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大きなうねり(7)
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☆☆☆
出発時刻を遅らせて、ルービック師団長は馬車へ部下のエドガー連隊長、そして冒険者ギルドからはルパートとエリアスを呼んだ。信頼できる彼らにユーリからもたらされた情報を話し、今後の方針について話し合っているのだろう。
だろう、と推測なのは今の私は外に居て馬車内の会話が聞こえていないから。定員オーバーになるので馬車を降りていた。既に事情を知っているエン、マキア、マシューと共に部外者が近寄らないよう見張り役だ。
「いったい師団長は何をしておいでなのだ! 予定の時間をとうに過ぎているではないか!」
人払いをしたというのにさっそく近付いてきた無頼者が居た。イラつきを隠さず噛み付いてきたのは、大問題を起こしている張本人・グラハム連隊長だった。出発が遅れているのはおまえのせいだ馬鹿、腹のゼイ肉を力いっぱい掴むぞ? 握力48有る私は心の中で毒づいた。
グラハムの背後には四人の兵士が従っている。彼らが実行役だろうか? ユーリの水に毒を仕込んだ者がこの中に居るかもしれないのだ。エンが鋭い目つきで彼らを睨んでいた。
「すみませ~ん連隊長。もう少しで終わりますので~」
マシューが全く心のこもっていない謝罪をした。グラハムは私達の顔を見てからフンッと鼻を鳴らした。
「彼らは冒険者ギルドの輩だろう? 師団長は何故彼らをお側に置くんだ?」
「そりゃあ大活躍しましたから~。師団長暗殺を止めて、公民館への突入路を切り開き、尚且つアンダー・ドラゴン幹部二名の捕縛に成功した皆さんです。師団長としては充分に功を労いたいとお考えですよ~」
「はん。だが両名共に、情報を吐く前に服毒自殺を図ったそうじゃないか」
どの口がそれを言うのか。私の横のエンが必死で殺意を抑えているのを感じた。
「……ですね、それは残念でした。二名とも先ほど死亡を確認しました」
マシューの言葉を聞いて、グラハムは下卑た顔に安堵の色を浮かべた気がした。いや気のせいじゃないよね。コイツは口封じができたと絶対喜んでいる。
でも残念でした。ユーリは思いっきり無事です。彼が生存していることは聖騎士とギルドメンバーしか知らない。
「三十分後くらいには出発できるかと思いますので、どうぞご自分の馬車へお戻り下さい」
「ふん」
最後までムカつく態度でグラハムと彼の部下は去っていった。そのお尻を蹴り上げたい。
「ロックウィーナさ、今グラハムさんの尻を蹴っ飛ばしたいとか思ってない?」
マシューに心を読まれた。
「いえ全然?」
私はすっ呆けた。
☆☆☆
予定から大幅に遅れて、第七師団と冒険者ギルドの一行は帰路についた。兵団はアンダー・ドラゴンの本拠地で見つけた隠し財宝と共に王都へ、私達はフィースノーのギルド支部へ戻るのだ。
ただし王都もフィースノーの街も国の中部地方に在るので、途中まで二~三日間はまた一緒に旅をすることになる。
ユーリの身柄は相談の末に冒険者ギルドの預りとなった。兵団内には何処にスパイが潜んでいるか判らない。再度の暗殺を防ぐ為にユーリは素性を隠し、ギルド職員に扮して私達と一緒に行動することになった。
彼は兵団の連絡役と会う時は常に覆面姿だったらしい。なので素顔になって髪を結ぶ位置を変えた。更にマキアから明るい色調の服を借りて、黒染めの衣から着替えたユーリはだいぶ雰囲気が変わった。きっとアンダー・ドラゴン首領の側近にはもう見えないだろう。拘束はもちろん解かれている。
「すみません、俺達兄弟の事情でギルドを巻き込むことになってしまって」
エンが皆に頭を下げた。
「気にしないで下さい。アンドラと買収された貴族や議員を放ってはおけませんよ。国にとっての重大案件ですからね、ケイシーだって理解してくれるでしょう」
「だな。俺の部下に事情を記した書簡を持たせて飛ばさせた。今日中にケイシーの元へ届くだろう」
返したのはキースと魔王だった。冒険者ギルドが使う馬車の二つの内の一つへ、ユーリ、エン、マキア、私、そしてキースとアルクナイトが乗り込んでいた。
人選の理由としては、ユーリを説得したのがエン、マキア、私だったから。そして防御障壁を張れる二人が護衛役として同乗した。女装姿に戻ったリリアナとアスリーにはもう一台の方へ移ってもらった。
ところで、さっき聞き捨てならないワードを耳が拾ったような。
「飛ばさせた……って、あなたの配下の魔物を? いつの間に呼んだの?」
「呼んだと言うか、ずっと俺達の頭上を飛んで付いてきていたんだ。従順でお利口さんなヤツだからな。おまえ気づいていなかったのか? うっかりさんめ」
「へっ? 魔物がずっと上に居たの!? 俺も全く気づかなかったですよ!?」
マキアが動く馬車の中で今更キョロキョロ辺りを見回した。
「まったく人間というものは、前後左右には気を配るくせに頭上の注意を怠るからな」
それ前にも指摘されたな。マキアが反論した。
「魔王様だって人間じゃないですか。それも昔は賢者様って呼ばれていたんでしょ?」
「え!? あなた散々人間のこと馬鹿にしておいて自分も人間だったの!?」
