夏服と雨と君の席

神楽耶 夏輝

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両親の死

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 シンジは時々、悪い夢を見る。
 その夢は必ず、現実となってしまうのだ。つまり、予知夢。
 初めて予知夢を見たのは、中学に上がる時だ。

 小学校を卒業するまで、シンジは東京に住んでいた。
 父は元々、この小井島の出身だったが、高校卒業後、進路先が乏しいこの島を離れて東京の大学へ進学し、そのまま就職。
 伸び伸びと子育てができる島の環境も捨てがたかったが、選択肢が広がる東京での子育てを、両親は選んだのだそうだ。

 小学校の卒業式が終わり、ちょうど春休みに入った時だった。
 シンジの休みに合わせて両親は休暇を取り、家族で九州へ旅行に行く計画を立てていた。

 その当日の朝の事。

 車の中で、頭から血を流して動かなくっている両親の夢にうなされて、目を覚ました。
 ちょうど、今朝のように。

 朝から出かける準備に忙しない母に向かって、シンジは言った。

「お父さんとお母さんが車の中で、死んじゃう夢を見たんだ」

 母は口紅を塗りながら「そう、怖かったわね。夢でよかったわ」そう言って優しく笑った。
 その話を聞いていた父は「出かける前に縁起でもない事言うんじゃないよ」と少しイラついた様子を見せた。
 当然、それが現実になるなど、シンジにさえもわからなかったのだ。

 事故は、三泊四日の沖縄旅行を楽しんだ帰りに起きた。
 羽田空港で夕飯まで済ませ、夜のドライブを楽しみながらの帰途だった。
 空港まで、自家用車を使った悲劇だ。あの時、電車で行こうと言えばよかったというシンジの後悔は未だ拭えない。

 お腹が満たされて後部座席でうとうとしていた時だった。すごい衝撃と爆音で現実に引き戻された。
 一瞬、何が起きたのかわかるはずもない。
 ただ目の前には、今朝、夢で見た光景が広がっていた。
 焦げ付くような匂いと、間近で耳をこする車の走行音。

「お父さん、お母さん!!」

 シンジの呼び声に、両親の反応はない。
 けたたましく鳴り響く救急車のサイレンが恐怖を増幅させた。
 後々わかったのだが、春の行楽シーズンで、酒に酔ったドライバーがハンドル操作を誤って、追い越し車線から運転席側に突っ込んで来たのだ。
 シンジ一家が乗っていた普通乗用車はガードレールに激突。追突してきた車に挟まれる形で潰れていた。
 避けようのない事故だった。
 後部座席に座っていたシンジは奇跡的に助かったが、両親は頭部の酷い損傷で、ほぼ即死との事だった。

 その後の事は、あまりよく覚えていない。
 ショックのあまり、眠れない日が続いた事だけは、なぜかよく覚えている。

 シンジは、一人この島で暮らしていた父方の祖父である宗次郎に引き取られて、この島の島民となった。
 中学の入学式には間に合わず、同級生とは違うタイミングで中学に通う事となった。
 ゆらに出会ったのは、その時だ。
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