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残酷な事実(6)
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「俺達がただの駒であるのなら、今もあの十日間をひたすらに繰り返していただろう。だが俺達はループを破壊して先へ進むことを、一人一人それぞれの意志で決めた」
「それはそうだ。定められた日々を、押し付けられた役割を演じてただ過ごすだけなんてゾッとする。私達は人形劇の人形ではないんだ」
「その通りだエリー」
賛同の意を表したエリアスへアルクナイトは強く頷いた。嬉しそうに。
「勇者の家系に生まれたからといって、おまえが勇者として生きる必要は無いんだ」
「…………アル?」
「ただの例え話だよ。だが皆も解ってもらえたと思う。今の俺達は決して駒でも人形でもない。人格を持った生命体なんだ」
まだ混乱している。状況を正確に把握できていない。
それでもアルクナイトが力強く宣言してくれたから、少しだけみんなの瞳に力が戻ってきた。そのタイミングで、
「くくくくく……」
全く楽しそうじゃない笑い声がキースの口から漏れた。
「……人格を持った生命体? そんなの当たり前だろう、僕達は生きた人間なんだからさ。勝手に駒にするわ、力足りず人喰い霧を発生させるわ、神というものはずいぶん身勝手で脆弱な存在なんだな。滅びを待つまでもない、先に僕がこのクソッタレな世界を滅茶苦茶にしてやるよ」
邪悪な笑みで物騒な意見を吐いたキース。これまで丁寧口調で我慢していたものの、ここに来てついにブチ切れてしまったようだ。
初めて彼の本性に触れた聖騎士の面々はドン引きしていたが、魔王は微笑みをキースへ返した。
「その意気だ白。一人一人が強い想いを抱けばきっとこの世界は存続できる。おまえの命の輝きは世界を照らす光となろう」
「ハハッ……。こんな屈折した想いが光になるとでも?」
「それがおまえだろう? それでいいんだ。初期段階の八方美人だったおまえよりも、今の方がずっと生き生きとしている」
「はい? 初期段階?」
「白、神が物語でおまえに望んだ役どころはな、心に傷を負っているからこそ皆に優しくできるお兄ちゃんだ。俺は時間のループで十日間を十七周したが、観察した限り十五周目まではそのような人物像だった」
んん? 十五周目までのキースと今のキースとでは相違点が有るの? 私は疑問に思い、キース当人も首を捻っていた。
「どういう意味だ? 十五周目までと、それ以降の僕は違っているのか?」
「ああ。十六周目からのおまえは隙有らば毒を吐くようになり、ループ破壊に成功したこの十七周目では更にしたたかとなって、見守る立場を捨ててロックウィーナに求婚までしやがった」
「えええ!? 闇落ちキースさんはごく最近に誕生したのか!? ずっと優しいままでいてくれたら良かったのに!」
迂闊なツッコミをしたルパートをキースは睨み、再度アルクナイトに問うた。
「何故……僕は変わったんだ?」
「自我に芽生えたからだよ。神が設定したキャラクタープロフィールではない、おまえ自身の人格が新たに形成されたんだ」
「僕自身の……人格が」
アルクナイトは会議室の全員を見回した。
「おまえ達もだ。十日間を同じように過ごしてきたようで、少しずつ心に変化が訪れていたんだ。だからロックウィーナ、おまえも俺と同じく時間のループに気づくことになった。ただの駒だったらスルーしていた箇所に疑問を抱いた」
そうか、駒だったら物語の筋書きを変えようなんてしないよね。マキアとエンを助ける為にエリアスとの結婚エンディングを拒絶した私。
あの瞬間、私は創造主から自立することを選んだんだ。
岩見鈴音はさぞかし焦っただろうな。アルクナイトに続いて私も、自作した小説のキャラクターが勝手に動き出したんだから。
「魔王様、自分じゃよく判らんのだけど俺も変わったのかな?」
何気なく聞いたルパートへ魔王は氷の眼差しを向けた。
「変わったともチャラ男。初期のおまえはホントーに嫌なヤツだった。ロックウィーナへ接する態度は酷いの一言だった。だからおまえが彼女に告白したと知った時、俺は怒りを露わにしただろう?」
そういえばそうだったな。ルパートが私へプロポーズした翌朝、エリアスはライバルとして彼を認めたが、アルクナイトはずっとプリプリ怒っていた。
「俺ってそんなに酷い男だったのか……?」
「猛省しろ。まぁ今の時間軸のおまえは少しはマシになっている。だがあくまでもマシ程度だからな、調子に乗るなよ?」
落ち込むルパートの横からルービックが身を乗り出した。
「結局、世界の崩壊を止める具体的な手立ては有るのだろうか?」
「俺にとっても未曾有の出来事だ、断言はできない。だが解決策は……育てることだと俺は思う」
「育てるとはいったい何を?」
アルクナイトは静かな語調に戻った。
「俺達自身の心を、だ。一人一人が個を持って生きていると強く自覚しろ。ここは岩見鈴音が想いを込めて執筆した小説の舞台、言わば精神世界なんだ」
「精神世界だからこそ、こちらも心で対抗すると?」
