだ。うまいこと監視カメラの死角をついてトイレに入ったつもりだし、トイレならば監視カメラも設置されていないだろう考えてのことだった。
「あー、思ったよりキツイわこれ」
ガスマスクを脱ぐと、とりあえず頭を大きく振る。汗が飛び散り、そして頬に張り付いていた髪の毛がほどける。
「さてと――次は国営テレビのアナウンサーとの接触だったか。俺は追放者だってのに、随分と人使いが荒いな、大槻のやつ」
鑑識官の服を脱ぐと個室のトイレに放り投げる。動きやすいようにとジャージで来たわけだが、結果的に大正解だったようだ。
――そこには、第二のホームルームで追放された坂崎朝陽の姿があった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
82
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる