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50,天使のハーブ
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別荘に戻った私は早速今日採取した植物の蒸留を始める。
ドクダミは蒸留には向いていないので、蒸留するのはアンジェリカだ。
精霊の根、ということは根に有効成分が含まれているのかしら?
綺麗に洗って乾かし、花、葉、茎、根に分ける。
鍋に入るくらいにカットすれば準備完了だ。とりあえず一度目は全て入れて蒸留してみよう。
早速蒸留すると、甘みよりも刺激の強いスパイシーな香りが立ち込めてきた。
蒸留するとこんな香りになるんだ、と思っていると
「わぁ!すごい香り。森の中にいるみたいですねぇ!」
とアンナとマリーが来た。
「何かお手伝いすることはありますか?」
「ね、すごい香りよね。とっても濃い香りだわ。こっちの香りを嗅いでみて?」
と蒸留する前のアンジェリカを見せる。
「あれ?こっちは甘い香りですね。」
「そうなの。だからそういう香りになるのかな、と思っていたんだけど想像とは全然違ったわね。」
「でも癒される香りですね。なんだかとても落ち着きます。」
「少し癖のある香りだから好き嫌いが分かれそうよね。でも効果はとても高いと思うわ。」
今日は慣れないことをしたし、魔力も久しぶりにかなり使ったから疲れていたけど、この蒸留を始めてから身体が楽になったように感じていたのだ。
他にも効果があるから、検証してみたいと思っていると、
「あの…実は私今日はずっと頭痛がしていたのですが、その症状が緩和されてきたように感じます。」
とマリーが言い出した。
「本当に?!」
「はい。なんか身体が楽になったように感じます。」
「さすが天使のハーブと言われるだけあるわね。本当に貴重なんだわ。」
「天使のハーブですか?」
「そう言われているハーブなのよ。たまたま見つけたんだけど、明日も採取してこようかと思ってるわ。ここにいる間に瓶一本分作りたいわね。」
そんな会話をしているとあっという間に日が落ちてくる。
この別荘では蒸留は外で行っているため蒸留できる時間は限られているのだ。今日はニ回分しかできなかったわね。沢山やりたいのに時間が足りないわ。
「そろそろお食事の時間ですね。」
「ニ回しか蒸留できなかったわね。」
「よろしければ、お嬢様がお出掛けの時にやっておきましょうか?」
なんと頼もしい!!
「本当に?!」
「あ、でも乾燥させたり氷魔法とかはできないので時間がかかってしまいますが…。」
「それなら氷は沢山準備しておくわ!やってもらえるととっても助かるわ!」
そう言うとアンナもマリーも嬉しそうだった。
私は何でも一人でやってしまうから、仕事がないんだろうな。
心無しか二人は今朝よりも楽しそうだ。
食事を済ませて、入浴をすませると、強烈な眠気に襲われていつもよりもかなり早くベッドに入ったのだった。
◆
起きた時間はいつも通りだったが、寝覚めがとても良かった。
身体が軽いし活力が湧いてくる。
アンジェリカのおかげかな?
