【続】地獄行きは確定、に加え ~地獄の王様に溺愛されています~

墨尽(ぼくじん)

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獄主の里帰り

第2話 **

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 慣れた和室に四肢を放り投げ、聡一朗は大きく息を吐く。

「あぁあああ、疲れた!」

 天国の挨拶回りを終え、陽が落ちる前に聡一朗は十居へと戻った。畳の上をゴロゴロ転がり、うつ伏せの体勢でぐったりと身を沈める。

「聡一朗、随分疲れてるな」
「ああ、イレギュラーな事すると……やっぱり疲れるな」

 上から覗き込むテキロに、聡一朗はホッと頬を緩ませた。
 慣れた三白眼に、安堵感が半端ない。

「テキロ、夕餉まで少し寝ていいか?」
「分かった。時間が来たら起こす」

 中庭に面する扉を閉めて、テキロは出ていく。
 相変わらず手際が良い。

 テキロは空気の読み方が抜群に巧い。
 甘え下手な聡一朗だが、たまに心を読まれてるんじゃないかと思うほど、テキロは的確に動いてくれる。


(とはいえ、前天主にまで会う事になるとは)
 リュシオルから紹介され、言葉を交わし、問題なく挨拶回りは終了した。

 前天主も含め、天国の人たちは聡一朗を快く迎えてくれた。だが慣れない事をするとどうしても疲れが出る。

 聡一朗はクッションを引き寄せながら、帰り際にリュシオルに言われた言葉を思い出す。

『前天主に挨拶が済んだ。じゃあ、前獄主にも挨拶に行かなきゃだよね?そーちゃん』
『前獄主って、エンのお父さんですか?』
『そうだよ。挨拶、行きたかったんでしょ?』

 ニコリと笑うリュシオルの笑顔は、間違いなく愛情で溢れている。
 自分の考えていることが、リュシオルにはまるで隠せない。聡一朗が獄主の両親に挨拶に行きたがっているのも、リュシオルにはお見通しだったようだ。

『僕が同行したいところだけど、マダリオと行っておいで。そしてこれは命令だと、マダリオに伝えてね』


 クッションに顔を埋めて、聡一朗は大きく息を吐く。
(まじでパーフェクトだ。母上には何も隠せない……)

 頬を緩めていると、眠気が襲ってきた。
 獄主が帰るのは数時間後だ。テキロが用意してくれたブランケットを引き上げて、聡一朗は目を閉じた。


________
 
 扉が閉じられている和室を見遣って、獄主は足を止めた。

 居への入り口は別なのだが、聡一朗は和室の縁側で遊んでいることが多い。その和室の扉が閉まっている。

「獄主様、お帰りなさいませ」
「……聡一朗は?」

 迎えたテキロに問うと、彼は頭を下げた。

「申し訳ございません。お疲れのようでしたので、和室で休んでおられます」
「……構わん。私の帰りが少し早かっただけの事だ」

 入り口で侍女に上着を渡し、獄主は和室の前に立った。
 そして扉を開くと、寝ている聡一朗の姿に唖然とする。

(コ、コウトめ……!聡一朗の服を選ぶと言っていたが、これは……けしからん)

 ブランケットを剥ぐと、聡一朗は僅かに身動ぎするが起きる様子はない。

(なんだこの……くそ可愛い生き物は)
 いつもは袴で隠れてしまう脚の形が、洋装だとはっきりと見て取れた。
 腰の細さも際立って、ベストで覆われている薄い胸板が妙に儚く見える。

「……もう駄目だ。聡一朗が悪い」

 そう一言呟いて、獄主は聡一朗に覆い被さった。
 


________

「……っ!ど、うして……!」
「どうしてって、聡一朗が誘ったのだろう」
「俺がいつ誘ったよ!?」

 獄主にベルトを外され、ベストのボタンに手を掛けられたところで、聡一朗は目を覚ました。
 目の前にいる超ド級美人に驚いている間もなく、服を脱がされている事実に戸惑うしかない。

「洋装は脱がしにくいな。……しかし、こうもかっちり隠されていると、暴きたくなるのが男の性だ」
「い、いつも暴いているだろう?」
「……聡一朗……お前は相変わらず、なんにも分かっていない」

 獄主は嬉しそうに顔を綻ばせ、子供に言い聞かせるように眉を下げる。ふふ、と機嫌よく笑いながら、ベストのボタンを外していった。

「エ、エン、まだ風呂にも入ってない!ストップ!」
「聡一朗、何の問題もない。後から入ればいい。簡単なことだ」
「そそそ、そういう意味じゃぁないぞ?エン?」

 聡一朗の抗議の声も聞かず、獄主はシャツにも手を掛けた。ボタン外しももう慣れたのか、片手でぷちぷちと器用に外していく。


 鎖骨に舌を這わせると、聡一朗の身体が僅かに仰け反る。獄主はその背に腕を回し、抱き込みながら尖りを口に含んだ。

「っあっ!」

 突然与えられた刺激に、思わず甘い声が漏れる。聡一朗は真っ赤に染まり、自身の手で口を塞いだ。
 尖りを舌で弄びながら、獄主の目は聡一朗を捉えている。その妖艶な光景に、聡一朗の頭はくらくらと揺れ、与えられる刺激に翻弄された。

