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エリアスの背中(6)
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「……大したもんだよエリアスさん。ソイツに対する愛情も、俺という第三者が居る前で歯の浮く台詞を言えちゃう度胸も」
涙で視界が不鮮明だがユーリはきっと苦笑している。首領の隣に居た時は丁寧口調だったからクールな雰囲気だったが、実際はけっこうくだけた態度の青年みたいだ。
「ま、エリアスさんが手を下すまでもない。ソイツの分の汚れ仕事なら俺がやってやるよ」
迂闊な台詞を忍者Ⅱが吐いたので、勇者は再び身に闘気を纏った。
「……それは私に対する宣戦布告だろうか?」
「うお、殺気放つなよ。違う違う、俺は別にソイツのこと狙ってないから!」
「ではどういう意味だ?」
「俺もアンダー・ドラゴンに居たんだ。そこで死んでる奴らと同じ穴のムジナさ。奴らが断罪されて、俺だけ許されていい理由が無い」
「……………………」
エリアスは少し考えてから、改めてユーリへ質問した。
「汚れ仕事を引き受けて、罰の代わりとしたいのか?」
「そういう感じかな。ソイツは弟にとって大切な女になったようだし、しばらくは護ってやるよ」
「そしていずれ、おまえもロックウィーナに恋をすると」
「しないから。俺の好みは精悍な顔立ちと、ほのかに立ち昇る色香。この二点は譲れない」
「ロックウィーナには充分な色気が有るだろうが」
「いや、もうちょい胸が欲しいかな。尻のデカさはちょうどいい。安産型だ」
「貴様! 何処を見ている!!」
ユーリのセクハラ発言で涙が引っ込んだ。仕事と雇い主に忠実な生真面目な戦士に見えたのに、アンタも根っこはアルクナイトと同類だったんかい。
でもだからこそ、モヒカン達と「同じ穴のムジナ」だと言われてもピンと来ない。あっけらかんと下ネタを口にして、その一方で知り合ったばかりの私へ親切に接する快活な青年。アンダー・ドラゴンに属していたことは確かだが、胸糞の悪くなる犯罪に本当に手を染めていたのだろうか?
下衆な笑みを浮かべていたモヒカン構成員や連絡係、グラハムとは何て言うか……、ユーリは匂いが違うんだよなぁ。
「ねぇユアン。燃やして破棄されたけど、あなたが首領と交わした契約書には何て書かれていたの?」
私は周囲の気配を探って、私達以外の生存者が近くに居ないことを確認してからユーリへ尋ねた。
ユーリと呼んでもいい気がしたが、グラハムの前でポロッと出ないようにユアン呼びに慣れておこう。
「契約書か? ボス……、首領の警護人となる旨が書かれていた。それが?」
「具体的な仕事内容は? アンドラに居た時は何をしていたの?」
「ギルドの連中はアンダー・ドラゴンをアンドラって略すよな……。まぁそこはいい。依頼内容が警護なんだから、首領の傍に引っ付いていたよ。他には……首領の生存率を上げる為に構成員を鍛えて戦力を底上げしたり、邪魔になる師団長の暗殺なんかもな……。これについては防がれてしまったが」
「徹底して首領絡みなんだね」
「それがアンダー・ドラゴンでの俺の役割だったからな」
思った通りだ。
「じゃあさ、子供や若い女性を誘拐したり、強盗目的で民家に押し入って家主を殺したり、そういったことはやらなかったのね?」
「………………」
ユーリは腕組みをして息を吐いた。
「女、おまえの知りたいことはそれか。確かに俺は組織の収入源となっていた犯罪行為には加担していない。だがな……」
ユーリの表情が険しく引き締まった。
「他の構成員達が何をやっているか知っていて、それを放置することも罪なんだよ」
それはそうだ。ユーリも重い罪を犯してしまっている。でも私は納得できないのだ。
「そもそもさ、どういう経緯でユアンは首領に雇われたの?」
「何でおまえはそんなことを気にする?」
「だってあなたは、アンドラのカラーと合わないんだもん。忍びの組織が解体されてフリーになったんだから、依頼主は自分で選べる訳でしょう? 首領に肩入れする理由は何? 顔だけが選択基準じゃないんでしょ?」
「………………」
「?」
「……彼には以前、世話になったんだ」
それだけ言うとユーリは目線を下へ向けて黙ってしまった。これ以上は追及すべきではないのだろうか?
だけどユーリは自暴自棄になっている気がする。現に私の代わりに手を汚すとか馬鹿なことを言い出した。
「首領とはどれくらいの付き合いなんだ?」
それまで静かに聞いていたエリアスが会話に参加した。当たり障りのない質問だったのか、ユーリはこれには答えた。
「付き合い……はそれなりに長いな。五年以上だ。この国に渡ってきてすぐに、俺は名を上げる為に傭兵部隊へ入ったんだ。そこで先輩として面倒を見てくれたのがあの人だ」
「傭兵か……。アスリー殿が言っていたな。昔のレスター・アークは志の高い、澄んだ目をした若者だったと」
あっ、言ってた! 私も聞いた!!