アンナとマリーもいつもより体調が良いようだ。
アンジェリカは昨日のうちに全て洗ってカットしてくれたようだ。
アンジェリカの圧倒的な存在感に忘れていたけど、ドクダミも採取したんだった。
こちらもここでは貴重な薬草の一つだ。
アイテムボックスから取り出して二人に頼む。
「ちょっと独特な香りがするんだけど、身体にとてもいいの。これは蒸留しないで、洗って乾かしておいてくれる?」
ドクダミはチンキにして使うつもりだ。
「「お任せください!」」
アンジェリカが気に入ったのか、手伝えることが嬉しいのかは分からなかったが、二人とも機嫌が良い。
「よろしくね。じゃあ私はまた採取してくるわ。」
そしてそれから一週間、ドクダミとアンジェリカの採取、そしてあの辺によく現れる魔物を討伐していると私はEランクに上がったのだった。
薬草を採取することで、ギルドの依頼も達成できるし、アンジェリカも採取できる。魔物の討伐は魔法の練習にもってこいだ。しかもそれでランクが上がるとは。一石四鳥である。
アンジェリカだけをひたすら蒸留して一週間で精油を瓶一本分作ることができた。フローラルウォーターは30数本できた。
「二人のお陰よ。ありがとう!」
「いえ、そんな。私達もお役に立てて嬉しいです。」
「二人の協力がなければこんなに早く作ることはできなかったわ。」
「お嬢様、ここに来られてからとても元気になられて私達も嬉しいのです。」
「その前は塞ぎ込んでいるようだったので心配してたんですよ。私達にも何も言ってくれないですし。」
そう言われて、私は今まで周りの人達に沢山支えられてきたのだと気が付く。この二人を信用出来なくなっていたなんてどうかしていたわ。
「えぇ、でももう大丈夫よ。心配かけてごめんね。」
本当に心身共に楽になっていた。
あんなに悩んでいたのが嘘みたいだ。
◆
アンジェリカの精油を瓶一本分作り終えた私は、ギルドに行って次の依頼を探す。
あれ、この依頼は初めて見るわね。
ダンジョンとは逆にあるノーダンマウンテンという山にある薬草採取だ。
ノーダンマウンテンといえば、強い魔物討伐の依頼がよく出ている場所だ。
どうしようか悩んだが、一度行ってみることにした。
「今日からはこの依頼にしようと思うの。」
「えっ、ノーダンマウンテンへ行かれるのですか?」
「うん、この薬草採取珍しくDランクだからレアなのかなって思って。」
「これは生えている場所に辿り着くのが大変なのでDランクにしてあるんです」
「そんなに大変なの?」
「まず日帰りでは無理ですね。ノーダンマウンテンの山頂に生えているので、登らないと駄目ですし。それにノーダンマウンテンにはブラックベアやオークもいるので危険なんですよ。」
確かに報酬も高めの設定だ。
でも私には飛翔魔法があるから、わざわざ危険な山を登る必要はないのだ。
「でもやってみようかな。期限はいつまで?」
「この花は来月まで咲くので、それまでに達成できれば大丈夫ですよ。」
「わかったわ。じゃあこの依頼で宜しくね。」
「リナちゃん、無理しないで下さいよ。もし万が一ブラックベアに会ったら逃げて下さいね。」
「うん、全力で逃げるわ」
「ではお気をつけていってらっしゃい!」
「行って来るわ!」
こうして私は一人ノーダンマウンテンに行くことにしたのだった。
ドクダミは蒸留には向いていないので、蒸留するのはアンジェリカだ。
精霊の根、ということは根に有効成分が含まれているのかしら?
綺麗に洗って乾かし、花、葉、茎、根に分ける。
鍋に入るくらいにカットすれば準備完了だ。とりあえず一度目は全て入れて蒸留してみよう。
早速蒸留すると、甘みよりも刺激の強いスパイシーな香りが立ち込めてきた。
蒸留するとこんな香りになるんだ、と思っていると
「わぁ!すごい香り。森の中にいるみたいですねぇ!」
とアンナとマリーが来た。
「何かお手伝いすることはありますか?」
「ね、すごい香りよね。とっても濃い香りだわ。こっちの香りを嗅いでみて?」
と蒸留する前のアンジェリカを見せる。
「あれ?こっちは甘い香りですね。」
「そうなの。だからそういう香りになるのかな、と思っていたんだけど想像とは全然違ったわね。」
「でも癒される香りですね。なんだかとても落ち着きます。」
「少し癖のある香りだから好き嫌いが分かれそうよね。でも効果はとても高いと思うわ。」
今日は慣れないことをしたし、魔力も久しぶりにかなり使ったから疲れていたけど、この蒸留を始めてから身体が楽になったように感じていたのだ。
他にも効果があるから、検証してみたいと思っていると、
「あの…実は私今日はずっと頭痛がしていたのですが、その症状が緩和されてきたように感じます。」
とマリーが言い出した。
「本当に?!」
「はい。なんか身体が楽になったように感じます。」
「さすが天使のハーブと言われるだけあるわね。本当に貴重なんだわ。」
「天使のハーブですか?」
「そう言われているハーブなのよ。たまたま見つけたんだけど、明日も採取してこようかと思ってるわ。ここにいる間に瓶一本分作りたいわね。」
そんな会話をしているとあっという間に日が落ちてくる。
この別荘では蒸留は外で行っているため蒸留できる時間は限られているのだ。今日はニ回分しかできなかったわね。沢山やりたいのに時間が足りないわ。
「そろそろお食事の時間ですね。」
「ニ回しか蒸留できなかったわね。」
「よろしければ、お嬢様がお出掛けの時にやっておきましょうか?」
なんと頼もしい!!
