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25,出会い
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ルークお兄様の結婚式の日がやってきた。
まずは教会で式を行う。ここでの参列者は家族のみ。
ルークお兄様はいつもにも増し増しで格好いいし、アマンダ様もとても美しかった。
スレンダー美女羨ましい。とてもお似合いの二人だ。
何よりも正装姿のお父様が素敵すぎて眩しい。神々しくて直視できないくらいだ。
そして我が公爵家へ移動する。
使用人はパーティーの準備で皆忙しそうだ。
昼間はガーデンパーティーにして、夕方くらいから舞踏室へ移動するようだ。
私も準備を始めよう。
季節は冬になろうとしていて、昼間でもやや寒いため公爵邸全体を結界で二重に覆い火魔法で適温にした。
苦手だった火魔法でももうここまでコントロールすることができるようになった。誰か褒めて!
時間が近づくとハーブの香りを風の魔道具によって拡散させ、華やかなムードを演出する。
招待した客も続々とやってきた。
その様子を窓から見ていた私はマリーに、
「すっごい来るわね。さすがルークお兄様、人望が半端ないわね。」
「これでもかなり絞ったようですよ。それに、ルーク様の人望があるのはもちろんだと思いますが、他の理由もあると思いますよ。」
「お父様が騎士団長だから?」
「お嬢様に会いたい方も多いと思いますよ。」
「なんで私?」
自慢じゃないが今まできたお茶会もパーティーの誘いも全て断っていて、子供の頃の誘拐事件以来私は可哀想なお嬢様ということになっている。
「だってあんなにハンドクリームと化粧水が売れているのですよ?その発案者に会いたいと思うのは当たり前のことでは?それにお嬢様の歌は評判ですから。」
「そうなのかしらね?」
私が歌うのを知ってるのは一部の貴族だけなのだけど。ちなみにハンドクリームの発案者と広まっているのは、他ならぬイーサン商会から漏れたらしい。
イーサンは謝り倒してきたけど、もう広まってしまったものは仕方がない。
貴族の噂って怖いな。
ちなみに今日限定の香りで用意したのはゼラニウムの香り。ローズに似ている香りで幸せを表現してみたのだ。
今もこの会場に拡散させている香りだ。
反応をみている限り、この香りはなかなか好評のようで安心する。
時間が来て、お父様達の後ろから私が表へ出るとわかりやすくざわつき始めた。
「あれがエリナリーゼ様?!」
「あの方がハンドクリームと化粧水の考案者?!」
「まだ子供だというのになんという美しさだ!」
聞こえてくるのは恥ずかしくなるくらいのお世辞の嵐。そして嫉妬の眼差し。
それらを華麗にスルーしてお父様たちにならい、挨拶をする。
私はいろいろな人に話しかけられる前に少し離れた場所にある庭園へ避難することにした。
さすがにハーブハウスに籠もるのはどうかと思ったので、外にいるのは最大の譲歩なのだ。
ピアノ演奏をする前に花の香りで癒やされよう。
「やっぱりここは癒やされるわね、マリー。」
少し人前に出ただけでげんなりしてしまったのだ。
「えぇ、花の香りがとても心地いいですね。」
「ずっとここに居られるわよね。本当に落ち着くわ。
それにしてもあんなに人が多いのは初めてよ。人に酔いそうだわ。」
「お嬢様お茶会にも全部欠席してましたもんね。」
「ふふっ。そうね。お父様が騎士団長だから安心よね。」
などとマリー相手なので少し間違えてしまうこともあるが大分流暢になったアリアナ語で話していると突然、
「アリアナ語、上手だね。」
と話しかけられた。
おっと、油断していたわ。
こんなところに人がくるなんて。
振り返ると王子様か!というくらい整った美形の男の子が立っていた。整えられた金髪に意志の強そうなエメラルドグリーンの瞳。煌びやかな服装を纏ったその少年のオーラは王子様のようだった。
まぁ今日は披露パーティーだもんね。そりゃあそうか。と一人納得する。大人も子供も皆着飾って、輝いている。
「あなたもアリアナ語を話せるの?」
少し年上のようにみえるが、公爵令嬢である私は何の躊躇いもなくタメ語で話す。
少年は少し戸惑ったように見えたが、応えてくれた。
「今勉強しているところなんだけど、複雑でけっこう難しいよね。」
