最狂公爵閣下のお気に入り

白乃いちじく

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第六章 魔工学の祖ユリウス

第二百十六話 シリウスの思い人**R18なので注意**

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「マスター、奥様宛てに差出人不明の郵便物が届いています。中身は映像再生装置のようですが……」

 そう告げたのは金色ボディのスチュワートだ。彼はシリウスの執事兼代理人である。手にしているのは、郵便物であろう拳大の黒い卵形映像再生装置だ。シリウスの方は執務机の前で届いたばかりの手紙を整理中である。

「なにが記録されている?」

 片眼鏡を掛けた青い瞳は、整理中の手紙に向いたままだ。

「それが……ロックがかかっていて確認できません。添えられた手紙によると、奥様が手にすると、映像が再生される仕組みになっているようですが、認証方法は不明です」
「かしてみろ」

 シリウスが手にして、片眼鏡で分析し始める。
 そこへ、ノエルを抱っこしたセレスティナが顔を見せた。花柄の簡易ドレスを身に着けたセレスティナは、若奥様といった初々しさがある。
 ノエルの方は首が据わって、元気にすくすく育っている。ノア・サウザーの生まれ変わりらしいが、前世の記憶とやらをいきなり話し出すという奇行に走ることはない。いたって、普通の赤子である。

「シリウス、何をしているの?」
「郵便物の中身を調べている。ノエル、おいで」

 シリウスがにこりと笑い、ノエルを引き受け、抱っこした。すると、栗色の髪の赤子の顔が、にぱぁとほころぶ。頬は薔薇色で、笑う顔が何とも可愛らしい。
 シリウスがこうして息子のノエルをやたらと抱っこしたがるのは、息子が愛おしいという気持ちと、セレスティナの愛情を独り占めするなという意図が混在している。セレスティナに甘えられると、どうしても焼きもちを焼いてしまうらしい。

 が、子育ての経験のあるシリウスは、赤子をあやすのは得意のようで、高い高いをするとノエルはご機嫌で、こうしてきゃっきゃと笑う。ママの旦那とは認めない! と生意気を言ったあの少年の面影は、今のところどこにもない。

「奥様宛ての郵便物ですが、差出人不明で、危険がないかどうかチェック中ですので、どうか今しばらくお待ちください」

 スチュワートがそう説明する。

「その間、お茶でも如何ですか?」
「ありがとう、いただくわ」


   ◇◇◇


 セレスティナは仕事をするシリウスを見るのも好きであった。執務机に向かうシリウスを見ているだけで、つい、顔がほころんでしまう。シリウスの真剣な眼差しが、彼の魅力をさらに際立たせてくれるからだ。
 シリウスの低く深みのある声が耳に届く。

「認証方法は接触、だな。ティナがこれに触れると魔道機器の再生が始まる」
「なら、奥様に触れていただきますか?」
「……中身を確認してからだ」
「再生すると爆発するのかしら?」

 セレスティナがつい口を挟むと、シリウスが苦笑した。

「いや、爆発物は仕込まれていない。呪いもかかっていない。ただの再生機器だ」
「なら、一緒に見れば良いと思うわ」

 シリウスの顔が曇る。

「悪意あるメッセージが入っていたらどうする」
「あら、どんな?」
「殺人予告のような」
「オルモード公爵邸は要塞なのでしょう? 怖くないわ。シリウスは少し過保護すぎるのよ。私は公爵夫人として、シリウスの隣に立ちたいわ」

 セレスティナの新緑の瞳がひたとシリウスを見つめる。シリウスはふっと笑った。手を伸ばし、傍へやって来たセレスティナの栗色の髪をそっと撫でる。

「そうか。なら、そうしよう」

 セレスティナが黒い卵形魔道具に触れると、映像の再生が始まる。虚空に現れた立体映像はなんと、スヴァイ王国のサラディナーサ王妹殿下だった。エルフの特徴である尖った耳と紫色の目を持った金髪美女である。胸元を強調する赤いドレス姿だ。

