【完結】年下王子のお嫁様 

マロン株式

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王子、ヒロインの高熱に付き合わされる

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 最近少しずつ公務を任されるようになってきた王子が王宮の入り口付近を歩いていた丁度その時、倒れてきた障害物を避ける為に足を止めた。

ーガツンっ


 目の前で倒れた令嬢から、受け身を取らなかったせいで凄い音がしたが、フラフラしながら立ち上がろうとしているのを見ると無事みたいだ。
 タンコブは出来たかもしれないが。

 その時になってやっと見覚えのある顔だと認識した。

 宰相の庭園で会った頭のおかしな令嬢だ。名前は知らない。顔色が非常に悪そうだ。

「君は…。」

「ぅう…いた、い。王子なら、倒れたレディを受け止めてくださいよ…」


 顔色の悪さも相待って非常に恨めしげに見上げてくる姿に何か執念を感じる。

 そうは言われても、たまにわざと僕の前で倒れる令嬢がいるので、そういう時は従者に任せることにしている。

「うちの従者の反応が遅くてすまない。」

 悪いとは思っていないが紳士として一応謝っておいた。

 この令嬢、見るからに具合が悪そうだ。
 具合の悪い中、登城しなければならないくらいの強制的な呼び出しをこの令嬢にかける人間がいるとは思えないが。

「……頭が。吐きそう。」

 ここで?そう思った王子は言った。

「家に帰りなよ。とても具合が悪そうだ。」

 令嬢の後ろにいる王宮の使用人が頷いている。多分具合が悪そうで入場を止めたけど強行突破されたんだろう。一介の使用人である彼は、貴族の令嬢を強く止められなかったと推測される。


 王子の言葉を聞いた令嬢は目をくわっと見開き、胸元を縋り付くように掴んだ。

 あまりの出来事に周りは皆硬直している。

 僕を揺さぶろうとしているみたいだった。具合の悪さのせいで力が弱々しすぎて揺さぶられていないが。


「私は、マーガレット様に今日のお茶会で何としても伝えなければならない事があるんです。絶対に!」


(マーガレット?いつの間にそんな仲に?付き合う友達ちゃんと選んでる?)

「じゃあ尚の事ダメだね。病気をマーガレットにうつしかねないだろう?」

 そう伝えると絶望した表情をした令嬢はボロボロ泣き始めて、「今日しかチャンスが無いかもしれないのに…このまま帰れない。」と、首を横に振っている。

 その必死な姿に周りの視線が本当に痛い。
 〝とうとう女を泣かせるように…〟みたいな失礼な事を思っている事が視線から伝わってくる。

(ちょっとこの状況はよろしくないなぁ…)

 腕を掴んでとにかく身体から引き離した。そして、唖然と見ていた使用人と従者に指示を出した。

「この子、部屋を用意して休ませてあげて。彼女が受付時届け出た家の者に使いを出して迎えにこさせて。伝手はマーガレットに茶会は中止だと伝えてきて。」

(多分この調子で止めた家の者も振り切ってきたか何かしたんだろうなぁ…)

 周りでオロオロしていた使用人それぞれに、指示を出すと各々が役割を理解して散ってゆく。

 従者に頭のおかしな令嬢を託して行こうとしたら、「1人で歩けます…」と青い顔で断られた。

 まだギラギラした気迫からわかる。多分まだマーガレットに会うのを諦めていない。隙を見て城のどこかにいる彼女を探そうとしている。

 それを察知した従者にこっそり耳打ちされた。

「殿下、お知り合いならお部屋まで同行してくださいませんか?
我々にはこの鬼気迫るご令嬢を宥める手腕はありません。
流石に強行突破されると…具合の悪いご令嬢相手に乱暴も出来ませんし…」


 (家柄によっては面倒で余計な貴族間の争いの種になりかねないもんね。
何て面倒な事に巻き込まれてしまったんだろう。)

「いや、僕は知り合いじゃないよ。」
「殿下…」
「わかったよ。部屋まで付いてくから後は君達で家の者が来るまで鍵でもかけて見張っておいてね?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーー


 そして用意した部屋の前に来ると、令嬢はピタリと止まって再びシクシク泣きはじめた。

「どうしたんだい?早く入りなよ。立っているのは辛いでしょ?
この部屋で迎えが来るまで横になってたらいいよ。」

 王子が促すが、令嬢はその場で泣きながら言った。

「…やっぱり、筋書き通りに進んでるんだなって、今身に染みて…私と王子が運命の相手なんだぁ……。王子の嫁に迎えられるんだ。っ…ぅっぅっ。」

「……。」

 周りの使用人が唖然としていた。王子も作った笑顔をキープしたまま、流石に言葉の意味を理解出来ずに思考が止まった。

 直ぐに皆、スクープを得たと言わんばかりに、僕へ視線を集めた。

 いや、皆何を期待しているかわからないけど、僕には身に覚えがないよ?

「彼女、具合悪いみたいだから、早く部屋で休ませてあげて。
後は君達に任せたからね。」

 周りには〝くれぐれも変な噂を流さないようにね。〟と言う注意喚起の視線を向けると、冷んやりしたその場の雰囲気に皆コクコクと頷いてくれた。




 

 
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