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8章 帰郷!エルフの里へ ~出産騒動編~
病院で過ごそう~病院内のとある噂~
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◇
「じゃあ皆、家の事はよろしくね」
「(コクリ)」
「会いに行ける時は行くから、サーヤも出産頑張ってね!」
「家の管理は俺がしておくよ、サーヤ」
「元気な子を産むんだぞ、時々顔を出すからな」
カルステッドさん達に見送られつつ、今日からあたしはティリアさんの勤務している病院に入院する事になりました。
ティリアさんが病院に確認すると、エルも同伴するのは問題ないけど、一緒に寝泊まりできそうな個室の空きがなかったので、しばらくは家で安静に過ごす日々が続いていた。
ようやくその個室が空いたので、今日からエルと一緒に病院で入院生活することになりました。
「あたしは嬉しいけど、病院での生活ってエルはかなり時間持て余しちゃうんじゃない?」
「ん?いろいろ病室に仕込んだり、いざとなれば簡易的な調合場所を作るから心配いらないぞ」
んん?エルさんや、病室にいったい何を仕込むつもりなんですかね??
「どんなおへやか、たのちみねー」
「そうだね、僕達は姿消していればいつでも行けるからね」
「カイト、どうせだから転移魔法の練習してみるのも良いんじゃない?サーヤの魔力を探知して病室に転移するのって良い練習になると思うよ☆」
「うん、そうだね。練習してみる!」
「俺は、サーヤに悪さする奴がいないか確認しておくね」
馬車の中ではいつものメンツが賑やかに、そして時々物騒な会話をしてるけど、もう細かい事はツッコみすぎると疲れるからスルーできるところはスルーです。
◇
「サーヤちゃん、こっちよ。皆さんもお疲れ様です」
馬車で病院の入院用入り口に着くと、ティリアさんがすぐに気づいて来てくれた。
馬車を降りてから、ミナトちゃん達は姿を見えないようにしているため、表向きはティリアさんの後ろにあたしとエルの2人しか見えていないけど、実際は後ろにミナトちゃん達がいる状態だ。
病室に入ってからまた姿を現すらしい。
ティリアさんに案内された個室は、なんというかドアからして重厚感のある凄い部屋だった。
「この部屋は、高位の貴族が使用人と共に使う部屋なの。院長には”詳しい身分は明かせませんが、他国籍で王族とも親しい高貴な方々です”と伝えてあるわ」
「あぁ、それで問題はない。概ね合っているしな」
そんなこんなで、案内された個室はさすが高位の貴族専用という事もありベッドが大きくふかふかで、簡易キッチンに風呂とトイレ、応接用のソファとテーブルも完備され、そして使用人用の寝室もあるとても広めの部屋だった。
「なんか、今まで泊ってきた宿のスイートルームみたいな場所だね」
「ソファ、ふかふかなの~」
「あ、テーブルにお菓子がある。おねーさん、食べても良い?」
「病院で用意したお茶菓子やティーセットは自由に使っていいですよ。補充が必要な時はすぐに仰ってください」
「ありがとうございます。カイトくん、お菓子食べても大丈夫だよ」
入院中の注意事項や、病院の設備などいくつか説明を受けた後、ティリアさんは自分の仕事に戻っていった。
ベッドにあるベルを鳴らすと、常駐している看護師さんがすぐに来るので何かあったらベルを鳴らすだけで良いみたい。
エルが持ってきた荷物を整理して、あたしをベッドに寝かせてくれた。
ミナトちゃんやカイトくんはソファでお菓子を食べ、ベルナートさんが犬の姿になって2人のクッション代わりになり、セイルは「ちょっと散策してくるね☆」と言って窓から外に出て行った。
朝、昼、夕のご飯は看護師さんが持ってきてくれるようで、早速お昼ご飯を持ってきてくれた看護婦さんがエルの存在に驚いていた。
はわぁ~・・・美人な看護婦さんだぁ・・・
「え、えっと・・・そちらの方は、奥様の執事ですか?」
「いえっ!彼は、あたしの・・・お、おっ・・・夫です」
「そ、そうなんですね・・・ご主人様・・・」
結婚してからすでに数か月経つものの、思えば日本みたいに結婚指輪もないし(あたしはエルから貰った指輪をしてるけど)、こうやってエルの事を「夫です」なんて初めて口に出して言ったから、ものすごく照れくさい。
「ふっ、“夫”と口にするだけで照れるなど、我が妻は本当に可愛い奴だな」
「へ?エル・・・んっ、んんっ?!」
「??!!」
顔を赤くしながらエルの言葉に反応したら、看護婦さんのいる前でエルにキスされた。
しかも、魔力を含んだ舌を絡める濃厚なヤツです。
なんで看護婦さんがいる前で、魔力も含んだ甘いキスを今してくるのよっ!!
