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魔王城
トワ1
しおりを挟む午後3時にルイとベルが瞬間移動で待ち合わせの寮の前に来た。瞬間移動では一度行った場所にしか行けないから、ルイとベルを俺の部屋に案内する。これでこれからはルイが俺の部屋に瞬間移動出来るってわけだ。
瞬間移動が出来る魔族に触れていると一緒に運んでもらえるが、もちろん人数には限界がある。ルイクラスの魔族だと、大体二人までなら一緒に飛べるとの事だ。ちなみに精霊は契約者と一心同体なので、もれなく一緒に付いて来る。
「じゃあ、行くよ?」
「おう。」
ルイ手を握り、一瞬で俺の部屋から魔王城に着く。そこには、ショウと契約精霊のマル、そして王妃のアスラ様らしい人物と、黒白猫で純白の翼を持つ精霊がいた。
「いらっしゃい!トワくんだね。アスラです。こっちは俺の契約精霊のリイ。よろしく!」
「は、はじめましてアスラ様。トワと申します。こっちは契約精霊でオオヤマネコのリンクです。」
「へぇ?オオヤマネコは初めてだなぁ。リンクもよろしくな。」
気さくだ・・王妃様なのにすげぇ気さくでびっくりだよっ?!
「トワ、はじめまして。ショウだ。こっちはマル。オレたちの前世の未来を教えてくれてありがとう。ルイがすごく嬉しそうでオレも嬉しい。それに、オレも前世のオレがやっと素直になったのを知れて嬉しいよ。」
ごく自然にルイの腰に手をまわし、自分方に引き寄せながらオレに話しかけて来るショウ。う~ん、異世界は日本よりスキンシップが激しいのか?堂々とイチャコラしてやがる。
「ショウ・・いえ、ショウ様、はじめまして・・・」
「おいおい、オレも前世では友だちだったんだろ?そんなかしこまらなくていいぞ。」
「いえ、でも俺は一介の留学生なんで次期魔王候補様に・・・」
「それを言うなら僕もだから。ショウにも普通に喋ってあげて?ね?」
ルイの笑顔にデレデレのショウ・・うん、何かかしこまってたのがアホらしくなって来たわ。だって、前世のショウと変わらないデレっぷりだし。
「おう。分かった。ショウには普通に話す。」
うんうん、と頷くルイとショウ。
「俺にも普通に喋って欲しいけどな~まぁ、一応王妃だし無理か。」
「あっ、あの、俺、前世でASURA先生の作品はほとんど読んでます!正直、推し作家でした!!」
「マジで?嬉しいなぁ。俺、この世界でも書いてるんだよね。前世のとは同じじゃないと思うけど、読んでみる?」
そう言ってアスラ様は数冊の本を渡してくださった。
「うわぁ!!めちゃくちゃ嬉しいです!!!これ、いただいていいんですか?」
「いいよ。気に入ったらルイのお母さんがやってるマジョリカって店に行ってみて?全作置いてあって、店の中なら自由に読めるから。」
「マジですか?!ルイママこっちでもカフェやってるんだ。前世でもマデリカにはよく行ったなぁ。」
「マデリカ・・めちゃくちゃ懐かしいなっ!俺も高校の時は毎日のように通ってたなぁ・・・」
それから色々と話を聞いていると、アスラ様も俺たちと同じ高校に通っていたとの事。しかもどうやら美見会の始まりは、魔王様の親衛隊としての活動だったらしい。って事は、魔王様とアスラ様の為に今の同性愛に寛容な校風が作られたのか・・・やっぱりすげぇ人だわっ!
けど、アスラ様は始終気さくに話してくださり、俺はすっかり打ち解けてしまった。
「何かさ、前世でトワくんに初めて会った時に、アスラさんに似てるなって思ったのを思い出したよ。」
「あぁ、分かる。オレも今そう思ってた。見た目は可愛いのに漢な性格とかがな。」
ルイとショウがそんな事を言っていたが、俺とアスラ様は気にせず喋りまくったんだ。
「アスラ様、盛り上がってるところ申し訳ございませんが、そろそろトワくんにドラゴン族の話をしたいのですが・・・」
ルイに遠慮がちに声をかけられて、アスラ様はハッと気付いたかのように立ち上がる。
「ヤッバ、俺そろそろ戻らなきゃ、またキョウ(魔王の名)が拗ねる。トワくん、俺はこれで失礼するよ。次はマジョリカでお茶しようなっ!」
「あっ、はい。今日はありがとうございました。」
そう言う俺に手を振って、アスラ様はリイ様とともに出ていかれた。
「・・魔王様はアスラ様を溺愛してるからね。」
「ヤバいくらいにな。」
ベッタリ引っ付いたままのショウとルイを見て、お前らが言うなよ!って思ったけど、まぁ、それ以上にすごいんだろうなぁ・・と何となく察して俺は口をつぐんだんだ。
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