銀翼のシャリオ ―転生盗賊団長、ホワイト改革で破滅エンドを回避する―

第5章

第21話 幕間5

王国による労働者搾取および違法精霊契約に関する調査報告書

国際精霊・人権機構（ISHURA）
International Spirit and Human Rights Agency

報告者：レイラ・セフィア（第2課 上席監査官）


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1. 報告対象

王国における非倫理的労働拘束制度（以下、契約労働）についての調査報告。

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2. 概要

当該制度は、魔力印による長期拘束型の役務えきむ契約を中核とし、その実態は事実上の強制労働および人身売買に近似する。

特に以下の点において、WSO倫理ガイドラインおよび国際人権協定への重大な違反が疑われる。

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3. 詳細構造

3-1. 契約成立プロセス

・報酬は労働者本人ではなく、家族または所属共同体に「前受金」を支払う形で成立。

・労働者本人には、前受金の数倍の返済義務が課せられる。

3-2. 役務えきむ提供と拘束

・返済はすべて役務によって行われる。

・多くの労働者は、最低限の食事と休息のみが保障され、報酬はほぼ皆無。

・役務の継続が困難になった場合は、金銭による返済義務が発生するが、その額は膨大であり実質的に不可能。

・結果として、家族や同一共同体の別個体が新たな契約労働者として従属する例が確認されており、多重債務的な拘束構造が発生している。

3-3. 魔力印による強制拘束

・契約締結と同時に、契約書には個体の位置情報を追跡可能な魔力印が施される。

・術式の解除には専用技術が必要で、逃亡・抵抗はほぼ不可能。

・人格拘束型の契約術式に相当し、精神的自由の侵害が認められる。

3-4. 術式出自の不明性

・魔力印は精霊契約の応用系と推察されるが、WSO登録術式とは一致せず。

・リバースエンジニアリングによる違法複製、または未確認精霊の関与の可能性あり。

3-5. 児童労働の確認

・調査対象には13歳未満と見られる児童の従事も確認されており、国際児童保護条項への重大な違反と断定される。

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4. 懸念と提言

・制度が“合法”とされている背景に、王国の法体系がマルセル総務大臣とその一派により掌握されている実態がある。

・魔力印の術式に関しては、精霊契約術師による検証を強く推奨。

・未確認精霊の関与が疑われる場合、WSO理事会による上位精霊の派遣を正式に要請する。

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5. 追記（特記事項）

・本件に関連して、王都騎士団所属アリサ＝グランフィール五等騎士（以下、アリサ）の動向は注視に値する。

・彼女には、精霊共鳴（共感型）第二段階に相当する反応が確認された。

・なお、WSO本部からの事前共有はなく、観測開始はごく最近であると推測される。

・アリサは契約労働者に対する深い憂慮と、王国体制そのものへの根源的な疑義、ならびに変革への明確な意志を保持している。

以上の理由により、今後も保護対象として接触および関係構築を継続する。

・また、従来は凶悪な略奪行為で知られていた盗賊団が、「ホワイト」を標榜する新体制への移行を宣言した事例が確認されている。

・彼らは「略奪に頼らない持続可能な盗賊団」の実現を目標に掲げており、契約労働者の解放、および就業・技能習得の機会を提供している。

・未確認情報ではあるが、労働環境には就業規則が存在し、報酬も発生。国際的な水準から見ても妥当な条件が整備されていると見受けられる。

・盗賊団による魔力印の解除手段については不明。上位精霊契約術師の関与も想定されるが、現時点ではその可能性は低いと考えられる。

・加えて、当該盗賊団の幹部層がアリサに注目している動向も確認されており、その目的は不明。

・精霊共鳴の活用を意図した接近とも推察されたが、アリサへの精霊観測自体が最近になってからであるという点と矛盾が生じており、他の要因が関係している可能性が高い。

これら両者（アリサと盗賊団）間の接点についても、今後の調査継続が必要と判断される。