【あらすじ動画あり / 室町和風歴史ファンタジー】『花鬼花伝~世阿弥、花の都で鬼退治!?~』

郁嵐(いくらん)

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22話(1)【室町和風ファンタジー / あらすじ動画あり】

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■お忙しい方のためのあらすじ動画はこちら↓
https://youtu.be/JhmJvv-Z5jI

■他、作品のあらすじ動画
『【和風ファンタジー小説 あらすじ】帝都浅草探しモノ屋~浅草あきんど、妖怪でもなんでも探します~』

-ショート(1分)
https://youtu.be/AE5HQr2mx94
-完全版(3分)
https://youtu.be/dJ6__uR1REU    
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霧の中に、ぼやっと人の形の影が浮かび上がった。その頭と思しきところからは、二本の長い角が生えている。

「!?」
霧を散らして中から現れた姿を見て、その場にいた全員が息を飲んだ。

耳まで大きく裂けた口元。のぞく鋭い牙。飛び出んばかりに、剥き出しになった金の眼。

何度も見たことがある。
これは般若──女の鬼の面だ。




 〽 あら恨めしや
 今は打たで叶ひ候ふまじ


般若面を被った花鬼は長い撞木杖(しゅもくづえ)を手に、すり足で部屋の中に入ってきた。

「どこだ。どこにいる」

恨みのこもった低い声が、部屋に反響する。花鬼が通る度、周りの几帳がゆらゆらと揺らめいた。

藤若たちは几帳の後ろで、じっと息を殺していた。どうやら花鬼は、藤若たちの存在には気づいていないらしい。探し回るように、部屋の中をうろうろと徘徊している。

「あれが花鬼の真の姿……? さっきの女面とはどう違うの?」
隣のセイに小声で聞く。

「さっきまでの女面は、あくまでも取り憑かれた人間側の意志で動いていたようなもの。でも今は、花鬼が完全にその身体を乗っ取った状態で──」

セイが口を閉じる。
花鬼の足音が、すぐ近くから聞こえてきたのだ。白い絹ごしに、長い角を生やした人影が通り過ぎるのが見えた。

(行ったか……?)
足音が遠くなったのを確認してから、藤若はそっと外の様子を窺った。

「──そこかぁっ!」
少し離れたところにいた花鬼が、くわっと振り返った。杖を掲げ、真っ直ぐに藤若たちの方に向かってくる。

(しまった! 見つかったっ……!)

だが予想に反して、花鬼は几帳の前を通り過ぎると、迷うことなく部屋の中央に落ちていた藤若の着物に向かって行った。


 〽 思ひ知らずや
   思ひ知れ
   恨めしの心や あら恨めしの心や


バシッバシッと花鬼の杖が、白拍子の着物を打ち据える。

「何して……──ぐっ!」
突然、身体を襲った痛みに、藤若はがくりと膝をつく。

几帳の外では、花鬼が何度も何度も、着物を打ち据えていた。その度、藤若の身体に強烈な痛みが走る。まるで直接打ち据えられているかのように。

「ゼアッ!? どうしたっ!?」
倒れかけた藤若の身体を、義満が支える。

「しっかりしろ! どうしたんだ!」
「……っ、たぶん、あの、着物が……」
「……着物? あれか!」

義満は太刀を抜くと、迷わず几帳から飛び出した。

「そこをどけっ……!」
義満が着物を打ち据える花鬼の背後から、白刃を薙いだ。だが花鬼は背中に目があるかのように両足を揃えて跳躍すると、太刀を避ける。

「さすが鬼だな! 芸人よりもすばしっこい!」

義満はふりきった太刀筋を正すと、今度は正面から太刀を振りかざした。花鬼は撞木杖でそれを受け止める。
両者の視線が、交わる。

「朝日! お前は朝日だろう? 一体、なぜこんなことをする! なぜ俺ではなく、ゼアを狙う!?」
「なぜ、だと……?」

般若の面から、くぐもった低い声が虚ろに響いた。途端、花鬼の身体からぶわりと瘴気の渦が上がる。

「……っ」
義満は反射的に、距離をとった。体勢を低くして、太刀を構える。

「──憎い」
対峙した花鬼の身体からは、黒い瘴気が燃え上がる炎のようにメラメラと立ち上っていた。

「憎い憎い憎い憎い! あの女が憎いっ! あの女を出せっ! 貴方の心を奪おうとしている、あの冷徹で非道な女をっ!」

魂の奥底から、絞りだしたような金切り声。

花鬼の目は、真っ直ぐに義満に向けられていた。だがその目は義満を見ているようで、見ていなかった。まるで義満を通して、違う他の誰かを見ているかのように。

(あれは、花鬼自身の叫びだ……あの人のじゃない……)

それでも藤若はじっとしていられなかった。いまだ軋む身体を起こして、几帳から這い出る。
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