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14章 初めての家族旅行兼新婚旅行 ~お城はやっぱり危険なトコロ~

下剋上の始まり

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前半→カケル視点
途中からセイル視点に切り替わります

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「・・・―――――今、何と言った?カケル」
「国王・・・いえ、父上。あなたには国王の座から退いていただきます」

レヴィン殿と行動を共にした翌日、オレは何の先触れもなく父上がいる謁見の間来ている。
朝早い時間帯は聖獣女がほとんどいないので、仕掛けるな今しかないと思ったのだ。

そして、父上はオレの申し出に予想通りの反応を示した。

「はっ!寝言は寝て言え。次の国王を決める決定戦は来年だ!時期尚早な上に、無礼極まりない。息子だと思って甘やかしすぎたか」
「いえ、寝言などではありません。我が国に伝わる資料、“国王の代替わり5箇条”に基づいた正式な申し出です」
「なっ?!あれは国内の有力者や国民の賛同も6~8割必要なはずだ!お前のような若造にそんな支持が集まるわけ・・・―――――」

「我々は、カケル様を次期国王として推挙させていただきます!!」

謁見の間に突如入ってきたのは、ガハト公爵を始めとした国内の有力貴族のご当主達だ。

入り口にレヴィン殿と光の精霊様が見えるから、オレの持っている書状だけでは弱いと判断しあの方達がここへ誘導して下さったのだろう。
・・・だが、なぜだろう。中には数名顔色が悪い者と震えている者がいる気がする・・・

「お前達、裏切ったな!!」
「裏切るも何も、我々は“国王”足る方に仕える身。何もおかしい事はしておりません」
「国王たる方・・・だと?なんだそれは?まさかそれがオレではなくカケルだとでも言うのか?」
「さようでございます」
「カケル様はしっかりと条件を満たしております。後は、現国王、及び反対派の代表を武力にて打ち負かすことができれば、カケル様が新しい国王ですぞ」
「??!!」


レヴィン殿の言っていた通り、ガハト公爵が調べた市政調査では、王都国民全員がオレが新国王となる事に賛同していたらしい。
話を聞いた時はにわかに信じられなかったが、先ほど護衛から正門が見えるバルコニーへ誘導された時に見た景色が嘘ではないのだと教えてくれた。


『新国王様万歳!』
『これから新しい事いろいろ始めるんでしょ?頑張って!!』
『期待してるからな!!!』


たくさんの期待が込められた王都の民達からの温かい声。
オレはこの者達の期待を裏切ることはできないし、裏切るつもりは毛頭ない。

「父上・・・国民は、上から命令するだけで何もしないあなたに何も期待しておりません」
「バカな?!誰がそのような事を戯言を・・・」
「戯言などではございません。あなたは“国王”という立場を利用し、めかけに離宮を与え高価なプレゼントを買い与えたりと好き放題ばかり・・・宰相からすべて話を聞いております。今まで父上が好き勝手な豪遊生活ができていたのは、すべて宰相と財務大臣の働きによるものです」
「!!!!・・・っ、うるさいうるさいっ!あれは、国を少しでも豊かにしようと聖獣殿をもてなした必要経費だ!それに、これから精霊殿だって・・・」
「無理矢理手に入れるために卑劣な策を弄するのが、一国の王たる者のする事か!!」
「!!」
「あなたが手に入れようとした精霊様・・・いえ、精霊の王は、すでに別の人間に加護を与えている方だ。その人間を手に入れるために聖獣様と手を組み、その者の家族を誘拐、あまつさえ殺害しようとするなど、同じ人間の行動とはとても思えぬ!!」

周囲にいる貴族はすべてを知っているわけではないから、オレの発言に皆が困惑してザワザワし始めた。

反対派がいると思っていたが、意外にも申し出る者は未だにいない。
後は父上を武力で打ち負かせば、オレは新しい国王となる!!


