【完結】婚約破棄した姉の代わりに嫁ぎます

七咲陸

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11、婚約者様はやっぱりいじわる…かも

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「祈里先生。今お時間大丈夫でしょうか?」
「紬くん、どうしましたか?」

あの騒動から半年。霜永家には分家から後継として向かい入れた子がやってきた。まだ十になったばかりだが、優秀で覚えもよく礼儀正しい出来た子であった。
分家のご両親もちょくちょく顔を見にやってきてくれており、精神状態も良いだろうとされている。

紬くん本人が養子入りを決意したとはいえ、それは子供の決定。今の段階から紬くんだけに全てを押し付けるのは申し訳なく、僕もなるべく一緒にお稽古を受けるようにしている。

「ここがどうしても出来ないのです。もう一度教えてください」
「もちろん。一緒にやってみましょうか」

琴でつまづいた所の教えを乞う姿はとても可愛らしく、すぐに婿もやってくるだろうと父も母も安心しているようだった。

伊織に関しては、社会勉強のために分家に鍛え直してもらうことになった。分家の中では会社経営をしている所があり、身内でも容赦なく叱られるようだ。
伊織からたまにくる手紙は最初は恨みが積もった内容だったものが、最近は仕事を覚えてきて楽しいらしく、明るい文面に。そして前回は謝罪を込めた内容になった。
あのエベレスト並に高いプライドの塊の伊織が手紙といえど謝ったのだ。余程根性を叩き直されていると感じた。

「……できた!」
「凄いです、紬くん。僕はここをできるようになるまで一週間はかかりましたよ」
「えへへ…でもお稽古ばかりで宿題が疎かですって学校の先生に叱られちゃったんです……」
「でもこんなに一生懸命ならきっと勉強も大丈夫ですよ。分からないことがあったらまた聞いてください」
「はいっ。あ……じゃあ一つ教えて欲しいです」

僕は快く返事をして、聞きやすいように紬くんに向き直った。

「僕、そのうちお婿さんをとるんですよね?」
「そうですね……霜永家の後継として…」
「あ!ふまん、とかじゃないんです!じゃなくて…、お婿さんをとったらどうすればいいんですか?霜永家は双子が生まれやすいって言ってますけど、どうしたら生まれるんですか?」
「え゛っっっ!!!」

まさかそんな質問とは思わず、思い切り驚いてしまった。

「祈里先生?」
「あ……ご、ごほん。そ、そのお話は、もう少し大人になってからの方が」
「でも学校の先生は分からないことはそのままにしておくなって!」
「げほ!」

学校の先生を恨みたい。いや、正しい教えなのだろうけれども!
あー、うー、とどう答えて良いか悩んでいると、さらに紬くんは身を乗り出して「教えてください!」と言ってきたのだった。



「ふっ……それで……っどう答えたんだ……?」
「わ、笑わないでください!僕本当に困ったんですよ!」

クツクツと肩を震わせる彼は、僕の旦那様だ。帰宅してきた慧さんのスーツを預かりながら、今日の出来事を話した。

慧さんとは十八の誕生日に籍を入れ、すぐに結婚式を挙げた。
神前式で挙げたのは『祈里の白無垢が見たい』と言う慧さん立っての希望だった。お式はもちろん緊張した。でも隣の袴を着た旦那様がカッコよすぎてそれどころではないほど…そう、あの、興奮した覚えがある。そんな旦那様に倒れそうになった僕をさりげなく支えてもらいながら何とか誓いを終えたらしい。

その後の初夜も、『まだ学生で、今子供作ったら卒業出来なくなると困るだろうし……いつも通り指で頑張ろうね』と良い笑顔で言われた。

「『コウノトリが運んできます』って言ったら『コウノトリ?鳥さんですか?今から育てなくちゃいけないんですか?』って言われてしまいました……!」
「ふ、くっ……! 祈里も箱入りだと思ってたが、紬くんもこのままだと同じようになりそうだな」
「もー!笑わないでください!」

結婚しても相変わらず慧さんは少しだけ意地悪だった。
それでも愛しいものに触れるような頬を撫でる指先は、優しさに満ちていて思わず「んっ……」と声を漏らした。くすぐったいだけじゃなくて、なんだか少し熱っぽい。

「明日は休みだったね」
「え…?あ、僕のですか?はい、明日は紬くんの授業も、学校も……」

まだ高校生である僕だが、あとは卒業を待つのみだ。今は紬くんの先生と家事に力を注ぐことが出来る。

「と言うか、明日から一週間祈里のお休みを取ってあるから」
「僕の? え?学校に連絡したのですか?」
「うん。発情期休暇だよ」
「…………へ」
「気づいてないと思うけど、今日の朝から微かにいい匂いがしてるんだよね。他の人は気づかないくらい微かだけど」

ニッコリと良い笑顔で言う慧さん。仕事で疲れてるはずなのに艶々と神々しく見える。

「番になろうね」
「……ぁ、あう……」
「あと子作りして紬くんに説明出来るようにしないと」
「こ…っ」

こづくり……と僕が小さく呟くと慧さんは真っ赤になって固まった僕を抱き上げ、そのままスタスタと寝室の中までドナドナして行った。
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