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68. 放課後は温室
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マリエル姫はルシアがいた部屋とナオミ皇女の部屋の間の部屋へ入った。メルヴィンは同じ学内のエミールの家に居着いたらしい。レイラはそれはヴィヴィアンヌから聴いていた。王領からマリエル姫のお目付け役も兼ねた付き人として来たのだが、寮の規定の年齢制限にひっかかりどこかへ(最初はレイラの家をテオは想定していたようだ)下宿をと思っていたらしい。そしてメルヴィンは温室の横と言っていい、畑もあるエミールの家が気に入った、と。今やアルフォンスも住んでいるし、ルシアの授業中に暇の出来たアナがハウスキーピングの腕を発揮していて居心地もいい。
そしてメルヴィンが居着いたのはがらくた部屋と呼ばれているエミールの魔道具とアナの焼くお菓子が決めてだった。
アナの要望でエミールの家の台所は大改造された。また、エミールの給与、フィールズ侯爵家からの支給の金額は跳ね上がっていた。半年で銀貨5枚だったのが金貨5枚になり、滞っていたつけやなんやを支払ってエミールは綺麗な体になった。これはアルフォンスの両親の商会が尽力したらしい。今はアルフォンスの実家の商会から経理の人間が月に一度来てエミールのあれこれを取り仕切っているという。これはアルフォンスの両親のエミールの家に住みこんでしまった記憶の欠けた息子を心配しての配慮とチェックでもあった。
ペールとレイラの離脱と共に、リリスがクラスに戻った。やはりリリスは『副教皇付きの水の聖女候補』という立ち位置らしいが、チャドが冒険者らしく実戦的な実利的なマナーを教えて以前よりはましらしい。そして相変わらずシャルロットと仲が悪いとリチャードからの話だった。
ただし、貴族に対する言葉遣いは随分改まったという。その辺りはレイラはチャドから聞いた。チャド曰く、平民としての利、貴族に対して言葉遣いを改める利、線を引いて接する利など実利の部分の教えたのだと言った。
「あのこは利で動く。ペールや君が理で動くのとは違う生き物だと考えてあげて欲しい」
その上でチャドは溜息をついた。
「代行やその妻や娘は一見利で動いてるように見せているが代行と娘は『快楽』、『楽』で動いている。……あの愛人は、要注意。絶対裏になにかかある」
チャドはレイラの目をしっかり見ながら告げるのであった。
レイラはチャドの言葉を聞いてなにか記憶の奥底から浮き上がってきそうになっていた。見てたはずなのに見えていない何かがあるともぞもぞとおさまりが悪い感じであった。代行の愛人の事であるのと母親が生きている時の事であるのは確実だった。
そのことを考えてレイラは寝不足だった。そして高等部生になってからはエミールの温室で聖水や毒薬を作れる薬草の授業は無くなった。ただし、個人的に温室でエミールとの交流は続いていた。ルシアやロランもこの場所に来る。ヴィヴィアンヌと待ち合わすのだ。
ここが何ああった時に一番安全だ、とヴィヴィアンヌが決めたのだ。ルシアやロランを狙う異性の攻撃もかなり激しくなっている。温室だとエミールもいるし何かあったとしても解毒剤も常備してある。また、レイラとメルヴィンはより強力な解毒剤の作り方や素材を育てている所であった。解毒剤を作れる薬草は育てるのが難しいのだが、メルヴィンが土属性の魔力を基本として持っているので二人でああでもないこうでもないと試行錯誤している。エミールは
「楽出来ていい」
と言いながら二人が引っかかっているところをアドバイスしてくれたり三人で悩んだりしていて今まで以上に元気そうである。
今日は、解毒剤を作り、小瓶の中に出来上がったものを詰めている。久しぶりにお忍びでいつもの教皇の姿になった、人のよさそうな顔つきになったテオが来ている。炯炯と輝く強い目が肉に埋もれて細くなりいつも少し笑ったように見えるようになってテオは人のよさそうな、人畜無害そうな雰囲気を体にまとう。
「テオ様は其方の姿だと善人に見えますね」