オレは、訓練などに使う模造刀を1本父上に向かって放り投げた。

「父上、その剣をお取りください。・・・そして、国王の座をかけてオレと勝負を・・・―――――」
「・・・・・・るな・・・」
「え?」
「ふざけるなっ!オレは国王だ!!このような国王の代替わりなど認めぬっ!認めるものかぁぁぁっ!!!」

父上はそう言って、人が少ない窓に向かって攻撃魔法を放ち、そのまま庭へと逃走した。
向かう先は恐らくあの離宮だろう。

「追うぞ!父上は、南東の離宮に向かったはずだ!!」

ライが言うには結界が張ってあると言っていた。あそこへ逃げ込まれたら厄介だ。


オレは護衛や近衛兵数名を引き連れて、父上が向かったであろう離宮へと急いだ。





昨夜遅く、聖獣女はかなりぐったりした状態で帰ってきて、そのまま吸い込まれるようにベッドに入り眠りに就いた。そして、未だに起きてこない状態だ。
たぶん陽の光を見る限り、昼・・・ではないまでも近い時間ではあるだろう。

ボクとしてはこのまま永遠に眠ってて欲しいけど、いつもみたいに独り言でペラペラ喋ってくれないと外の状況がいまいちわからない。
ちなみに、エリュシオンも昨日サーヤに魔力を与えてから深い眠りに就き、未だに起きない。
ま、こっちは回復に時間がかかるだろうから仕方ないんだけどさ。

つまり何が言いたいかって言うと、ボクは現在めちゃくちゃ暇を持て余している。

「ん~・・・ベルナートから貰ったアイテムを試しに使いたいけど、聖獣女に気付かれたら面倒だしなぁ」

たぶん今日中にサーヤがライムントの加護を得て、皆が乗り込んでくるはず。
だから今は、”何もしない”という選択が一番なのはわかってるんだけど・・・

「ここに来てからやることなくて暇すぎ・・・あ、エリュシオンの髪の毛でも切り揃えてみようか☆」

改めて二人が眠っていることを確認して、ボクはエリュシオンの身体を壁に寄りかかるよう横向きに起こした。少し体勢が斜めだけど、これくらいならそんなにズレることもないだろう。

ライムントが以前置いて行ったナイフで、まずは毛先の長さを揃えてみた。
揃えること自体は難しくなかったけど、ナイフだとどうしても思うように切れない。

「はぁ・・・魔法が使えたら、風でシュパパンっと良い感じにしてあげるのになぁ・・・」

ここでは魔法を使えないのに、”こうしたいなぁ”というイメージで無意識に指先が動く。
すると、なぜかイメージ通りにエリュシオンの髪の毛を切ることができた。

「え?今ボク魔法使えた??・・・って事は、もしかして・・・―――」
「ん・・・なぁに?今の・・・魔法??」
「!!!」

ヤバっ!魔法を使えたのは嬉しいけど、聖獣女を起こしたのはまずった!!
・・・あれ、でも待てよ?魔法が使えるって事は、ここから自力で脱出できたりする??

一か八か、エリュシオンを連れて転移魔法を使おうとしたら、さすがにそれはバチバチバチッっと弾かれてしまった。

「~~~~っ、やっぱりダメか」
「あら、目が覚めてたみたいね。・・・ん?でもまだ調整が終わってな・・・いえ、そもそもどうしてその中で魔法が使えるのかしら?」
「あは☆やっぱりここまでしたらバレるよね・・・」

完全に覚醒した聖獣女と目が合う。
どうしよう。サーヤがライムントの加護を得たことで、この結界内で魔法が使える恩恵が得られたみたいだけど、この檻の中にいる限りかなり制限されてるっぽい。


エリュシオンもまだ起きる気配がないし、これはやらかしちゃったかも・・・
珍しくボクがピンチなんだから、早く助けに来て!サーヤ!!


そう思いながら、対応できるモノがないかと貰ったアイテムをごそごそと漁っていると、ドタバタとこの部屋に近づいてくる足音が聞こえてきた。
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