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第3章学園入学
君を知りたい ルイスside
しおりを挟む君を知りたい。
炎の中でライザと出会ってからずっと、わたしが思っていた事だ。
けれど、ライザの事を調べれば調べる程、知れば知るほど謎に包まれるばかりだった。
あの悪夢の日から、毎夜夢の中で現れるようになった、優しく炎よりも強く存在感を放ち燃るルベライトの瞳は、ライザが過去に経験した事からわたしの受ける痛みを予想して惨劇を見せまいとしているように見えた。
だから初め、ライザはわたしと同じような経験をしている人間だと思っていた。
けれど調べれてみれば、ライザにはそんな過去は無い。
この事実を知ると初めて経験する不思議な感覚になった。わたしがこうした直感を外した事は無いからだ。
精霊を統治するアウステル公爵家を継ぐわたしは、精霊のように感性がかなり鋭い。
調べ上げた事実では、彼女は何不自由なく育った公爵令嬢だと言うのに。
目の前にいるライザは間違いなく調べた事以外の何かを経験し、それが根付いていた。
大体の人間の思考や行動原理は想像はつくけれど、ライザは掴みきれない部分がある。
けれどそれでも、良いと思っていた。
わたしはどのみちライザの事が好きだから、当然なんでも知りたいけれど。
ライザがわたしを警戒する事の方が嫌だった。
掴みきれない部分を安易に触れる事は、ライザの地雷なような気がしていた。
これから一生涯連れそう関係ならば、互いを知る時間はたっぷりある。ならいつか、知る機会があるかも知れないし、話してくれるかもしれない。
無かったとしても、ライザが嫌がるなら踏み込まない。
そんな事をしなくても、ライザの欲する条件を満たしているわたしは、このまま結婚できるだろうと思いながら日々平穏に過ごしていた。
なのに。
『婚約を白紙にしましょう。』
ライザに婚約白紙を言い渡された。
ーー何故?ライザにとってこの婚約はメリットしかないと言うのに。
ライザの掴みきれない部分が言わせているのはわかる。
ライザは、いつも愛情を込めた触れ合いを好まなかった。だから、ライザには触れるときは細心の注意を払っていた。
※触れないと言う選択肢はなかった。
なるべく自然に、指先から愛情を悟られないようにしていた。
だけど、そうまでしても。
この関係のままではライザが考えている未来に、わたしと結婚する選択肢が無い事を、この時になって
ようやく理解した。
ライザが語らない事を、無理矢理暴くのは嫌だったけれど、遠慮していたら君はわたしをいつか手放す。
「ー・なら、もう遠慮はしないよ。」
アウステル公爵邸の片隅にある、大精霊が宿る碩学の大樹に手をついて意識を集中させた。
大精霊が集うこの大樹は生きとし生けるもの全てを見透かし、世界の理全てを理解している存在。
本来私的な事で頼ってはなら無い神聖な存在であるけれど。
ライザの過去を知り合いと願い目を閉じた。それを大樹に宿る大精霊が止めて来た。
「人の記憶を覗き見るのはやめといた方が良い。
凄く負荷が掛かるよ?だってその人が10年、下手したら数十年かけて得た記憶を一夜で脳に入れる事になる。人間には負担をかけ過ぎるよ。
下手をしたら生命力を削られる。」
「わたしは魔力量が多いから、それで補うよ。生命力は削らない。」
精霊、それも大精霊の忠告を無視したのはこれが初めてだった。
人の記憶を手繰るために生命力を削る危険を侵すなんて精霊でなくとも止めるだろう。
ーーそうして大樹の力を借りたわたしが眠りについた瞬間、まず脳に激痛がはしった。
わたしの魔力で補っても難しいかもしれないとその瞬間に感じた。想定外の出来事がおこったからだ。
ライザの記憶は1人分ではなかった。
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