「確かに。女性名詞とか男性名詞とかあるしね。」
「どうやってそんなに話せるようになったの?」
「アリアナ語を話せるこのマリーを専属の侍女にしたの。日常会話は全てアリアナ語で話すようにしていれば、そのうち話せるようになるわ。話せるようになると、文法も理解できるようになるの。」
「なるほど。逆転の発想だね。私もそうしてみよう。」
「えぇ、是非。おすすめの勉強法よ?」
「ちなみにどのくらいで話せるようになったの?」
「うーん、1年くらいはかかったかな?今でもたまに間違えるの。」
「でもそんなにかかったんだね。勉強家なんだ?」
「ふふっ。暇だったのよ。」
「でもすごいね。」
「そうかしら?」
「君は学園には通わないの?」
「私は16歳から通うことになっているの。あなたはもう通っているの?」
「うん、でも君見たことなかったから。」
「えっ全校生徒の顔がわかるの?」
「まぁなんとなく。」
「記憶力がいいのね。学年は何人くらい?」
「1学年100人だよ。」
「ぴったり100人なの?」
「そう、20人クラスが5クラスあって成績順なんだ。」
「成績順とかプレッシャーね。」
「まぁでも励みにはなるよ。」
「プレッシャーをバネにできるタイプなのね。」
「まぁ…、頑張ってはいるよ。」
そう言って微笑んだその少年の顔には、少し陰りが見えた。
私は思わず、「ちょっと待っててほしい」と近くに来ていたハーブハウスへ向かって、あるものを手に取った。
待っててくれてるかな?
さっきの場所に戻ると少年はマリーとアリアナ語で話をしていた。
「お待たせ!」
「全然待ってないよ。どこに行っていたの?」
「頑張り屋さんのあなたにはコレをあげるわ!」
試作で作っていたハンドクリームを手渡す。
「この香り嫌いじゃなければ使ってみて?」
「すごくいい香りだね。スッキリしてるのに奥深い。すごい好きな香りだよ!これはどうやって使うの?」
少年は気に入ったようで喜んでくれている。
「本当?良かったわ!これはシトラスの香りのハンドクリームなの。レモングラスも入っているから疲労回復効果やリフレッシュ効果、集中力をアップさせる効果もあるわ。
頑張ることに疲れたら使ってね。休息は大事よ?
あ、でもまだ試作品で防腐剤が入ってないから、保管は冷暗所で。2ヶ月を目処に使い切ってね。」
「これを僕に?ありがとう。」
「試作品だから簡素な入れ物でごめんね。でも効果は保証するわ!」
「大切に使うよ。」
「2ヶ月を過ぎると効果も香りも薄れてくるし、腐ってしまう可能性もあるから、できれば普通に使ってくれると助かるわ。」
「あはは、そうだね!」
「あ、一回に使う目安はこのくらいよ。」
と手で丸を作ってみせる。
「うん、わかったよ。」
「じゃあ、私はそろそろ行かないと。」
「ごめんね、引き止めちゃって。」
「いいのよ!あなたと話せて良かったわ!緊張がほぐれたし!」
「緊張してたの?」
「そうなの。こんなに大勢の人前で演奏するのは初めてだから。」
「何か演奏するの?」
「これからピアノを弾くのよ。」
「そうなんだ?楽しみだな。」
「ふふっ、でも人に聴かせるために引くわけではないんだけどね。」
「そうなの?じゃあどうして?」
「大好きな人のために弾くの。」
「大好きな人・・・」
「そうなの。とっても大好きなのよ!」
と言うエリナリーゼは満面の笑みだ。緊張してるなんてこれっぽっちも思えない。
「お嬢様、そろそろお時間が・・・」
「ごめんね、マリー。お待たせしちゃったわね。じゃああなたも楽しんで!よい一日を!」
「うん、演奏楽しみにしてるよ。」
「ふふっ。じゃあね!」
少年と別れ、私はピアノの方へ向かった。
まずは教会で式を行う。ここでの参列者は家族のみ。
ルークお兄様はいつもにも増し増しで格好いいし、アマンダ様もとても美しかった。
スレンダー美女羨ましい。とてもお似合いの二人だ。
何よりも正装姿のお父様が素敵すぎて眩しい。神々しくて直視できないくらいだ。
そして我が公爵家へ移動する。
使用人はパーティーの準備で皆忙しそうだ。
昼間はガーデンパーティーにして、夕方くらいから舞踏室へ移動するようだ。
私も準備を始めよう。
季節は冬になろうとしていて、昼間でもやや寒いため公爵邸全体を結界で二重に覆い火魔法で適温にした。
苦手だった火魔法でももうここまでコントロールすることができるようになった。誰か褒めて!
