ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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エリアスの背中(4)

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「私も彼らと共に残ろう。アンドラの陽動部隊は何処に現れるか判らない。ここも決して安全じゃない」

 エリアスが申し出た。アルクナイトが幼馴染みの肩を軽く叩いて賛成した。

「そうだな。俺の次に強いエリーが残るなら小娘も忍者Ⅱも安全だろう。頼んだぞ」
「任せろ」
「小娘はナイーブだからな? 悪人解体ショーで怖がらせて泣かせるなよ?」
「さっさと行け馬鹿」

 魔王と勇者の平和なやり取り見ていると、横からにゅっとエンが顔を出した。ビビった。彼は覆面を付け直していたが、露出している部分の肌がまだ赤かった。

「ロックウィーナ、後で二人きりで話がした……」
「はいはいアナタも行きますよー。エンお兄様ー」

 棒読みのリリアナがエンの腕を組む形で引っ張った。

「待て。彼女と大切な約束を取り付け……」
「はいはーい。素直に一緒に来て下さーい。暴れないでねー? 変なトコに触れると銃が暴発しますよー?」
「ち……」

 聖騎士と冒険者ギルドメンバーは財宝馬車の在る中央エリアへ走り去った。その後ろ姿を見送ったユーリが苦笑した。

「いちいち賑やかな連中だな」

 そして私へ軽い謝罪をした。

「悪い。俺のせいで貧乏クジを引かせたようだ。戦いたかったんだろう? おまえは強いものな」
「……いや、弱いんだよ。だからいっつも先陣には入れてもらえない」
「自分を卑下するな。おまえに倒された俺の立場が無くなる」

 私は乾いた笑いで返した。

「あなたに勝てたのは奇跡だって、みんなに言われたよ……」
「ああ……?」

 ユーリは共に残ってくれたエリアスを睨んだ。

「ギルドの男どもはコイツの実力を認めてやっていないのか?」

 エリアスは躊躇ためらいがちに否定した。

「そんなことは無い。ロックウィーナは充分に強いと認識している」
「じゃあ何でコイツはこんなに自分に自信が持てないんだ? 卑屈のヒッちゃんになっているんだ?」

 ヒッちゃんって何だ。

「ヒッちゃんにさせてしまったのは悪いと思っている」

 エリアスも乗っちゃ駄目。二十代後半の男性の会話じゃない。

「だが……」
「だが?」
「惚れた女を命懸けの戦場へ出したくない。男のエゴだと批判されたとしても」
「……………………」

 素直な自分の気持ちをエリアスから吐露されて、ユーリは黙った。私はというとこんな時なのに、物憂げなエリアスの面持ちに見とれていた。だって色っぽかったんだもん。

「ロックウィーナ」
「は、はいぃっ!?」

 エロい妄想中だった私はエリアスに声をかけられて動揺した。

「さっき私に何を言おうとしたんだ?」
「さっき?」
「森で会う前から……どうとか」
「森……ああ」

 エリアスに強烈な既視感を抱いたんだった。ずっと前から彼を知っているような。それを確かめようと質問したけれど中断されたんだよね。

「あのですね、もしかしたらエリアスさんと私は前から……」

 私はまたもや最後まで言えなかった。肌がピキっと引きる感覚に襲われたから。
 殺気だ。
 鞭を握って気配を窺う。エリアスとユーリも抜刀して構えている。
 嫌な予感が的中か。アンダー・ドラゴンの陽動部隊、こちらにも現れたようだ。

(敵は何人だ……?)

 今の時刻は19時半頃だろうか。月光と焚き火のほのかなあかりだけでは広範囲を探れない。
 右斜め十メートル先がポンッと明るく光ったと思ったら、二連のファイヤーボールがこちらへ向かって飛んできた。敵には魔術師が居るのか!
 てい。私は軌道かられるように横っ飛びした。物理攻撃ならガードが可能だけれど、魔法攻撃に関してはけるしかない。
 とか思ったけどエリアスが大剣で火球をぎ払った。その剣には魔封じの印が彫られているんでしたね。

「ぎゃっ」

 男の短い悲鳴と誰かが倒れた音がした。ファイヤーボールの発射位置を読んだユーリが、クナイを投げ刺して敵の魔術師を倒したのだ。この暗い中でよく投擲とうてき武器を命中させられるものだ。

「畜生が……」

 暗闇から男達がゾロゾロと武器を手に現れた。遠距離攻撃が効かなかったので接近戦に切り替えた模様。夕飯の為に起こした焚き火の炎が招かれざる客の姿を照らし出した。
 総勢二十五名ほどだが、モヒカン率が異様に高い。素肌に革製のジャケット、棘の付いた肩当てを装着し、あまり精巧ではないタトゥーを入れている。この終末臭はアンダー・ドラゴン構成員に間違いない。の組織には服装規定でも有るのだろうか?

「ヒヒッ、殺すには惜しいイイ女が居る…………んん?」
「へ? あ、アンタはユーリさんかい!?」
「死んだって聞いたけど、生きてたのか!?」

 近付くことで私達側の細やかな容貌が敵へ伝わった。ユーリを見たアンダー・ドラゴン構成員達は皆一様に驚愕の表情を浮かべた。
 ユーリはマキアから借りた服でイメージチェンジを図ったものの、東国の特殊武器クナイを構える姿は首領の側近そのものであった。

「おいユーリさん、アンタは何でそっちに居るんだ……?」
「俺達を……組織を裏切ったのか!?」

 かつての仲間から問われてユーリは舌打ちをした。
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