【完結】悪役令嬢ライザと悪役令息の婚約者

マロン株式

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第2章事前対策

脱税とマネロンはファンタジー世界でも犯罪です1

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※この国のご都合主義マネー事情入ってます。
※色々省いてるとこあります。


「聞いているお兄様やお父様にもわかりやすいように、お話しますわね。まずこの民から集めた税収を含め、公爵家の収入を入れる〝1つのお通帳〟、この収入額に対して国から税金を引かれますわね?」

「はい…。」

「この国の領地を持つ者は、その年の収入を王宮に自己申告して、王宮から税金が幾らかかるのか通知書が届いて、翌年指定口座から税金を引き落とされる仕組みよね?」

「そうです。ですから税金の計算を事前にして、翌年の公爵家で使用出来る運営費用の内訳をー…。」

「でもね、〝1つのお通帳〟にある収入にしては。10年間で何度か、〝税金引き落とし専用口座〟から引かれる金額の少ない年があるのよ。」

「……!そ、それは。」

「収入を少なめに、王宮へ申告しないとこうはならない。」

  ライザがそう言った時、父が立ち上がった。

「そうか!タウロおまえ天才か!馬鹿正直に収入を伝えなければ、税金を取られんのか!」

「…お父様、これは脱税と言って犯罪です。払える筈の金で爵位を失いたいのですか?」

「……いや。失いたくない。」

「じゃあ少し黙ってそこに座って続きを聞いてもらっても宜しいですか?」

「うむ。」

   父は頷いてそのままちょこんと椅子に座った。

「ー…さて、タウロ。では何故貴方が、このような事をしたのか。
税金を少なく払う代わりに、公爵家の口座に残るお金は普通に税金払ったときよりも増えますよね?
でも、、税金の引き落とし専用口座単体を見ると引かれた金額が少ないのですが。
〝用途に分けた引き落とし口座の合計〟をすると数字の辻褄が収入である〝1つのお通帳〟と照らし合わせた時何故か・・・合います。

例えば、本来100引かれるところを30しか引かれ無かったら、70は手元に残りますよね?その70が無い。

では、その70は何処に行ったのかと思い、銀行に名寄せ…ウェルネ公爵家の名義の口座番号を全て提示して貰いました。

すると、1つ使途不明の口座番号がありました。
税金を誤魔化した年には必ずそこから、とある他国に開設されているウェルネ公爵家名義の口座に、振り込まれているのです。本来王宮に税金として持っていかれる予定だったけど、偽りの申告で手元に残った〝70〟の部分が。そして、そこから…また別の口座・・・・に振り込まれてます。」

「……。」


「他国で貯金する分にはまだ良いですが、タウロ、貴方はこの少なくないお金を、他国の金銭的余裕のない王家に貢いで爵位を買いましたね?」

「……!…」

「国へ納める税金は、決して安くはありません。だから表面上公爵家の財産の減りからバレない様に税金部分で調節した。
お父様の次期後継者はお兄様ですからね。あまり派手に公爵家の財産が減っているとバレますものね。
この様な少なくない金額、他の公爵家財産管理に携わる使用人5人も、勿論気付いていた。だけど、使用人のボーナスを弾んで黙らせていましたね?」


「……そ、れは…。」

「知らないとは言わせませんよ。

他国王家への許可の無い過分な資金援助は、このトルマリン皇国において重罪に値する違法行為。

つまり、国家反逆罪とされます。他国にあるウェルネ公爵家の名義の口座から〝募金〟と称して他国王家縁ある口座に振り込むなど。隠蔽を臭わせてます。

このまま、トルマリン皇国税務部の調査が振込手続きをした銀行か当家に調査へ入った時どうなるか。
もしくはトルマリン皇国の振込銀行が不自然な他国への振込に気付いて自警団に報告したらどうなるか。
優秀なタウロは、わかりますか?」



 知っている方もいるかも知れません。マネーロンダリング。 ざっくり言うと銀行に作成されている口座が犯罪に使われているという。略してマネロン。前世ではこう呼んでいましたっけね。それにカテゴリされる程にこの世界ではヤバい事なのです。

「……っ。」

 タウロはそのまま膝をつき、両手を前について項垂れた。

「も、申し訳…ございません。つい、わたしくしめの子孫…可愛い孫に爵位を残してやりたかったのです。
ですが、トルマリン皇国からの調査はこの30年、いや50年1度もなかったので…。」


「調査がなかった?確かに、気の緩みの原因にはなるでしょうね。
でも、調査されバレたら?公爵家当主が自警団や王宮へ事情聴取に呼び出されたら貴方は、その他国の貴族として公爵家のお金を持って行ったのでは無くて?
そのくらいの目論見がなければ、この様なことやりませんでしたよね?バレるまで、ギリギリまでこうして、お金の無い他国王家に出来うる限り恩を売るつもりでしたね?」


「……っ。も、申し訳ー…」

 今の私の剣幕はきっと、悪役令嬢がヒロインを虐めるときの迫力そのものだろう。粛々と長年仕えてきてくれた使用人を前にして、醸し出す黒いオーラとこの強烈な睨み。
 タウロはガタガタと震えていた。

 そこで、小さく座っていた父が自分と重なる物をタウロに見てしまったのかおずおずと出てきた。

「ら、ライザ。タウロも反省したみたいだから、もうこの辺で良いだろう。今度からしなければ良いんだよ。タウロももう痛い目みたからやらないさ。」

 父の幼少期からこの屋敷にいるタウロは、良く父とたわいも無い話をして笑っていた。だからこそ、悪い事をした事がわかっていても、父はタウロを最後に許そうとするだろうとは思っていた。父は甘やかされて育ってきたぶん、揉め事を嫌うし根は愛情深く、身内に甘く、そして騙されやすく、流されやすい。
 それは、愚かさもあるけれど根底に信頼と優しさもあるから故だ。

 私は、愚か者の信頼と優しさにつけ込み、騙し、そう言う人間を不幸にして自らのみ笑おうとする。

 そう、このタウロのような人間が1番嫌いだ。

 


「…いいえ、お父様。お父様がそんなだから私は余計に許せません。
はっきり申し上げます。他国王家への過分な支援をトルマリン皇国王家の許しなくしていた事がバレたなら、国の法律上、最悪、反逆者としてお父様が責任を負わされ、処刑されてもおかしく無いのですよ。それでも赦しますか?」

「…え?」


「確かにこの50年、王家は不正を調査しておりませんでしたが、いつか税務部の方針が変わり、きちんと調査される体制が整う可能性は充分にありました。

タウロはそれも分かった上でやっていたのです。」

 タウロは、余計に父の顔が見れずに頭を地面につけたまま動かない。


「申し訳、ございません…。」

「今更そのような態度は無意味です。
貴方の性格はこの数字の動きを見て充分に理解していますから。」
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