『お久しぶりね、公爵夫人。わたくしに会えて嬉しいかしら?』

 優雅な仕草で、サラディナーサが挨拶する。挑戦的で、余裕のある態度だ。

『あなたにどうしても告げておきたい真実があるのよ。そう、オルモード公爵が愛しているのは、残念ながらわたくしなの』

 サラディナーサがにっこりと妖艶に微笑む。まるで、勝利を確信しているように。

『ふふっ、信じられない? でも、真実よ。だから、その証拠を見せてあげるわ。オルモード公爵が愛しているのは、わたくしなの。そうよ、あなたじゃないわ。この映像を見て、それをようく理解してちょうだい。そして、未練がましく彼に縋りつかないで、早々に彼とは別れることね。愛されない妻なんて惨めでしょう? 再度言うわ。いいえ、何度でも言うわ。オルモード公爵が愛しているのは、わたくしよ、わたくしなの』
「……虚言もいいところだ」

 シリウスが鼻で笑い、次いで始まった映像の再生に目を見張った。
 それは閨事の映像であった。しかも、半裸のシリウスが「サラディナーサ、愛している」と告げている姿である。首元には例の三つ並んだほくろがあり、確かに映像の人物がシリウスであることを告げていた。
 サラディナーサが撮影しているのか、彼女の姿は体の一部しか映らないが、それでも二人が睦み合う様子を克明に描き出していて、セレスティナは息をのんだ。

「こ、れ……」

 次の瞬間、映像機器がバキリと破壊された。シリウスが手にしたペーパーウェイトで叩き割ったのだ。その音にびっくりして、まどろんでいたノエルが泣き出した。急ぎセレスティナがノエルを抱き上げ、あやしたが、シリウスの怒りは収まらない。壊れた映像機器を重量のあるペーパーウェイトでさらに滅多打ちだ。

「許さない……よくも、よくも、こんなまねを!」

 バラバラになった機器をさらに粉々にするその姿は鬼気迫り、声を掛けることすらためらわれしまう。慌ててチュワートがシリウスを宥めにかかった。

「マスター、どうか落ち着いてください!」

 セレスティナもまた声を振り絞る。

「シリウス、やめて! ノエルが!」
「あれは私じゃない!」
「ええ、分かっているわ!」

 泣き続けるノエルをあやしながら、セレスティナが必死に訴える。

「だって、髪が……」

 セレスティナの呟きをシリウスが拾う。

「髪?」
「髪が短かかったもの。シリウスの髪は短く出来ない。そうでしょう?」

 はっと気が付いたようにシリウスは、セレスティナを見る。

「ええ、分かっているわ。だから、落ち着いて? シリウスが持つ魔力は膨大な分、髪は短く切っても、直ぐ伸びてしまう。そうよね?」
「……ああ、そうだ」

 セレスティナの指摘で、疲れたようにどさりとシリウスは椅子に腰掛けた。前屈みになり、片手で顔を覆う。

「スチュワート、ノエルとティナをここから連れ出して、休ませてやってくれ」
「私はいいわ。スチュー、ノエルをお願い」

 泣き止んだノエルをスチュワートに渡し、世話を頼む。

「分かりました、奥様、どうぞお任せ下さい」

 ノエルを連れて執務室を出たスチュワートを見送ったセレスティナは、椅子に座り込んでいるシリウスに近寄った。顔を覆った姿が、何とも痛々しい。

「あれは、もしかして、ユリウス・サウザーなの?」
「……」
「シリウス、言いたくないのなら、それでもい……」
「そうだ、ユリウス・サウザーだ!」

 そう叫び、シリウスが拳を机をガンッと打ち付ける。ビシリと机に亀裂が入り、セレスティナは体をびくりと震わせた。
 怖い……
 どうしてもそう思ってしまう。

 シリウスは決してセレスティナやノエルに危害を加えることはない。そう分かっていても、やはり怒りに駆られたシリウスは恐ろしかった。審判の天使のような風格を持ち、かつ、全ても飲み込む荒々しさを秘めているから。こうなると、まるで荒ぶる巨人だ。
 シリウスがブツブツと呪いの言葉を吐く。

「魅了で操られ、何度も何度もあの女と肌を重ねた。くそっ、くそっ、くそっ! 禁忌だと、人に対する侮辱だと言ったジェイドの忠告をまったく分かっていなかったのか、あのくそ女め! 許したのが間違いだ。潰してやる。潰してやる。潰してやる。二度とこんな真似が出来ないように徹底的に……」
「待って、シリウス!」
「ティナ、君を傷つける者は許さな……」
「私は大丈夫よ。あれはシリウスじゃないってちゃんと分かっているから。そうじゃなくて……私はシリウス、あなたが傷つくことが怖いの」
「私はなんともない!」
「泣きそうな顔をしているわ。お願いだから、落ち着いて?」