エルのバカ~~~~~っ!!!
案の定力が抜けて蕩けてしまったあたしはエルにもたれかかるわけで、恥ずかしくてエルの胸にそのまま顔を埋めてしまった。
「と、とても仲の良いご夫婦なんですね・・・では食事が終わった頃食器を取りに参ります」
そう言って看護婦さんはそそくさと病室を出て行った。
看護婦さんが出て行った後、あたしはエルにすかさず文句を言った。
「エル!どうして看護婦さんの前で、あんな・・・」
「牽制だ」
「へ?牽制・・・??」
エル曰く、あの美人看護婦さんはエルを見た瞬間に色目を使ってくる女の人と同じ雰囲気があり、あたしが“夫です”と紹介した事で少しショックを受けた顔をしたらしい。
この部屋を使う立場の者と考えればこれ以上何もしてこないと思うけど、あたしへの魔力補給をいつでも自然にできた方が良いし、仲の良い所を見せつけた方が牽制にもなるので、あの場で魔力補給を含めたキスをしたらしい。
「妻が妊娠中だという貴族に色目を使う女狐がたくさんいたからな・・・」
・・・なんか、少しだけ遠い目をして言っているエルを見ると何も言えなくなってしまった。
昔、いろいろあったんだね、うん。
食事の後、あたしは少し眠くなったのでそのままベッドで眠り、その間にエルがこの部屋にいろいろ結界やらバリアやらベルナートさんの黒曜石やらを仕込んだらしいです。
子供を産むための入院なのに、そんな警戒する必要あるかなぁ?と疑問に思いつつ、入院生活一日目は平和に終了したのでした・・・―――
◇
入院から数日が経つと、カルステッドさん達も交代で病室に来てくれたり、ミナトちゃん達も堂々と姿を現して、元気な時は病院の敷地内を散歩したり日向ぼっこしたりと穏やかに過ごしていた。
もちろんエルが片時も離れずそばにいてくれるので、あたしとしては嬉しい限りだった。
平和な入院生活が続いていたある日、いつもはそばにいるエルが“今日はちょっと研究室で作りたいものがあるから”と言って夜まで不在となった。
今みたいにエルが不在でも、あたしのそばには姿を見せた状態のミナトちゃんやカイトくん、姿を消した状態のベルナートさんが護衛についており、セイルも木の上や屋上からあたしを見てるようなので身辺警護はいつでも過剰なくらいだ。
元気な時は散歩をすると良いと言われてるため、今日はミナトちゃんとカイトくんを連れて病院の中庭までお散歩する事にした。
「今日は天気が良いね~」
「おしゃんぽびよりなのね~」
「おねーさん、ここ段差があるから気を付けて」
ミナトちゃんとカイトくんのエスコートで、足元が見えなくてもちゃんと中庭まで辿り着き、カイトくんに預けている魔法袋からクッションを出して、中庭のベンチに仲良く腰を掛けて休憩した。
「そう言えば、いろんなことがあったから双子達の名前をエルと話した事なかったなぁ」
「サーヤまま、おなまえはだいじなのよ。ちゃんとかんがえないと、めっなの」
「そうだね。双子達への最初のプレゼントだものね。エルにちゃんと話して一緒に考えるよ」
「あいなの!」
「おねーさん、なんか変な雰囲気の人が来た」
「え?変な雰囲気?」
カイトくんがそう教えてくれた後、貴族と思われる妊婦の女性が使用人の押す車椅子に乗ってやってきた。
そして、その車椅子はあたし達の前で止まった。
「噂の特別室に入院しているというのはあなたかしら?」
「特別、室・・・?・・・噂??」
突然そう言って現れたのは、豪華な車椅子に乗ったパステルピンクの縦ロールの妊婦さんでした・・・―――
「じゃあ皆、家の事はよろしくね」
「(コクリ)」
「会いに行ける時は行くから、サーヤも出産頑張ってね!」
「家の管理は俺がしておくよ、サーヤ」
「元気な子を産むんだぞ、時々顔を出すからな」
カルステッドさん達に見送られつつ、今日からあたしはティリアさんの勤務している病院に入院する事になりました。
ティリアさんが病院に確認すると、エルも同伴するのは問題ないけど、一緒に寝泊まりできそうな個室の空きがなかったので、しばらくは家で安静に過ごす日々が続いていた。
ようやくその個室が空いたので、今日からエルと一緒に病院で入院生活することになりました。
「あたしは嬉しいけど、病院での生活ってエルはかなり時間持て余しちゃうんじゃない?」
「ん?いろいろ病室に仕込んだり、いざとなれば簡易的な調合場所を作るから心配いらないぞ」
んん?エルさんや、病室にいったい何を仕込むつもりなんですかね??