「本当に?!」
「あ、でも乾燥させたり氷魔法とかはできないので時間がかかってしまいますが…。」
「それなら氷は沢山準備しておくわ!やってもらえるととっても助かるわ!」
そう言うとアンナもマリーも嬉しそうだった。
私は何でも一人でやってしまうから、仕事がないんだろうな。
心無しか二人は今朝よりも楽しそうだ。
食事を済ませて、入浴をすませると、強烈な眠気に襲われていつもよりもかなり早くベッドに入ったのだった。
◆
起きた時間はいつも通りだったが、寝覚めがとても良かった。
身体が軽いし活力が湧いてくる。
アンジェリカのおかげかな?
アンナとマリーもいつもより体調が良いようだ。
アンジェリカは昨日のうちに全て洗ってカットしてくれたようだ。
アンジェリカの圧倒的な存在感に忘れていたけど、ドクダミも採取したんだった。
こちらもここでは貴重な薬草の一つだ。
アイテムボックスから取り出して二人に頼む。
「ちょっと独特な香りがするんだけど、身体にとてもいいの。これは蒸留しないで、洗って乾かしておいてくれる?」
ドクダミはチンキにして使うつもりだ。
「「お任せください!」」
アンジェリカが気に入ったのか、手伝えることが嬉しいのかは分からなかったが、二人とも機嫌が良い。
「よろしくね。じゃあ私はまた採取してくるわ。」
そしてそれから一週間、ドクダミとアンジェリカの採取、そしてあの辺によく現れる魔物を討伐していると私はEランクに上がったのだった。
薬草を採取することで、ギルドの依頼も達成できるし、アンジェリカも採取できる。魔物の討伐は魔法の練習にもってこいだ。しかもそれでランクが上がるとは。一石四鳥である。
アンジェリカだけをひたすら蒸留して一週間で精油を瓶一本分作ることができた。フローラルウォーターは30数本できた。
「二人のお陰よ。ありがとう!」
「いえ、そんな。私達もお役に立てて嬉しいです。」
「二人の協力がなければこんなに早く作ることはできなかったわ。」
「お嬢様、ここに来られてからとても元気になられて私達も嬉しいのです。」
「その前は塞ぎ込んでいるようだったので心配してたんですよ。私達にも何も言ってくれないですし。」
そう言われて、私は今まで周りの人達に沢山支えられてきたのだと気が付く。この二人を信用出来なくなっていたなんてどうかしていたわ。
「えぇ、でももう大丈夫よ。心配かけてごめんね。」
本当に心身共に楽になっていた。
あんなに悩んでいたのが嘘みたいだ。
◆
アンジェリカの精油を瓶一本分作り終えた私は、ギルドに行って次の依頼を探す。
あれ、この依頼は初めて見るわね。
ダンジョンとは逆にあるノーダンマウンテンという山にある薬草採取だ。
ノーダンマウンテンといえば、強い魔物討伐の依頼がよく出ている場所だ。
どうしようか悩んだが、一度行ってみることにした。
「今日からはこの依頼にしようと思うの。」
「えっ、ノーダンマウンテンへ行かれるのですか?」
「うん、この薬草採取珍しくDランクだからレアなのかなって思って。」
「これは生えている場所に辿り着くのが大変なのでDランクにしてあるんです」
「そんなに大変なの?」
「まず日帰りでは無理ですね。ノーダンマウンテンの山頂に生えているので、登らないと駄目ですし。それにノーダンマウンテンにはブラックベアやオークもいるので危険なんですよ。」
確かに報酬も高めの設定だ。
でも私には飛翔魔法があるから、わざわざ危険な山を登る必要はないのだ。
「でもやってみようかな。期限はいつまで?」
「この花は来月まで咲くので、それまでに達成できれば大丈夫ですよ。」
「わかったわ。じゃあこの依頼で宜しくね。」
「リナちゃん、無理しないで下さいよ。もし万が一ブラックベアに会ったら逃げて下さいね。」
「うん、全力で逃げるわ」
「ではお気をつけていってらっしゃい!」
「行って来るわ!」
こうして私は一人ノーダンマウンテンに行くことにしたのだった。
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