 セレスティナは両手でシリウスの顔を掴み、無理矢理シリウスに深呼吸をしてもらう。落ち着いた頃合いを見計らって、セレスティナが口を開く。

「シリウス、あなたにはユリウス・サウザーの記憶があるわ。でも、自分事のように感じられないって、そう言っていたわ。今もそう?」

 シリウスは答えない。ぐっと噛みしめた唇から血が滲み、握った拳が震えている。セレスティナは察した。先程の映像が引き金になり、思い出してしまったのだと。

「ユリウス・サウザーの記憶が、シリウス、貴方の中から引き出されたのね? 植え付けられたものではなくて……」
「……ああ。あの時、そうだ……目を潰した」

 シリウスが訥々と語り出す。

「二度と魅了にかかるまいと。だが、あの時そうしたのは、宇宙船のスピカを渡したくない一心からだった。故郷を失って、同じ間違いを犯したくなかった。必死でその思いにしがみついて、なんとか魔眼の力に抗った結果、あの女は、私の顔に残った傷痕を見て、私への執着を捨てた。醜い男に興味はないと……安堵した」

 シリウスが自嘲気味に嗤う。

「そうだ、安堵した。ただそれだけ。人を愛するということがどういうことか知らなかったから。だから、さして怒りを感じなかった。玩具にされても、大したことはないと流した。ただ、自分への不甲斐なさが残っただけ。なのに……」

 滂沱の涙がシリウスの頬を伝う。

「駄目だ、気が狂いそうだ。何故今になって……今は大切な君がいる。どうして三百年も前の過ちが、今さら……君を傷つける者は許さない、許さない、許さない! 君は私の全てなんだ!」
「シリウス、愛しているわ」

 すっと唇に口付けると、青い瞳から激高の色がすうっと消える。新緑のひたむきな瞳が、ひたとシリウスを見つめ、彼の視線を捉えて離さない。

「愛しているの。あなたへの愛は変わらない、変わらないわ」

 何度も口づけると、そろりとシリウスの手がセレスティナの背に回る。

「ティナ、愛している」
「ええ、私もよ」

 とさりと机の上に押し倒され、セレスティナはそれを受け入れた。自分を見下ろすシリウスの視線が熱い。細部にわたって、じっくりと観察されているのが分かる。
 するりと紐が外され、外気に晒された豊満な胸は、上下に波打っている。セレスティナが今身に付けている衣服は、着脱しやすいものばかりだ。羞恥からかっと体が熱くなる。きっと肌は上気しているに違いない。

 すっと身をかがめたシリウスの唇がセレスティナの胸元に触れ、敏感な突起が舌で転がされる。じんっとした快楽が広がり、熱い吐息が漏れた。シリウスの両手で掴まれた胸はその動きで刻々と形を変える。体が熱くてたまらない。
 舌先の愛撫は止まらず、シリウスの指先がつうっとセレスティナの体の曲線をなぞり、愛を囁くように彼の唇がそこここに触れる。ゆっくりと衣服が解きほぐされ、あっという間に全裸だ。

「ティナ、私を見るんだ」

 ぞくりとするほど艶めいたシリウスの声が告げる。命令とも懇願とも取れた。そろりとセレスティナが彼に視線を向けると、セレスティナに覆い被さっているシリウスが満足気に目を細めた。肩からこぼれ落ちる白銀の髪が美しい。
 白銀の天使様。
 まさに今の彼はそれである。シャツのボタンを外し、着崩しているので、素肌がのぞき、セレスティナに向ける眼差しと相まって、妙に妖艶だ。艶めいた唇が告げた。

「ああ、綺麗だ。君は美しい」

 シリウスの称賛に、セレスティナの心がふるりと震えた。
 見られることは恥ずかしいけれど、シリウスの思いが熱く切なくて、酔ってしまいそう。シリウスの指がセレスティナの熱く潤う花弁に触れ、焦らすような動きを繰り返す。とろとろと蜜が溢れる中心に向かって、ぐっと優美な指が潜り込み、半開きになったセレスティナの唇から、抑えようのない声が零れ出た。

 ――人を愛するということがどういうことか知らなかったから。

 初めて知ったユリウスの心情に、そっとセレスティナは涙を流す。モルモットだとスピカは言った。彼は一体どれだけ殺伐とした環境に身を置いていたのだろうか。
 シリウスの愛撫に溺れながら、もしかしたらと思う。
 ユリウスは本来、誰よりも人の美醜に敏感だったのではないかと。感性が鋭くて、人や物に宿る美を見抜く力を持っていた。そこにつけ込まれた。美しいものを美しいと感じる感性のどこに罪があろうか。

 けれど、自らの意志を乗っ取られ、愚行を犯したユリウスはその力を恥じ、美しいと感じる力を閉ざしてしまった。それがシリウスにも受け継がれて、彼はいまだに人の美を感じ取ることが出来ない。けれど……

 ――美しい機器だろう?