「どんなおへやか、たのちみねー」
「そうだね、僕達は姿消していればいつでも行けるからね」
「カイト、どうせだから転移魔法の練習してみるのも良いんじゃない?サーヤの魔力を探知して病室に転移するのって良い練習になると思うよ☆」
「うん、そうだね。練習してみる!」
「俺は、サーヤに悪さする奴がいないか確認しておくね」
馬車の中ではいつものメンツが賑やかに、そして時々物騒な会話をしてるけど、もう細かい事はツッコみすぎると疲れるからスルーできるところはスルーです。
◇
「サーヤちゃん、こっちよ。皆さんもお疲れ様です」
馬車で病院の入院用入り口に着くと、ティリアさんがすぐに気づいて来てくれた。
馬車を降りてから、ミナトちゃん達は姿を見えないようにしているため、表向きはティリアさんの後ろにあたしとエルの2人しか見えていないけど、実際は後ろにミナトちゃん達がいる状態だ。
病室に入ってからまた姿を現すらしい。
ティリアさんに案内された個室は、なんというかドアからして重厚感のある凄い部屋だった。
「この部屋は、高位の貴族が使用人と共に使う部屋なの。院長には”詳しい身分は明かせませんが、他国籍で王族とも親しい高貴な方々です”と伝えてあるわ」
「あぁ、それで問題はない。概ね合っているしな」
そんなこんなで、案内された個室はさすが高位の貴族専用という事もありベッドが大きくふかふかで、簡易キッチンに風呂とトイレ、応接用のソファとテーブルも完備され、そして使用人用の寝室もあるとても広めの部屋だった。
「なんか、今まで泊ってきた宿のスイートルームみたいな場所だね」
「ソファ、ふかふかなの~」
「あ、テーブルにお菓子がある。おねーさん、食べても良い?」
「病院で用意したお茶菓子やティーセットは自由に使っていいですよ。補充が必要な時はすぐに仰ってください」
「ありがとうございます。カイトくん、お菓子食べても大丈夫だよ」
入院中の注意事項や、病院の設備などいくつか説明を受けた後、ティリアさんは自分の仕事に戻っていった。
ベッドにあるベルを鳴らすと、常駐している看護師さんがすぐに来るので何かあったらベルを鳴らすだけで良いみたい。
エルが持ってきた荷物を整理して、あたしをベッドに寝かせてくれた。
ミナトちゃんやカイトくんはソファでお菓子を食べ、ベルナートさんが犬の姿になって2人のクッション代わりになり、セイルは「ちょっと散策してくるね☆」と言って窓から外に出て行った。
朝、昼、夕のご飯は看護師さんが持ってきてくれるようで、早速お昼ご飯を持ってきてくれた看護婦さんがエルの存在に驚いていた。
はわぁ~・・・美人な看護婦さんだぁ・・・
「え、えっと・・・そちらの方は、奥様の執事ですか?」
「いえっ!彼は、あたしの・・・お、おっ・・・夫です」
「そ、そうなんですね・・・ご主人様・・・」
結婚してからすでに数か月経つものの、思えば日本みたいに結婚指輪もないし(あたしはエルから貰った指輪をしてるけど)、こうやってエルの事を「夫です」なんて初めて口に出して言ったから、ものすごく照れくさい。
「ふっ、“夫”と口にするだけで照れるなど、我が妻は本当に可愛い奴だな」
「へ?エル・・・んっ、んんっ?!」
「??!!」
顔を赤くしながらエルの言葉に反応したら、看護婦さんのいる前でエルにキスされた。
しかも、魔力を含んだ舌を絡める濃厚なヤツです。
なんで看護婦さんがいる前で、魔力も含んだ甘いキスを今してくるのよっ!!
