聖女は断罪する

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07. 無垢な二人と無垢と言いがたい一人

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 ライン公爵夫妻は体の弱い娘、ルシアを心配し夕方以降は夫婦のうちどちらかが必ず家にいる、と決めていた。社交界デビュー前のルシアにはその意味はわかっていないが両親が自分を心配しているのは十分理解していた。
 なのでルシアはヴィヴィアンヌが来る日が好きだったしもちろんヴィヴィアンヌも好きだった。

「お父様と出かけるとお母様が嬉しそうで」

ルシアも嬉しそうに笑う。

「翌日も期限いいしね。お父様基本穏やかなんだけどお母様が、ね」

ルシアにも苦労があるんだなぁとレイラはのんびり考えていた。

「レイラのご家族は?」

「お母様は私が5歳の時に病気で……」

レイラは多分ルシアが同情すると計算していて、その通りになった。ルシアはレイラの手を両手で包む。

「辛かったでしょう?」

「そんな時にお母様のお友達の師匠が来てくれて。寂しさは薄れて行ったわ」

「伯母様が森にいたのはそういう事だったのね!」

「ルシアと森で遊びたいなぁ」

ヴィヴィアンヌはニコニコと二人を見守っていたが、ルシアは己の魔法で他人を動かしレイラは状況と相対する相手の性格を読んで他人を動かせるのだ、と己の教育の成果を見ていた。

 「二人とも寝なさいよ。今日も私のベッドで寝ていいから」

ルシアとレイラはキャッキャとふざけながら侍女に連れられ湯あみに向かった。



 真夜中近くにライン公爵夫妻が帰宅し、ライン公爵がそっとヴィヴィアンヌの部屋に入って来た。

「今日はドゥエスタン伯爵代行が妻と……10才だというレイラの妹とか言っているあの娘も連れて夜会に来てました。王都の学校を受けさせると……。読み書きが満足できない娘をどうやって学校に通わせるんですかね」

「あいつら、領地をどうしたのかねぇ。クリスに限って間違いは無いと思うけど」

ヴィヴィアンヌは溜息をつく。

「しかし……伯爵代行は何を考えているのか。下品な服を着た愛人を『伯爵夫人』だと周りに紹介して失笑を買ったり読み書きのできない娘は……途中で庭に若い男と行ってましたし」

公爵は濁したがヴィヴィアンヌには十分に意味は通じた。

「既にユニコーンには見放された感じね?」

「ええ。複数の若い男と一緒に庭に消えましたよ」

「子供が出来なきゃ良いけど。一応クリスには手紙を送っておくわ。シルヴィの、レイラの家に瑕瑾を作らせてはいけませんから。……レイラを鍛え上げるまでドゥエスタンの家を保って、あの伯爵代行バカをコントロールしなければ。最後はレイラの手で伯爵代行を断罪するのが一番いいと思うのだけど」

「それはレイラ嬢の性格の仕上がり次第ですね」

人が好さそうに見える笑顔のライン公爵も実際の所は冷静で公正な男であった。が、貴族であるという事はそれなりの修羅場も潜っている、という事であった。伯爵代行が基本のんびりとしたあったかい頭のままで生きているのはドゥエスタンの分家衆の力量であった。

 大人二人の殺伐とした会話は子供たちの元には届いていなかった。


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