 彼の美に対する感性はそこここで発揮され、生み出す魔道機器はどれも芸術品のよう。
 シリウス、シリウス、愛しているわ。
 ずぷりとねじ込まれた肉棒で熱く潤った最奥を押し上げられ、セレスティナの背が反り返る。
 あ……んんっ……
 喜びから涙が一粒こぼれ落ちた。体を貫いた快楽は相変わらず凄まじい。かくかくと足が震えてしまう。

「ティナ、もっとか?」

 艶めいた声が耳元で囁く。そう耳元だ。シリウスが覆い被さっているので、彼の熱い吐息、肌の熱がこれ以上ないほど伝わってくる。
 シリウス、好、き……
 思いが溢れてどうしようもない。

「ほら、私が欲しいと、そう言うんだ」

 中心を穿つ硬い一物は、最奥までみっちりと押し込められ、ひくりひくりと波打つ秘部は彼の一物にきゅうっと吸い付いている。ほんの少し動かれただけでいってしまいそうだ。こらえようのない喘ぎが次から次へと漏れる。
 い、いっちゃ、う……

「あ、ん……も、っと……」
「ふ、ふふ……欲しいか?」

 こくりと頷くと、シリウスの薄い唇が弧を描く。
 あ、ああっ!
 動かれればもう我慢など出来なかった。
 硬い肉棒の抜き差しが、ぬちゅぬちゅと内壁を刺激し、一物の先端が、最奥をずぐりと抉る。あっという間に、絶頂へと押し上げられ、彼の一物を飲み込んだ膣がひくひくと艶めかしい動きを繰り返す。
 それでもシリウスの動きは止まらない。接合部からとろとろとあふれた愛液が、出し入れされるたびにくちゅくちゅと卑猥な音を立て、硬い異物に押し広げられた内壁が、ねっとりと絡みつく。もっともっとと強請っているかのよう。

「どうだ?」

 や、聞かないで……
 いったばかりなのに、体の熱はまったく収まらず、恥ずかしくて仕方がない。きゅっと唇を引き結び、漏れ出る声を我慢しても、体の熱は増すばかりだ。とろとろに蕩かされて、どうにかなりそうである。
 良すぎて、駄目、も、もう……

 ずるりぬるりとこすり上げる熱い刺激が指のつま先まで広がり、とろけきったセレスティナの瞳が恍惚となる。いつだって、シリウスとの交わりはこんな風だ。彼の熱にとろとろに溶かされてどうしようもない。彼の一物を嬉しそうに飲み込んだ膣内は、ひくつきっぱなしである。

「い、いい……あ、ああっ!」

 シリウスの艶めかしい腰の動きで、もう限界だった。
 足のつま先がぴんっと立ち、セレスティナの背が反り返る。最奥を突き上げる一物が、ぐうっと拡張する感覚と同時に、自身の熱い感覚が弾けた。乳房を鷲掴みにされたセレスティナの体がびくりと震え、視界がとろりと甘く蕩ける。最奥にそがれた精液が熱い。
 は、ふ……

 漏れ出る満足の吐息は、やはり艶めかしい。余韻に浸るセレスティナはぼうっと夢の中だ。とくとくと心臓が早鐘を打っている。
 すご、い……

 体中を駆け巡っている快楽の余韻は中々引かず、ひくりひくりと震える膣内の圧力はいまだに衰えない。シリウスの熱い舌が彼女の唇を割った。濡れた舌がくちゅりと絡み合う。甘い口付けは淫らだ。

「ん……ふ……」

 シリウスも達しているはずなのに、まだ満足しないらしい。
 口づけたまま、ぬちゅぬちゅと出し入れが再開され、じわりと新たな熱が広がった。膣が咥え込んでいる一物は勢いを失わず、大胆に出し入れされるそれが、セレスティナの欲望を煽って止まない。恐らく自分の愛液で濡れ光っているに違いない。
 駄目、あ、またいっちゃう……