「んん、ぁあッ」

 獄主は尖りから唇を離し、口を押さえていた聡一朗の手を引き剥がす。そのまま指を絡めて、唇を合わせた。

 おずおずと引っ込みがちな聡一朗を舌を絡めとり、故意に水音を立てながら嬲る。
 聡一朗の唇の隙間から甘い吐息が漏れると、追い立てるように胸の尖りを指で潰した。

「んんんッ、や、んッ!」
「ああ、可愛い……聡一朗、どこまで顔が赤くなる?」

 唇を離して獄主が言うと、聡一朗は目を見開いた。赤くなった顔を更に赤くし、眉を顰めながら目線を逸らす。

「可愛いなんて、エンはおかし……んん、っ!そこ、いじるなぁ……!」

 尖りの先を爪でカリカリと掻くと、聡一朗がひっと息を呑む。
 その表情をうっとりと眺めながら、獄主は上体を起こした。そして、聡一朗のスラックスへと手を伸ばす。

「まったく、洋装と言うのはいかん。袴なら帯さえ解けば足で蹴り退けられるのに、洋装だと………?……そ、聡一朗…!!」
「……んあ?」

 与えられた刺激の余韻でぼんやりしていた聡一朗は、足元で驚愕の声を上げる獄主を見た。

 スラックスは既に取り払われている事に聡一朗は驚くが、獄主が目を剥いている事にも更に驚く。獄主は、ソックスガーターを凝視している。

「な、なんだ、この、卑猥な装備は……!聡一朗、お、お前、私を殺す気か!」
「お、落ち着けエン!これはな、ソックスガーターという歴とした……」
「聡一朗、貴様……!こんな卑猥なものを身に着けて、一日あっちで仕事をしてきたのか?」

(いや、あんたの側近もしてますがな)
 思うものの、コウトが咎められそうで言うのは止めておいた。今後の彼等の間に、軋轢が生じるのは避けたい。

「けしからん、仕置きだ」
「はぁあ!?意味が分からん!」

 パンツに手を掛けられて、一気に取り払われる。
 既に兆しを見せていた屹立を揉みしだかれ、快感に抗うように聡一朗は唇を噛みしめた。

 唇を噛み締める聡一朗に舌打ちを零し、獄主はその口に親指を突っ込んだ。強制的に開かれた口から、あられもない嬌声が上がる。

「あ、あ、あ!まっへ、エン!」
「うん?」

 何か言おうとしている聡一朗の口から指を抜くと、屹立を掴んでいる獄主の手を聡一朗が掴む。

「く、靴下、脱ぐ!」
「却下だ。脱がんでも、事は成せる」
「なんでだよ!このままだと、恥ずかしすぎる!」

 聡一朗の言葉に、獄主は優しい微笑みを零す。瞳の奥には情欲を渦巻かせたまま、聡一朗の手を頭上に縫いつけた。

 先走りで濡れた聡一朗の屹立から蜜を指に絡め、窄まりに指を押し当てる。

「や、やめ……!!」
「聡一朗、私はお前の足指が、堪らなく好みなんだ。だが今は、何故だろうな……このままでも良い気がする」
「そ、そこで冷静な分析を……っぅう、う、指、入れん、なッ」

 獄主はどこからか香油を取り出し、挿入している指の上に垂らした。挿入している指を増やし、二本で内壁を責め立てる。
 ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てる度、聡一朗から嬌声が溢れ出た。

「ひぃやぁっ!あぁ!あっ!エン!」
「昨夜は、明日が初出勤などと言い訳をつけて、私を拒んだな?その分も仕置きせねばなるまい」

「い、いや、あぁ!結局、やった、じゃんかぁあッ!こんの、エロ、お、に……!」
「っは!エロいのはお前だろう?」

 聡一朗のいい所を正確に把握している獄主は、2本の指でそこを突き上げる。

 悲鳴のような声を上げて、聡一朗の腰が跳ねた。屹立の先端からは、蜜がどろりと零れ出る。
 何度もそこを突き上げると、薄い蜜液が断続的に細く噴きあがった。

「ああ……っ!んあ!あぁッ!な、なに、これッ」
「良過ぎたら出る。たまにこうなるぞ?知らなかったのか?」
「しらな……ッ!ああぁあ、ま、まって……ッ!」

 責め立てたまま、獄主は聡一朗に顔を近付ける。涙でぐしゃぐしゃになった聡一朗の顔を片手で挟み、目を見据えた。

「聡一朗、明日は仕事を休め」
「!!エン!その件なんだが……っ!?あ、あァアああ!!!」

 言葉も半ばに獄主のものに貫かれ、聡一朗は仰け反ったまま激しく身体を痙攣させた。
 そのまま激しい律動に飲み込まれ、目の前がチカチカと点滅を繰り返す。

 仰け反った聡一朗の背中を抱き込み、獄主は上体を起こした。膝の上に聡一朗を乗せ、腰を打ちつける。

「はい、と言え、聡一朗。明日は休みだ。そうだな?」
「あ、あ、あぅ!はっ、いや、だぁあ!!ああァ!」

 直線的な突き上げに快感が駆けあがり、涙がぼろぼろ流れ出す。行き止まりをぐりぐり抉られ、苦しさと快感に喉が鳴った。


 何度達したかも分からないほど貫かれ、身体も力を無くして獄主に寄りかかるしかない。
 それでも突かれる度に快感が走り、聡一朗は操り人形のようにがくがくと身体を揺らした。

「聡一朗」

 名を呼ばれて意識を傾けると、頭と肩を押さえ込まれる。固定されたまま深く突き上げられ、熱い濁流が体内に駆け巡った。
 体内が塗り替えられていくような感覚に、聡一朗は戦慄く。緩んだ口元を獄主に塞がれ、聡一朗は瞳を閉じた。

(明日、里帰り出来るかな……)

 元々疲れていた聡一朗の身体は、もう限界を迎えていた。
 くったりと沈み込んだ耳元に、獄主の静かに笑う声が聞こえる。聞こえたと同時に、意識も閉じた。
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