レイラが笑いながら言うとテオが本性を出した笑顔でにやりと笑う。
「この姿だと他人が油断してくれるからな」
ふたりはくすくす笑う。
テオがレイラが作った解毒剤の小瓶を手に取り光にかざす。薄い緑の液体が光り、レイラはそれを見て
「あ……」
と声をだすなり崩れ折れた。
「レイラ?!」
テオの声を最後にレイラの意識は失われた。
そしてメルヴィンが居着いたのはがらくた部屋と呼ばれているエミールの魔道具とアナの焼くお菓子が決めてだった。
アナの要望でエミールの家の台所は大改造された。また、エミールの給与、フィールズ侯爵家からの支給の金額は跳ね上がっていた。半年で銀貨5枚だったのが金貨5枚になり、滞っていたつけやなんやを支払ってエミールは綺麗な体になった。これはアルフォンスの両親の商会が尽力したらしい。今はアルフォンスの実家の商会から経理の人間が月に一度来てエミールのあれこれを取り仕切っているという。これはアルフォンスの両親のエミールの家に住みこんでしまった記憶の欠けた息子を心配しての配慮とチェックでもあった。
ペールとレイラの離脱と共に、リリスがクラスに戻った。やはりリリスは『副教皇付きの水の聖女候補』という立ち位置らしいが、チャドが冒険者らしく実戦的な実利的なマナーを教えて以前よりはましらしい。そして相変わらずシャルロットと仲が悪いとリチャードからの話だった。
ただし、貴族に対する言葉遣いは随分改まったという。その辺りはレイラはチャドから聞いた。チャド曰く、平民としての利、貴族に対して言葉遣いを改める利、線を引いて接する利など実利の部分の教えたのだと言った。
「あのこは利で動く。ペールや君が理で動くのとは違う生き物だと考えてあげて欲しい」
その上でチャドは溜息をついた。
「代行やその妻や娘は一見利で動いてるように見せているが代行と娘は『快楽』、『楽』で動いている。……あの愛人は、要注意。絶対裏になにかかある」
チャドはレイラの目をしっかり見ながら告げるのであった。
レイラはチャドの言葉を聞いてなにか記憶の奥底から浮き上がってきそうになっていた。見てたはずなのに見えていない何かがあるともぞもぞとおさまりが悪い感じであった。代行の愛人の事であるのと母親が生きている時の事であるのは確実だった。
そのことを考えてレイラは寝不足だった。そして高等部生になってからはエミールの温室で聖水や毒薬を作れる薬草の授業は無くなった。ただし、個人的に温室でエミールとの交流は続いていた。ルシアやロランもこの場所に来る。ヴィヴィアンヌと待ち合わすのだ。
ここが何ああった時に一番安全だ、とヴィヴィアンヌが決めたのだ。ルシアやロランを狙う異性の攻撃もかなり激しくなっている。温室だとエミールもいるし何かあったとしても解毒剤も常備してある。また、レイラとメルヴィンはより強力な解毒剤の作り方や素材を育てている所であった。解毒剤を作れる薬草は育てるのが難しいのだが、メルヴィンが土属性の魔力を基本として持っているので二人でああでもないこうでもないと試行錯誤している。エミールは
「楽出来ていい」
と言いながら二人が引っかかっているところをアドバイスしてくれたり三人で悩んだりしていて今まで以上に元気そうである。
今日は、解毒剤を作り、小瓶の中に出来上がったものを詰めている。久しぶりにお忍びでいつもの教皇の姿になった、人のよさそうな顔つきになったテオが来ている。炯炯と輝く強い目が肉に埋もれて細くなりいつも少し笑ったように見えるようになってテオは人のよさそうな、人畜無害そうな雰囲気を体にまとう。
「テオ様は其方の姿だと善人に見えますね」
レイラが笑いながら言うとテオが本性を出した笑顔でにやりと笑う。
「この姿だと他人が油断してくれるからな」
ふたりはくすくす笑う。
テオがレイラが作った解毒剤の小瓶を手に取り光にかざす。薄い緑の液体が光り、レイラはそれを見て
「あ……」
と声をだすなり崩れ折れた。
「レイラ?!」
テオの声を最後にレイラの意識は失われた。
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