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21話(3)【室町和風ファンタジー / あらすじ動画あり】
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■お忙しい方のためのあらすじ動画はこちら↓
https://youtu.be/JhmJvv-Z5jI
■他、作品のあらすじ動画
『【和風ファンタジー小説 あらすじ】帝都浅草探しモノ屋~浅草あきんど、妖怪でもなんでも探します~』
-ショート(1分)
https://youtu.be/AE5HQr2mx94
-完全版(3分)
https://youtu.be/dJ6__uR1REU
ーーーーーーーーーーー
「何だ、これ……」
屋敷の中は、先ほどとは随分、様子が違っていた。
あんなに荒れ果てていたはずの部屋が、今はまるで往時のように整っている。漆塗りの調度品は輝き、床も鏡のように反射するまで磨かれている。御簾も唐障子にも汚れや破れ一つなく、今にも廊下の向こうから住人たちの雅やかな声が聞こえてきそうだ。
「ゼア、こっちだ」
義満がある部屋の前で片膝をつき、手招きをしてきた。
「あの女は、この部屋の中に逃げ込んだようだ」
それを聞いた途端、ずしりと胸が重くなる。
あのことを義満に言うべきか。それとも、言わない方がいいのか。
「そういえば、セイは……?」
今更ながらに気がついた。てっきり義満と一緒にいると思ったが、セイの姿はどこを探しても見当たらない。
「あぁ、それなんだが、あの赤髪の女、お前が庭の方に走り出してしばらくしてから、途端に苦しみだしてな。それでお前に知らせようと、追いかけたんだ。そしたらあの女面がいたものだから──」
「セイが苦しみだした? ──そうか、瘴気か」
屋敷の中には、先ほどとは桁違いのどす黒い瘴気が渦を巻いていた。瘴気に弱いセイは、これではひとたまりもないだろう。
「早く行ってあげないと……ん? でも、どうして大樹様がセイのことを?」
「それが、なぜだかわからないが、この屋敷の様子が変わった途端に、見えるようになったんだ」
「……一体、どうゆうことだ?」
しかし考えている暇はない。今はセイを探さないと。
「大樹様、僕を彼女のところに案内して下さい」
すると、義満は目の前の部屋の扉を親指で指差した。
部屋の中は、廊下よりも濃くねばついた瘴気が充満していた。脱ぎ捨てた自分の白拍子の衣がなければ、ここが先ほどまで自分たちがいた部屋だとは気づかなかったくらいだ。
塵一つない板間には、四方を囲むように白い紗の几帳が何重にもたてかけられていた。それらは、風もないのにゆらゆらと柳の葉のように揺れている。
「ここは、一体……」
「ここは夢幻(むげん)空間よ」
苦しげな声が聞こえたと思ったら、壁に近い几帳の裏で、セイが身体を丸めていた。
「……セイ!? 大丈夫……!?」
急いで駆け寄ると、セイが力なく顔を上げる。その顔色は紙のように白く、白目は鈍い金に爛々と光っていた。彼女が荒い息をはく度、その華奢な肩が大きく揺れる。喉からはシューシューと細い息がもれていた。
「しっかりして! とにかく、早くここから出よう!」
「無理よ。夢幻空間からは、誰も出られない。花鬼(かき)を倒さない限り」
「どうゆうことだ?」
周りを見張っていた義満が、セイの方を真っ直ぐに見た。やはり彼の目にも、彼女の姿は見えているらしい。
セイは、苦しげな息をひとつ吐く。
「夢幻空間というのは、花鬼の作り出した特別な空間のこと。ここは何もかもが現実と切り離されている。いわば花鬼が作りだした、幻の空間。だから、普通の人でも私たちの姿が見えるようになるってわけ。そして、たぶんここは……花鬼の過去の記憶の中のようね」
「花鬼の過去の記憶の中? それってつまり、物語の中ってこと?」
こんな状況でもなければ、喜びのあまり踊り狂ってしまいそうだった。
だが、もちろん今はそんなことをしている暇はない。
藤若は顔を引き締め、辺りを見回す。部屋の内装は今のものとは少し違い、どこか王朝時代を感じさせるようなものだった。
その時、部屋を埋め尽くしている几帳が、一斉に大きく揺らめいた。どこからか、白い霧がもくもくと籠もり始める。
「何だ……?」
義満が太刀に手をかける。セイが険しい表情でにやりと笑った。
「気をつけて。あれこそが花鬼の真の姿よ」
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毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
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