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プロローグ
碧眼の魔術師
(あの子はいつ戻ってくるのだろうか……)
薄暗いダンジョンの中階層で、男は困った様子で佇んでいる。青い髪はだらしなく肩まで伸び、目を覆う前髪の隙間から除く碧眼は不安を滲ませている。
従魔に様子を見に行かせてから、大分時間が経過している。このダンジョンは罠が多いので、従魔のスキルが役に立つ。
男が様子を見に行こうか迷っていると、獣の悲痛な呻き声が聞こえてきた。
男は嫌な予感を感じて、走り出す。ダンジョンの狭い一本道を超えた先の広い場所に出ると男の従魔が罠にかかっていた。
モフモフの尻尾にトラばさみが食い込んでいる様に見えたが、幸い尻尾が小さい為凹凸にすっぽりと治まっていて大怪我はしていない様子だった。
男は従魔に即座に治癒魔法をかける。キャフンという鳴き声と共に従魔が気持ちよさそうに目を細める。
「いいか、ここはトラップの多いダンジョンだから慎重にな。いくらお前の鼻がいいからと言って……」
男は目を細める。さきほど従魔がかかった罠に、何かを擦り込んだ形跡を見つけた。
(……これは、人為的だな)
トラばさみに鼻を近づけると香辛料の様な匂いがした。人間にとってはあまり良い匂いではないが、従魔にとっては良い匂いなのだろうか。この匂いに騙されて、従魔が罠にはまってしまった可能性もある。
そもそも自然的なはずのダンジョンでは、罠に細工をしてある事は珍しい。実際、細工してある場合はこの様な姑息な細工ではなく、偶発的な細工だ。
最近、一部の悪質な冒険者が偶然を装って、罠に細工をするという話を聞いた事がある。
それはダンジョンを踏破されると細工をした、当人にとって都合が悪い場合と、お宝を独り占めしたいという私利私欲からくる場合がある。
男はしばらくの沈黙の後、従魔を抱き上げて慎重に歩み出した。
しばらく進んだ先で、男は驚き後ずさる。
ダンジョンの床が凹んだのだ。どうやら男は、設置型床トラップの発動スイッチを踏んでしまったようだった。
ガシャンッ、ガシャンッと前後の道が塞がれる音がする。その刹那、頭上に熱を感じ慌てて仰ぐと、激しい炎が男に降り注ぐ瞬間だった。
男は一瞬で防御壁を張る。星形の防御壁が男を炎から守る。抱えている従魔は何が起こったのか解らずプルプルと震えている。
炎は衰える事を知らずに勢いが増す一方だ。男は目を細め炎の先を見やる。そこには何体もの火炎竜がひしめき合っていた。設置型のトラップを踏む事で、隠れていた火炎竜が姿を現す罠だったのだ。
(くっ、逃げ場がない)
ヘタに動いては、他の罠を誘発してしまう。火炎竜達の炎に飲まれながら男は思案する。
防御壁に亀裂が入る。
(せめて、この子だけは守ってあげたい)
しかし、男の願い空しく、防御壁が砕け一人と一匹は激しい炎に包まれ、音もなく消え去ってしまう。
後に残るのは、火炎竜の不気味な鳴き声だけだった。
薄暗いダンジョンの中階層で、男は困った様子で佇んでいる。青い髪はだらしなく肩まで伸び、目を覆う前髪の隙間から除く碧眼は不安を滲ませている。
従魔に様子を見に行かせてから、大分時間が経過している。このダンジョンは罠が多いので、従魔のスキルが役に立つ。
男が様子を見に行こうか迷っていると、獣の悲痛な呻き声が聞こえてきた。
男は嫌な予感を感じて、走り出す。ダンジョンの狭い一本道を超えた先の広い場所に出ると男の従魔が罠にかかっていた。
モフモフの尻尾にトラばさみが食い込んでいる様に見えたが、幸い尻尾が小さい為凹凸にすっぽりと治まっていて大怪我はしていない様子だった。
男は従魔に即座に治癒魔法をかける。キャフンという鳴き声と共に従魔が気持ちよさそうに目を細める。
「いいか、ここはトラップの多いダンジョンだから慎重にな。いくらお前の鼻がいいからと言って……」
男は目を細める。さきほど従魔がかかった罠に、何かを擦り込んだ形跡を見つけた。
(……これは、人為的だな)
トラばさみに鼻を近づけると香辛料の様な匂いがした。人間にとってはあまり良い匂いではないが、従魔にとっては良い匂いなのだろうか。この匂いに騙されて、従魔が罠にはまってしまった可能性もある。
そもそも自然的なはずのダンジョンでは、罠に細工をしてある事は珍しい。実際、細工してある場合はこの様な姑息な細工ではなく、偶発的な細工だ。
最近、一部の悪質な冒険者が偶然を装って、罠に細工をするという話を聞いた事がある。
それはダンジョンを踏破されると細工をした、当人にとって都合が悪い場合と、お宝を独り占めしたいという私利私欲からくる場合がある。
男はしばらくの沈黙の後、従魔を抱き上げて慎重に歩み出した。
しばらく進んだ先で、男は驚き後ずさる。
ダンジョンの床が凹んだのだ。どうやら男は、設置型床トラップの発動スイッチを踏んでしまったようだった。
ガシャンッ、ガシャンッと前後の道が塞がれる音がする。その刹那、頭上に熱を感じ慌てて仰ぐと、激しい炎が男に降り注ぐ瞬間だった。
男は一瞬で防御壁を張る。星形の防御壁が男を炎から守る。抱えている従魔は何が起こったのか解らずプルプルと震えている。
炎は衰える事を知らずに勢いが増す一方だ。男は目を細め炎の先を見やる。そこには何体もの火炎竜がひしめき合っていた。設置型のトラップを踏む事で、隠れていた火炎竜が姿を現す罠だったのだ。
(くっ、逃げ場がない)
ヘタに動いては、他の罠を誘発してしまう。火炎竜達の炎に飲まれながら男は思案する。
防御壁に亀裂が入る。
(せめて、この子だけは守ってあげたい)
しかし、男の願い空しく、防御壁が砕け一人と一匹は激しい炎に包まれ、音もなく消え去ってしまう。
後に残るのは、火炎竜の不気味な鳴き声だけだった。
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