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第1章
獣人の隠れ里4
しおりを挟む猫に言われるままの場所を力強く押すと、ガコンと言う音を立てて壁がへこみ、へこんだ壁は横に動いて道を開いた。
その先には、山道とは全然違う景色が広がっていて、どう言う仕組みになっているのか、洞窟でもあるのかと想像していたものとは全く違う。
天の高く空が広がって明るく草むらの道を照らしている。
草をかき分け、先に進んで行くとそこには
小さな木造で出来た家が並んでおり、田畑が広がっている。洗濯物を干している家や、小さな獣人がはしゃいで走り回っていた。
「…ー獣人の隠れ里…。」
まさに、そんな景色が広がっていた。
ーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アリスティナ姫を連れて、獣人の隠れ里へと足を踏み入れると、周りの獣人達は慌てふためいていた。
何でも長らく此処から外に出る者がおらず、人間を見ていなかったのだとか。
警戒されつつも、猫を崇めているようで、丁重に案内された先には、口に真っ白な髭を生やして、目を閉じている年老いた熊の獣人がいた。
「話は事前に聞いてるでな。
ワシは此処で村長をしてる、マンジと言う者じゃ。ぇえと…そっちの猫の獣人がアリスティナ様ですかいの?」
「……っ!」
アリスティナは、初めて自分以外の獣人を見た事で感動しているようだった。話を全く聞いておらず。大きく目を見開いて村長の熊耳を見ている。
マンジ村長は全く気に留めずにジッとアリスティナを見て、白髭をとかして唸った。
「…聞いていた通りじゃな。」
「聞いていた通り?」
テリアは、村長の言葉に反応して膝の上に座っている猫を見た。色々事前に話してくれて居たらしい。猫なりに考えがあって、だから此処に案内してくれたんだと言う事がわかった。
「獣人は本来人間よりも丈夫な生き物なんじゃが、繁殖能力に乏しいに加えて、稀に身体の脆弱な者が生まれる。
そうした場合の原因は1つしか知らぬが、アリスティナ様もそのうちの1つであろう。」
「!原因がわかるのですか!」
こんなに早く、一目見ただけで分かるとは。流石獣人の村。原因がわかれば、対処の仕様はあるかもしれない。
「貴方様が、テリア様か?」
「はい!」
勢いよく返事したテリアと、その膝の上にいる猫に視線をやったマンジ村長は、暫く黙った後に「テリア様にのみお話する。」と語った。
「え?何で私だけ?」
「そりゃあ、本来なら外部の人間には漏らさぬ事なんじゃよ。」
「それは、私聞いても良いの?」
「むしろテリア様にしか話せぬでな。」
「…。」
何故?と理由は聞ける感じではなかったので、ゆっくりと後ろを振り返って、アレンとユラとアリスティナを見る。
アレンは外で待機して居るのは良いか確認して、了解を得ると、納得したのかそのままアリスティナを連れて部屋を出た。
ユラもその後をついて外に出る。その様子を確認してからマンジ村長は語りはじめた。
「人と獣人の間に、稀に子を儲ける者がおる。
言わば混血種じゃな。そう言う者は、生き延びる事は稀じゃ。
大体は生まれて直ぐ死んでしまうでな。」
「そんな…人と獣人が交わると何をしても死んでしまうという事ですか?」
「いんや、生まれて直ぐ死ぬのは大方、殺されてしまうのよ。」
「殺す??赤子を?」
おおよそテリアには理解できない話だった。
「そうじゃ。混血種は禁忌の子とも呼ばれてな。
人里には勿論、獣人の群れにも居場所はない。
そんな子を抱えた親は大概、赤子を居なかった事にする。」
「…っ。」
「それを運良くその大体から外れて、生きながらえたとしても、それこそやはり、禁忌の子故か。
アリスティナ様のように虚弱に生まれ、普通は治療も受けられないので3年も生きられぬでな。」
「…っ。なら、アリスティナ姫は治療を受けられます。何とかなりませんか?」
「方法は無くはないのじゃが…。この国の姫君じゃし、ちと無理じゃのう。」
「方法があるんですね!それは…」
「このドルイドの地の聖水を、1日も欠かす事なく飲み続ける事じゃ。聖水は昔聖女様が獣人の為にこの地を作ってくれださってからずっと、かわりなく湧いておる。
じゃが王都まで持ち運びしても効能はその間にきれるし、この場所を人に明かす事はまかりならぬでな。」
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