エルのバカ~~~~~っ!!!
案の定力が抜けて蕩けてしまったあたしはエルにもたれかかるわけで、恥ずかしくてエルの胸にそのまま顔を埋めてしまった。
「と、とても仲の良いご夫婦なんですね・・・では食事が終わった頃食器を取りに参ります」
そう言って看護婦さんはそそくさと病室を出て行った。
看護婦さんが出て行った後、あたしはエルにすかさず文句を言った。
「エル!どうして看護婦さんの前で、あんな・・・」
「牽制だ」
「へ?牽制・・・??」
エル曰く、あの美人看護婦さんはエルを見た瞬間に色目を使ってくる女の人と同じ雰囲気があり、あたしが“夫です”と紹介した事で少しショックを受けた顔をしたらしい。
この部屋を使う立場の者と考えればこれ以上何もしてこないと思うけど、あたしへの魔力補給をいつでも自然にできた方が良いし、仲の良い所を見せつけた方が牽制にもなるので、あの場で魔力補給を含めたキスをしたらしい。
「妻が妊娠中だという貴族に色目を使う女狐がたくさんいたからな・・・」
・・・なんか、少しだけ遠い目をして言っているエルを見ると何も言えなくなってしまった。
昔、いろいろあったんだね、うん。
食事の後、あたしは少し眠くなったのでそのままベッドで眠り、その間にエルがこの部屋にいろいろ結界やらバリアやらベルナートさんの黒曜石やらを仕込んだらしいです。
子供を産むための入院なのに、そんな警戒する必要あるかなぁ?と疑問に思いつつ、入院生活一日目は平和に終了したのでした・・・―――
◇
入院から数日が経つと、カルステッドさん達も交代で病室に来てくれたり、ミナトちゃん達も堂々と姿を現して、元気な時は病院の敷地内を散歩したり日向ぼっこしたりと穏やかに過ごしていた。
もちろんエルが片時も離れずそばにいてくれるので、あたしとしては嬉しい限りだった。
平和な入院生活が続いていたある日、いつもはそばにいるエルが“今日はちょっと研究室で作りたいものがあるから”と言って夜まで不在となった。
今みたいにエルが不在でも、あたしのそばには姿を見せた状態のミナトちゃんやカイトくん、姿を消した状態のベルナートさんが護衛についており、セイルも木の上や屋上からあたしを見てるようなので身辺警護はいつでも過剰なくらいだ。
元気な時は散歩をすると良いと言われてるため、今日はミナトちゃんとカイトくんを連れて病院の中庭までお散歩する事にした。
「今日は天気が良いね~」
「おしゃんぽびよりなのね~」
「おねーさん、ここ段差があるから気を付けて」
ミナトちゃんとカイトくんのエスコートで、足元が見えなくてもちゃんと中庭まで辿り着き、カイトくんに預けている魔法袋からクッションを出して、中庭のベンチに仲良く腰を掛けて休憩した。
「そう言えば、いろんなことがあったから双子達の名前をエルと話した事なかったなぁ」
「サーヤまま、おなまえはだいじなのよ。ちゃんとかんがえないと、めっなの」
「そうだね。双子達への最初のプレゼントだものね。エルにちゃんと話して一緒に考えるよ」
「あいなの!」
「おねーさん、なんか変な雰囲気の人が来た」
「え?変な雰囲気?」
カイトくんがそう教えてくれた後、貴族と思われる妊婦の女性が使用人の押す車椅子に乗ってやってきた。
そして、その車椅子はあたし達の前で止まった。
「噂の特別室に入院しているというのはあなたかしら?」
「特別、室・・・?・・・噂??」
突然そう言って現れたのは、豪華な車椅子に乗ったパステルピンクの縦ロールの妊婦さんでした・・・―――
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