そうか。ユーリはきっと傭兵時代に、まだ人格者だったレスターと交流を重ねて親しい間柄になったんだ。でもその後に、何らかの事情でレスターは犯罪者に身を墜とすことになった。彼は裏切られたって言っていたような……?
涙で視界が不鮮明だがユーリはきっと苦笑している。首領の隣に居た時は丁寧口調だったからクールな雰囲気だったが、実際はけっこうくだけた態度の青年みたいだ。
「ま、エリアスさんが手を下すまでもない。ソイツの分の汚れ仕事なら俺がやってやるよ」
迂闊な台詞を忍者Ⅱが吐いたので、勇者は再び身に闘気を纏った。
「……それは私に対する宣戦布告だろうか?」
「うお、殺気放つなよ。違う違う、俺は別にソイツのこと狙ってないから!」
「ではどういう意味だ?」
「俺もアンダー・ドラゴンに居たんだ。そこで死んでる奴らと同じ穴のムジナさ。奴らが断罪されて、俺だけ許されていい理由が無い」
「……………………」
エリアスは少し考えてから、改めてユーリへ質問した。
「汚れ仕事を引き受けて、罰の代わりとしたいのか?」
「そういう感じかな。ソイツは弟にとって大切な女になったようだし、しばらくは護ってやるよ」
「そしていずれ、おまえもロックウィーナに恋をすると」
「しないから。俺の好みは精悍な顔立ちと、ほのかに立ち昇る色香。この二点は譲れない」
「ロックウィーナには充分な色気が有るだろうが」
「いや、もうちょい胸が欲しいかな。尻のデカさはちょうどいい。安産型だ」
「貴様! 何処を見ている!!」
ユーリのセクハラ発言で涙が引っ込んだ。仕事と雇い主に忠実な生真面目な戦士に見えたのに、アンタも根っこはアルクナイトと同類だったんかい。
でもだからこそ、モヒカン達と「同じ穴のムジナ」だと言われてもピンと来ない。あっけらかんと下ネタを口にして、その一方で知り合ったばかりの私へ親切に接する快活な青年。アンダー・ドラゴンに属していたことは確かだが、胸糞の悪くなる犯罪に本当に手を染めていたのだろうか?
下衆な笑みを浮かべていたモヒカン構成員や連絡係、グラハムとは何て言うか……、ユーリは匂いが違うんだよなぁ。
「ねぇユアン。燃やして破棄されたけど、あなたが首領と交わした契約書には何て書かれていたの?」
私は周囲の気配を探って、私達以外の生存者が近くに居ないことを確認してからユーリへ尋ねた。
ユーリと呼んでもいい気がしたが、グラハムの前でポロッと出ないようにユアン呼びに慣れておこう。
「契約書か? ボス……、首領の警護人となる旨が書かれていた。それが?」
「具体的な仕事内容は? アンドラに居た時は何をしていたの?」
「ギルドの連中はアンダー・ドラゴンをアンドラって略すよな……。まぁそこはいい。依頼内容が警護なんだから、首領の傍に引っ付いていたよ。他には……首領の生存率を上げる為に構成員を鍛えて戦力を底上げしたり、邪魔になる師団長の暗殺なんかもな……。これについては防がれてしまったが」
「徹底して首領絡みなんだね」
「それがアンダー・ドラゴンでの俺の役割だったからな」
思った通りだ。
「じゃあさ、子供や若い女性を誘拐したり、強盗目的で民家に押し入って家主を殺したり、そういったことはやらなかったのね?」
「………………」
ユーリは腕組みをして息を吐いた。
「女、おまえの知りたいことはそれか。確かに俺は組織の収入源となっていた犯罪行為には加担していない。だがな……」
ユーリの表情が険しく引き締まった。
「他の構成員達が何をやっているか知っていて、それを放置することも罪なんだよ」
それはそうだ。ユーリも重い罪を犯してしまっている。でも私は納得できないのだ。
「そもそもさ、どういう経緯でユアンは首領に雇われたの?」
「何でおまえはそんなことを気にする?」
「だってあなたは、アンドラのカラーと合わないんだもん。忍びの組織が解体されてフリーになったんだから、依頼主は自分で選べる訳でしょう? 首領に肩入れする理由は何? 顔だけが選択基準じゃないんでしょ?」
「………………」
「?」
「……彼には以前、世話になったんだ」
それだけ言うとユーリは目線を下へ向けて黙ってしまった。これ以上は追及すべきではないのだろうか?
だけどユーリは自暴自棄になっている気がする。現に私の代わりに手を汚すとか馬鹿なことを言い出した。
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