時間が近づくとハーブの香りを風の魔道具によって拡散させ、華やかなムードを演出する。
招待した客も続々とやってきた。
その様子を窓から見ていた私はマリーに、
「すっごい来るわね。さすがルークお兄様、人望が半端ないわね。」
「これでもかなり絞ったようですよ。それに、ルーク様の人望があるのはもちろんだと思いますが、他の理由もあると思いますよ。」
「お父様が騎士団長だから?」
「お嬢様に会いたい方も多いと思いますよ。」
「なんで私?」
自慢じゃないが今まできたお茶会もパーティーの誘いも全て断っていて、子供の頃の誘拐事件以来私は可哀想なお嬢様ということになっている。
「だってあんなにハンドクリームと化粧水が売れているのですよ?その発案者に会いたいと思うのは当たり前のことでは?それにお嬢様の歌は評判ですから。」
「そうなのかしらね?」
私が歌うのを知ってるのは一部の貴族だけなのだけど。ちなみにハンドクリームの発案者と広まっているのは、他ならぬイーサン商会から漏れたらしい。
イーサンは謝り倒してきたけど、もう広まってしまったものは仕方がない。
貴族の噂って怖いな。
ちなみに今日限定の香りで用意したのはゼラニウムの香り。ローズに似ている香りで幸せを表現してみたのだ。
今もこの会場に拡散させている香りだ。
反応をみている限り、この香りはなかなか好評のようで安心する。
時間が来て、お父様達の後ろから私が表へ出るとわかりやすくざわつき始めた。
「あれがエリナリーゼ様?!」
「あの方がハンドクリームと化粧水の考案者?!」
「まだ子供だというのになんという美しさだ!」
聞こえてくるのは恥ずかしくなるくらいのお世辞の嵐。そして嫉妬の眼差し。
それらを華麗にスルーしてお父様たちにならい、挨拶をする。
私はいろいろな人に話しかけられる前に少し離れた場所にある庭園へ避難することにした。
さすがにハーブハウスに籠もるのはどうかと思ったので、外にいるのは最大の譲歩なのだ。
ピアノ演奏をする前に花の香りで癒やされよう。
「やっぱりここは癒やされるわね、マリー。」
少し人前に出ただけでげんなりしてしまったのだ。
「えぇ、花の香りがとても心地いいですね。」
「ずっとここに居られるわよね。本当に落ち着くわ。
それにしてもあんなに人が多いのは初めてよ。人に酔いそうだわ。」
「お嬢様お茶会にも全部欠席してましたもんね。」
「ふふっ。そうね。お父様が騎士団長だから安心よね。」
などとマリー相手なので少し間違えてしまうこともあるが大分流暢になったアリアナ語で話していると突然、
「アリアナ語、上手だね。」
と話しかけられた。
おっと、油断していたわ。
こんなところに人がくるなんて。
振り返ると王子様か!というくらい整った美形の男の子が立っていた。整えられた金髪に意志の強そうなエメラルドグリーンの瞳。煌びやかな服装を纏ったその少年のオーラは王子様のようだった。
まぁ今日は披露パーティーだもんね。そりゃあそうか。と一人納得する。大人も子供も皆着飾って、輝いている。
「あなたもアリアナ語を話せるの?」
少し年上のようにみえるが、公爵令嬢である私は何の躊躇いもなくタメ語で話す。
少年は少し戸惑ったように見えたが、応えてくれた。
「今勉強しているところなんだけど、複雑でけっこう難しいよね。」
「確かに。女性名詞とか男性名詞とかあるしね。」
「どうやってそんなに話せるようになったの?」
「アリアナ語を話せるこのマリーを専属の侍女にしたの。日常会話は全てアリアナ語で話すようにしていれば、そのうち話せるようになるわ。話せるようになると、文法も理解できるようになるの。」