 淫らな両足は彼を求めて開ききり、熱く硬い巨根が蕩けきった膣内をみちみちと押し広げている。ずぐぬぐと最奥を押し上げられれば、もうたまらない。ひくひくと震える膣が収縮し、彼の一物を舐めるように締め上げる。
 一体何度いっただろう、シリウスの一物を咥え込んだ体は、熱い感覚が一向に収まらない。彼の肉棒を逃すまいと、彼が腰を引くと、とろとろに蕩けたあれが、ねっとりと彼の一物に絡みついてしまう。シリウスの口角が上がった。

「……可愛いな。吸い付いてくる」

 耳元でそう言われ、恥ずかしくてたまらない。どう見ても、セレスティナの淫らな反応を楽しんでいる。
 お願い、言わないで。
 ずぐりと最奥を突かれれば、全身にじんじんとした感覚が走り、ゆさゆさと体を揺さぶられて、くらくらと酩酊状態だ。
 シリウス、シリウス、あ……も、駄目……

「ティナ、私の名を呼ぶんだ」

 ぐっと指を絡め取られる。シリウスの手がセレスティナの手を掴んでいるのである。とろりとした視界に映るのは、セレスティナを見下ろす青い瞳だ。
 きれ、い……
 見惚れるセレスティナの瞳に陶酔が加わり、漏れ出るあえぎ声と共に、彼の名を呼んだ。

「シリウ、ス……」

 動きが早まり、熱が弾けそうになる。
 いい、いいの……あ……

「もう一度」
「シリウス、シリウス、あ、ああっ!」

 セレスティナの熱い感覚が弾けると同時に、やはりシリウスの一物をきつくきつく締め上げる。豊満な胸が上下に波打ち、くたりと力の抜けたセレスティナをシリウスが抱きしめた。決して逃がすまいとするように。
 ティナ、ティナ、私のティナ。君は私のものだ。私だけの……
 かき抱かれるように抱きしめられ、耳元で囁く彼の声が熱い。汗ばむ体をシリウスに抱き上げられて、今一度口づけられた。

「私が好きか?」
「ええ」
「なら、その瞳に私の姿だけを映すんだ」

 独占欲が暴走しているよう。

「そうだ、私の姿だけを見て、私の声だけを聞くんだ。ティナ、君の全ては私のものだ。わたしだけの。他の男を見ることは一切許さな……いや、駄目だ。本当にどうしようもない男だな……」

 最後は自虐的な呟きだ。
 好きだからこそ支配したい、相手の全てを自分の物に……そう願ってしまう。けれど、愛故にそれをよしとしない。シリウスの場合は、いつだって葛藤がある。
 わたし、も……
 その瞳に私だけを映してほしいわ。

 そうっとシリウスにすがりつけば、そのまま抱き上げられる。汗ばむ彼の素肌に、自分の裸体がぴったりと密着していて、シリウスの存在がダイレクトに感じられる。それはなんとも言えない至福で、新緑の瞳に陶酔の色が浮かぶ。ミントの香りが心地良い。
 シリウス、シリウス、私のシリウス……

 その後、執務室にしつらえられたシャワー室で丹念に体を洗われ、背後から抱きしめられるようにして首筋に唇に、何度も口づけられる。乳房を掴む手も、ティナ、と呼ぶ囁きも熱い。それが、泣きそうな程切なくて、喜びに心が震える。

 風呂から上がれば、脱衣所にしつらえられた魔道具が作り出す乾燥風で、あっという間に髪も体も乾いた。セレスティナはシャツを羽織らされたけれど、シリウス用のシャツなので大きい。手が全然出ない。シリウスの顔が綻んだ。

「……これはいい」

 ぶかぶかのシャツを身に着けたセレスティナに、シリウスが目を細める。やけにご機嫌だ。再び抱き上げられて、仮眠室のベッドへ運ばれたセレスティナは、用意された酒を口にした。勿論、口移しで。シリウスの髪を撫でる感触が心地良い。うっとりと目を閉じる。

「シリウス」
「うん?」
「私、幸せよ」
「ふふっ、そうか」

 優しい口付けが今一度降ってくる。青い瞳が包み込むよう。

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