「そうだ。今まで祈りなんて気休めだと思っていたか? だが信じろ。ここでは祈りが最も大きな力となるんだよ。魔法剣士であるおまえ達なら感覚で解っているはずだ。魔法を使う時はできると信じて力を具現化しているだろう? それと一緒だ」
「それはそうだ。定められた日々を、押し付けられた役割を演じてただ過ごすだけなんてゾッとする。私達は人形劇の人形ではないんだ」
「その通りだエリー」
賛同の意を表したエリアスへアルクナイトは強く頷いた。嬉しそうに。
「勇者の家系に生まれたからといって、おまえが勇者として生きる必要は無いんだ」
「…………アル?」
「ただの例え話だよ。だが皆も解ってもらえたと思う。今の俺達は決して駒でも人形でもない。人格を持った生命体なんだ」
まだ混乱している。状況を正確に把握できていない。
それでもアルクナイトが力強く宣言してくれたから、少しだけみんなの瞳に力が戻ってきた。そのタイミングで、
「くくくくく……」
全く楽しそうじゃない笑い声がキースの口から漏れた。
「……人格を持った生命体? そんなの当たり前だろう、僕達は生きた人間なんだからさ。勝手に駒にするわ、力足りず人喰い霧を発生させるわ、神というものはずいぶん身勝手で脆弱な存在なんだな。滅びを待つまでもない、先に僕がこのクソッタレな世界を滅茶苦茶にしてやるよ」
邪悪な笑みで物騒な意見を吐いたキース。これまで丁寧口調で我慢していたものの、ここに来てついにブチ切れてしまったようだ。
初めて彼の本性に触れた聖騎士の面々はドン引きしていたが、魔王は微笑みをキースへ返した。
「その意気だ白。一人一人が強い想いを抱けばきっとこの世界は存続できる。おまえの命の輝きは世界を照らす光となろう」
「ハハッ……。こんな屈折した想いが光になるとでも?」
「それがおまえだろう? それでいいんだ。初期段階の八方美人だったおまえよりも、今の方がずっと生き生きとしている」
「はい? 初期段階?」
「白、神が物語でおまえに望んだ役どころはな、心に傷を負っているからこそ皆に優しくできるお兄ちゃんだ。俺は時間のループで十日間を十七周したが、観察した限り十五周目まではそのような人物像だった」
んん? 十五周目までのキースと今のキースとでは相違点が有るの? 私は疑問に思い、キース当人も首を捻っていた。
「どういう意味だ? 十五周目までと、それ以降の僕は違っているのか?」
「ああ。十六周目からのおまえは隙有らば毒を吐くようになり、ループ破壊に成功したこの十七周目では更にしたたかとなって、見守る立場を捨ててロックウィーナに求婚までしやがった」
「えええ!? 闇落ちキースさんはごく最近に誕生したのか!? ずっと優しいままでいてくれたら良かったのに!」
迂闊なツッコミをしたルパートをキースは睨み、再度アルクナイトに問うた。
「何故……僕は変わったんだ?」
「自我に芽生えたからだよ。神が設定したキャラクタープロフィールではない、おまえ自身の人格が新たに形成されたんだ」
「僕自身の……人格が」
アルクナイトは会議室の全員を見回した。
「おまえ達もだ。十日間を同じように過ごしてきたようで、少しずつ心に変化が訪れていたんだ。だからロックウィーナ、おまえも俺と同じく時間のループに気づくことになった。ただの駒だったらスルーしていた箇所に疑問を抱いた」
そうか、駒だったら物語の筋書きを変えようなんてしないよね。マキアとエンを助ける為にエリアスとの結婚エンディングを拒絶した私。
あの瞬間、私は創造主から自立することを選んだんだ。
岩見鈴音はさぞかし焦っただろうな。アルクナイトに続いて私も、自作した小説のキャラクターが勝手に動き出したんだから。
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何気なく聞いたルパートへ魔王は氷の眼差しを向けた。
「変わったともチャラ男。初期のおまえはホントーに嫌なヤツだった。ロックウィーナへ接する態度は酷いの一言だった。だからおまえが彼女に告白したと知った時、俺は怒りを露わにしただろう?」
そういえばそうだったな。ルパートが私へプロポーズした翌朝、エリアスはライバルとして彼を認めたが、アルクナイトはずっとプリプリ怒っていた。
「俺ってそんなに酷い男だったのか……?」
「猛省しろ。まぁ今の時間軸のおまえは少しはマシになっている。だがあくまでもマシ程度だからな、調子に乗るなよ?」
落ち込むルパートの横からルービックが身を乗り出した。
「結局、世界の崩壊を止める具体的な手立ては有るのだろうか?」
「俺にとっても未曾有の出来事だ、断言はできない。だが解決策は……育てることだと俺は思う」
「育てるとはいったい何を?」
アルクナイトは静かな語調に戻った。
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「そうだ。今まで祈りなんて気休めだと思っていたか? だが信じろ。ここでは祈りが最も大きな力となるんだよ。魔法剣士であるおまえ達なら感覚で解っているはずだ。魔法を使う時はできると信じて力を具現化しているだろう? それと一緒だ」
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