「なるほど。逆転の発想だね。私もそうしてみよう。」
「えぇ、是非。おすすめの勉強法よ?」
「ちなみにどのくらいで話せるようになったの?」
「うーん、1年くらいはかかったかな?今でもたまに間違えるの。」
「でもそんなにかかったんだね。勉強家なんだ?」
「ふふっ。暇だったのよ。」
「でもすごいね。」
「そうかしら?」
「君は学園には通わないの?」
「私は16歳から通うことになっているの。あなたはもう通っているの?」
「うん、でも君見たことなかったから。」
「えっ全校生徒の顔がわかるの?」
「まぁなんとなく。」
「記憶力がいいのね。学年は何人くらい?」
「1学年100人だよ。」
「ぴったり100人なの?」
「そう、20人クラスが5クラスあって成績順なんだ。」
「成績順とかプレッシャーね。」
「まぁでも励みにはなるよ。」
「プレッシャーをバネにできるタイプなのね。」
「まぁ…、頑張ってはいるよ。」
そう言って微笑んだその少年の顔には、少し陰りが見えた。
私は思わず、「ちょっと待っててほしい」と近くに来ていたハーブハウスへ向かって、あるものを手に取った。
待っててくれてるかな?
さっきの場所に戻ると少年はマリーとアリアナ語で話をしていた。
「お待たせ!」
「全然待ってないよ。どこに行っていたの?」
「頑張り屋さんのあなたにはコレをあげるわ!」
試作で作っていたハンドクリームを手渡す。
「この香り嫌いじゃなければ使ってみて?」
「すごくいい香りだね。スッキリしてるのに奥深い。すごい好きな香りだよ!これはどうやって使うの?」
少年は気に入ったようで喜んでくれている。
「本当?良かったわ!これはシトラスの香りのハンドクリームなの。レモングラスも入っているから疲労回復効果やリフレッシュ効果、集中力をアップさせる効果もあるわ。
頑張ることに疲れたら使ってね。休息は大事よ?
あ、でもまだ試作品で防腐剤が入ってないから、保管は冷暗所で。2ヶ月を目処に使い切ってね。」
「これを僕に?ありがとう。」
「試作品だから簡素な入れ物でごめんね。でも効果は保証するわ!」
「大切に使うよ。」
「2ヶ月を過ぎると効果も香りも薄れてくるし、腐ってしまう可能性もあるから、できれば普通に使ってくれると助かるわ。」
「あはは、そうだね!」
「あ、一回に使う目安はこのくらいよ。」
と手で丸を作ってみせる。
「うん、わかったよ。」
「じゃあ、私はそろそろ行かないと。」
「ごめんね、引き止めちゃって。」
「いいのよ!あなたと話せて良かったわ!緊張がほぐれたし!」
「緊張してたの?」
「そうなの。こんなに大勢の人前で演奏するのは初めてだから。」
「何か演奏するの?」
「これからピアノを弾くのよ。」
「そうなんだ?楽しみだな。」
「ふふっ、でも人に聴かせるために引くわけではないんだけどね。」
「そうなの?じゃあどうして?」
「大好きな人のために弾くの。」
「大好きな人・・・」
「そうなの。とっても大好きなのよ!」
と言うエリナリーゼは満面の笑みだ。緊張してるなんてこれっぽっちも思えない。
「お嬢様、そろそろお時間が・・・」
「ごめんね、マリー。お待たせしちゃったわね。じゃああなたも楽しんで!よい一日を!」
「うん、演奏楽しみにしてるよ。」
「ふふっ。じゃあね!」
少年と別れ、私はピアノの方へ向かった。
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