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第1章出会い

ライザは炎を前に前世を思い出す

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「もしかして、動けないんですか?」

  そりゃ、こんな白髪のお爺ちゃんが、歩いてたとはいえ馬に当たって転んだ訳だから、どっか痛めて動けなくても不思議じゃ無いけど、貴方この炎の中、悪役令息を助けに行って無事だったんでしょ?

 まだ行ってないけども。
 この人行かないならどうなるの?悪役令息此処で人生終了…?

 まさかの私のせいで…、いや、公爵家を襲った犯人達が悪いんだけど。でも、少なくとも本来なら1人は助かるはずの命が此処で終わり。これで私の死亡フラグは1個折れた…けど。
 こんな折かたは流石の私も夢見が悪過ぎるような…。

「お嬢さん、悪いんじゃが、公爵家のお坊ちゃんを助けに行ってくれんか?精霊達がまだお坊っちゃんが生きてあの中にいると…御礼は後ほど如何様にでも致しますから…。」

「え?」

(この炎の燃えさかる中、会ったばかりの私にそれ頼むの?…藁にもすがる思いってやつか。
きっぱり断りたい。…だけどこの爺や、前世私を育ててくれたお爺ちゃんに似ている…。いやいや、流石にお爺ちゃんの頼みでも無理だよ!でも、そうしたらー…)

 悪役令息は、この悪夢の日、炎に包まれる中目を覚まし、両親が死んでいるのを見てしまったそうだ。

 ー炎に包まれた中、血溜まりを見たー

 と、後にゲーム内で語っていた。

 ライザは爺やから視線を外し、熱風放たれる屋敷を見た。
 本当にまだあの中にいる人は生きて居るのだろうかと、不思議なくらいだけれど、精霊の加護を受け継いだ彼の周囲は1番火の周りが遅いらしい。※ゲーム情報

 たまに吹く風が、ライザの元へ熱を運んでくる。
 
 目の前の光景と、闇の中に浮き出た異様な炎の明かりが

 記憶の中で、前世の幼い私を呼び覚ますーー…。

ーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーー

  前世の私が幼い頃、出掛け先での事だった。片親で育ててくれた母と久しぶりの外出した先での事。

   辺り一面に燃え広がった炎の中で、変形した戸の隙間から握っていたはずの母の手。

『行ってください!』

 母の声に消防隊員の人が私を抱えて『後で助けに来ますから。』そう言い残してどんどんその手は遠ざかってく。


『おかあさーん!やだよぉ。私も此処にいるよぉ!』



ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーー


 炎の中で、1人残され遠ざかる母の手を思い出したライザは目に薄ら滲んだものを、腕で乱暴に拭き取った。

「お嬢さん?」

「この屋敷の貯水地の位置と、屋敷の地下に入る場所を教えてください。」

「……っ。ありがとう、ありがとう!
屋敷の裏手、あそこを曲がって直ぐに貯水地がある。丁度その隣にある扉が地下に続く道になっている。これは貯水地と、こっちが地下への鍵じゃ。」

「ハンカチとポケットチーフもあれば貰えますか?」

「あ…ぁあ!」


 爺やの胸ポケットから出されたそれらを受け取ると、ライザは裏手へと全力で走った。

(ライザはそんなに魔法が得意じゃない。適性は幸いにも水魔法だけど、大袈裟な魔法陣のわりに出せる水は一度につきコップ一杯分…。)


 貯水地の扉を開けると、溜まっている水の中にダイブして全身を濡らした。ついでに貰ったハンカチとポケットチーフもしっかり濡れた。そして横にある扉を開くと、地下へ続く階段があった。
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