「賢者!? この破廉恥魔王が賢者!?」
「うるさいわ白、文句が有るなら表に出ろ! 小娘は俺に膝枕をしろ!」
どさくさに紛れてセクハラしてんじゃないよ。
出発時刻を遅らせて、ルービック師団長は馬車へ部下のエドガー連隊長、そして冒険者ギルドからはルパートとエリアスを呼んだ。信頼できる彼らにユーリからもたらされた情報を話し、今後の方針について話し合っているのだろう。
だろう、と推測なのは今の私は外に居て馬車内の会話が聞こえていないから。定員オーバーになるので馬車を降りていた。既に事情を知っているエン、マキア、マシューと共に部外者が近寄らないよう見張り役だ。
「いったい師団長は何をしておいでなのだ! 予定の時間をとうに過ぎているではないか!」
人払いをしたというのにさっそく近付いてきた無頼者が居た。イラつきを隠さず噛み付いてきたのは、大問題を起こしている張本人・グラハム連隊長だった。出発が遅れているのはおまえのせいだ馬鹿、腹のゼイ肉を力いっぱい掴むぞ? 握力48有る私は心の中で毒づいた。
グラハムの背後には四人の兵士が従っている。彼らが実行役だろうか? ユーリの水に毒を仕込んだ者がこの中に居るかもしれないのだ。エンが鋭い目つきで彼らを睨んでいた。
「すみませ~ん連隊長。もう少しで終わりますので~」
マシューが全く心のこもっていない謝罪をした。グラハムは私達の顔を見てからフンッと鼻を鳴らした。
「彼らは冒険者ギルドの輩だろう? 師団長は何故彼らをお側に置くんだ?」
「そりゃあ大活躍しましたから~。師団長暗殺を止めて、公民館への突入路を切り開き、尚且つアンダー・ドラゴン幹部二名の捕縛に成功した皆さんです。師団長としては充分に功を労いたいとお考えですよ~」
「はん。だが両名共に、情報を吐く前に服毒自殺を図ったそうじゃないか」
どの口がそれを言うのか。私の横のエンが必死で殺意を抑えているのを感じた。
「……ですね、それは残念でした。二名とも先ほど死亡を確認しました」
マシューの言葉を聞いて、グラハムは下卑た顔に安堵の色を浮かべた気がした。いや気のせいじゃないよね。コイツは口封じができたと絶対喜んでいる。
でも残念でした。ユーリは思いっきり無事です。彼が生存していることは聖騎士とギルドメンバーしか知らない。
「三十分後くらいには出発できるかと思いますので、どうぞご自分の馬車へお戻り下さい」
「ふん」
最後までムカつく態度でグラハムと彼の部下は去っていった。そのお尻を蹴り上げたい。
「ロックウィーナさ、今グラハムさんの尻を蹴っ飛ばしたいとか思ってない?」
マシューに心を読まれた。
「いえ全然?」
私はすっ呆けた。
☆☆☆
予定から大幅に遅れて、第七師団と冒険者ギルドの一行は帰路についた。兵団はアンダー・ドラゴンの本拠地で見つけた隠し財宝と共に王都へ、私達はフィースノーのギルド支部へ戻るのだ。
ただし王都もフィースノーの街も国の中部地方に在るので、途中まで二~三日間はまた一緒に旅をすることになる。
ユーリの身柄は相談の末に冒険者ギルドの預りとなった。兵団内には何処にスパイが潜んでいるか判らない。再度の暗殺を防ぐ為にユーリは素性を隠し、ギルド職員に扮して私達と一緒に行動することになった。
彼は兵団の連絡役と会う時は常に覆面姿だったらしい。なので素顔になって髪を結ぶ位置を変えた。更にマキアから明るい色調の服を借りて、黒染めの衣から着替えたユーリはだいぶ雰囲気が変わった。きっとアンダー・ドラゴン首領の側近にはもう見えないだろう。拘束はもちろん解かれている。
「すみません、俺達兄弟の事情でギルドを巻き込むことになってしまって」
エンが皆に頭を下げた。
「気にしないで下さい。アンドラと買収された貴族や議員を放ってはおけませんよ。国にとっての重大案件ですからね、ケイシーだって理解してくれるでしょう」
「だな。俺の部下に事情を記した書簡を持たせて飛ばさせた。今日中にケイシーの元へ届くだろう」
返したのはキースと魔王だった。冒険者ギルドが使う馬車の二つの内の一つへ、ユーリ、エン、マキア、私、そしてキースとアルクナイトが乗り込んでいた。
人選の理由としては、ユーリを説得したのがエン、マキア、私だったから。そして防御障壁を張れる二人が護衛役として同乗した。女装姿に戻ったリリアナとアスリーにはもう一台の方へ移ってもらった。
ところで、さっき聞き捨てならないワードを耳が拾ったような。
「飛ばさせた……って、あなたの配下の魔物を? いつの間に呼んだの?」
「呼んだと言うか、ずっと俺達の頭上を飛んで付いてきていたんだ。従順でお利口さんなヤツだからな。おまえ気づいていなかったのか? うっかりさんめ」
「へっ? 魔物がずっと上に居たの!? 俺も全く気づかなかったですよ!?」
マキアが動く馬車の中で今更キョロキョロ辺りを見回した。
「まったく人間というものは、前後左右には気を配るくせに頭上の注意を怠るからな」
それ前にも指摘されたな。マキアが反論した。
「魔王様だって人間じゃないですか。それも昔は賢者様って呼ばれていたんでしょ?」
「え!? あなた散々人間のこと馬鹿にしておいて自分も人間だったの!?」
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