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#1 毒殺における最低限の憶測【復讐篇】

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「これもデスゲームあるあるですよねぇ。なんだか不気味さを出すためにぃ、ファンシーで可愛らしいマスコットを出しとけぇ――みたいなぁ。そういった意味ではぁ、デスゲームあるあるに逆らえませんでしたよぉ。なんせぇ、姫乙というマスコットがいるのですからぁ。姫乙という癒しがありますからぁ」

 その一方で絶好調なのが姫乙だ。水を得た魚のように饒舌じょうぜつで、楽しくて仕方がないといった様子だ。これだけの人数が死んだというのに、なんとも思わないのだろうか。――まだまだ続く。妙に間延びした口調のくせに、姫乙のマシンガントークは続く。

「そうそう……どうしてアベンジャーをホームルームで暴く必要があるの? なんて質問もありましたねぇ。あれですよ。私が小学生の頃――帰る前に【帰りの会】というのがありましてねぇ。まぁ、簡単に言えばホームルームなわけなんですが、そこがまぁ糾弾の場だったんですよぉ。もうね、担任の教師が明らかに生徒のことを依怙贔屓えこひいきするような女教師でしてねぇ、みんな気に入られようとね、その会でお互いを糾弾するんですよぉ」

 姫乙が喋っている間も、ガスマスク鑑識官達は黙々と動き続けている。遺体を調べる者、教室の写真を撮る者――それぞれが役割をしっかりと決め、効率よく調べているようだった。

「やれ、誰々さんが何々をしたから悪かったと思いますぅ。誰々くんが何々をしてたのはぁ、いけないことだと思いますぅ。それをねぇ、担任は楽しそうに眺めていましたよぉ。生徒同士が、お互いに糾弾し合うのを――みにくく告げ口し合うのをねぇ。今の時代では考えられないかもしれませんけどぉ、当時の【帰りの会】というのは、その日の犯罪者をでっち上げ、そして吊し上げる会だったのですよぉ。ある意味、人間の本性が出る場――とでも言いますか。強き者が弱き者を狩り、弱き者は抗う術もなくぅ、それが事実かどうかも分からぬままぁ、クラスの中で淘汰されるぅ。ですからぁ、今回はホームルームを採用したのですぅ」

 今この場で、冷静に姫乙の話を聞けている人間は、果たしてどれだけいるのだろうか。クラスメイトが数人倒れ、ガスマスクを被った鑑識官が右往左往するなかで、冷静に話を聞けというほうが難しい。しかし、どうやらいたようだ。冷静に現実と向き合えている者が。

「ちょっといいですか?」

 誰もが混乱している中で、さっきと全く変わらぬ口振りで手を挙げたのは――芽衣だった。そんな芽衣の冷静な姿に、姫乙はいやらしい笑みを浮かべる。
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