出血令嬢はヴァンパイア公爵様に愛される

茉莉花 凛

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「シリル様、どうかされましたか?」
思案するシリルの様子を疑問に思って、エリザベートが声をかける。すると。

「これを、受け取って欲しい」
静かに言うシリルが差し出してきたのは、宝石で出来たバラが嵌め込まれた銀のナイフだった。そのあまりの美しさにエリザベートは目を見張る。

「もしまた俺が君を襲おうとした時、これを使って止めて欲しい」
ヴァンパイアの弱点は銀だと、どこかのおとぎ話で聞いたことがあった。
「そんな……そんなことできません……貴方に喰らい尽くされるのなら、それが本望です」
シリルの要請に悲しいような苦しいような気持ちになったエリザベートは言った。

「また君はそんなことを」
「あの人との結婚が避けられない今、もう貴方に取り込まれて消えてしまいたいぐらいなのです!」
互いに秘密を打ち明けた今、もう隠すものなど何もあるまいとエリザベートは気持ちの全てをシリルにぶつける。
「……俺だって!本当はリジーを味わいたい……」

シリルも、エリザベートを求めてやまなかった。惹かれ合う2人は次第に距離を縮め、そしてゆっくりと唇を重ねる。何度も繰り返し、それは次第に深くなっていき。

「シリル様……私は今、血が足りていないのです」
シリルは、吸血されることで造血作用が付与されると言っていた。だから。エリザベートはプラチナブロンドの髪をかきあげ首筋を晒す。
「私に、くださいませんか?」
瞳の赤と青がかち合い、そしてシリルは堪らないといった顔をした。その瞳は、次第に赤みを帯びていく。エリザベートの首にシリルの顔が近付き、牙が当たると同時に熱い吐息がかかる。次の瞬間、鋭い痛みが走った。

「…………っ!」
驚いて身を固くしたエリザベートは、シリルにきつく抱きしめられる。痛みは、既に消えていた。肌の上をシリルの舌が這う感覚にぞくぞくとして、体は熱く火照り始めていた。

「っはぁ、リジー……エリザベート」
吸血の合間に、ひたすら名前を呼ばれる。
「シリル様……シリル。私が愛しているのは、貴方だけです」
熱に浮かされたようになりながらシリルに愛を囁く。抱きしめながら少しずつ体重をかけられたエリザベートは、後ろのベッドにシリルもろとも倒れ込んで。

そして、2人はシーツの波と情欲に溺れていったのだった。




目が覚めたエリザベートは差し込む朝日の眩しさに目を細めた。身体を起こし、そして全身の重だるさに気づく。けれど、心は晴れやかだった。

辛うじて夜着だけはちゃんと着て寝たから、昨晩のことはきっと誰にも気づかれないであろう。一緒に眠ったはずのシリルはもう、隣にはいなかった。シーツの皺だけが彼が居たことを示していて、エリザベートは指先でなぞった。

ふと、何か硬いものが指に触れて、エリザベートは掛布を剥がす。
そこにあったのは、昨晩の問答の一因となった、銀のナイフだった。太陽の光の下、バラをかたどった宝石と飾り彫りがきらきらと美しく輝く。

「受け取れないと、言いましたのに……」
無理矢理置いていくなんて。こうやって痕跡を残して、いつもシリルのことを考えざるを得ないように仕向けるなんて卑怯だ。シリルに置いていかれたナイフが、少しばかり自分と重なって見えて、エリザベートは肩を竦めて微笑んだ。
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