【完結】悪役令嬢ライザと悪役令息の婚約者

マロン株式

文字の大きさ
46 / 78
第3章学園入学

君を知りたい ルイスside

しおりを挟む

 君を知りたい。




 炎の中でライザと出会ってからずっと、わたしが思っていた事だ。


 けれど、ライザの事を調べれば調べる程、知れば知るほど謎に包まれるばかりだった。




 あの悪夢の日から、毎夜夢の中で現れるようになった、優しく炎よりも強く存在感を放ち燃るルベライトの瞳は、ライザが過去にわたしの受ける痛みを予想して惨劇を見せまいとしているように見えた。

 だから初め、ライザはわたしと同じような経験をしている人間だと思っていた。

 けれど調べれてみれば、ライザにはそんな過去は無い。

 この事実を知ると初めて経験する不思議な感覚になった。わたしがこうした直感を外した事は無いからだ。

 精霊を統治するアウステル公爵家を継ぐわたしは、精霊のように感性がかなり鋭い。


 調べ上げた事実では、彼女は何不自由なく育った公爵令嬢だと言うのに。

 目の前にいるライザは間違いなく調べた事以外の何かを経験し、それが根付いていた。

 大体の人間の思考や行動原理は想像はつくけれど、ライザは掴みきれない部分がある。



 けれどそれでも、良いと思っていた。


 わたしはどのみちライザの事が好きだから、当然なんでも知りたいけれど。

 ライザがわたしを警戒する事の方が嫌だった。

 掴みきれない部分を安易に触れる事は、ライザの地雷なような気がしていた。


 これから一生涯連れそう関係ならば、互いを知る時間はたっぷりある。ならいつか、知る機会があるかも知れないし、話してくれるかもしれない。

 無かったとしても、ライザが嫌がるなら踏み込まない。

 

 そんな事をしなくても、ライザの欲する条件を満たしているわたしは、このまま結婚できるだろうと思いながら日々平穏に過ごしていた。

 なのに。

 
『婚約を白紙にしましょう。』


  ライザに婚約白紙を言い渡された。

ーー何故?ライザにとってこの婚約はメリットしかないと言うのに。



 ライザの掴みきれない部分が言わせているのはわかる。

 ライザは、いつも愛情を込めた触れ合いを好まなかった。だから、ライザには触れるときは細心の注意を払っていた。 
  ※触れないと言う選択肢はなかった。

 なるべく自然に、指先から愛情を悟られないようにしていた。


 だけど、そうまでしても。
 この関係のままではライザが考えている未来に、わたしと結婚する選択肢が無い事を、この時になって


 ようやく理解した。


 ライザが語らない事を、無理矢理暴くのは嫌だったけれど、遠慮していたら君はわたしをいつか手放す。


「ー・なら、もう遠慮はしないよ。」



  アウステル公爵邸の片隅にある、大精霊が宿る碩学せきがくの大樹に手をついて意識を集中させた。

 大精霊が集うこの大樹は生きとし生けるもの全てを見透かし、世界のことわり全てを理解している存在。
 
 本来私的な事で頼ってはなら無い神聖な存在であるけれど。

 ライザの過去を知り合いと願い目を閉じた。それを大樹に宿る大精霊が止めて来た。

「人の記憶を覗き見るのはやめといた方が良い。
凄く負荷が掛かるよ?だってその人が10年、下手したら数十年かけて得た記憶を一夜で脳に入れる事になる。人間には負担をかけ過ぎるよ。

下手をしたら生命力を削られる。」

 「わたしは魔力量が多いから、それで補うよ。生命力は削らない。」


 精霊、それも大精霊の忠告を無視したのはこれが初めてだった。

 人の記憶を手繰るために生命力を削る危険を侵すなんて精霊でなくとも止めるだろう。

 
ーーそうして大樹の力を借りたわたしが眠りについた瞬間、まず脳に激痛がはしった。

 わたしの魔力で補っても難しいかもしれないとその瞬間に感じた。想定外の出来事がおこったからだ。

 ライザの記憶は1人分ではなかった。

 



 
 
 
 

 

 



 
 

 
しおりを挟む
感想 130

あなたにおすすめの小説

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

【完結】その令嬢は号泣しただけ~泣き虫令嬢に悪役は無理でした~

春風由実
恋愛
お城の庭園で大泣きしてしまった十二歳の私。 かつての記憶を取り戻し、自分が物語の序盤で早々に退場する悪しき公爵令嬢であることを思い出します。 私は目立たず密やかに穏やかに、そして出来るだけ長く生きたいのです。 それにこんなに泣き虫だから、王太子殿下の婚約者だなんて重たい役目は無理、無理、無理。 だから早々に逃げ出そうと決めていたのに。 どうして目の前にこの方が座っているのでしょうか? ※本編十七話、番外編四話の短いお話です。 ※こちらはさっと完結します。(2022.11.8完結) ※カクヨムにも掲載しています。

処理中です...