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残酷な事実(7)
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言われてもルービックは難しい顔をしたままだった。
「信じたい。だが……私達がそう思うだけで解決するとはとても思えない。世界は大きく、私達はあまりにも矮小だ」
確かに、会議室に集った十数名で世界の綻びを止めるのは無謀な気がした。
「俺達だけじゃない。ラグゼリア王国には大勢の国民が居るだろうが」
アルクナイトの言葉にマシューが噛み付いた。
「そりゃそうですけど魔王殿、国民にこの世界が小説の舞台だったなんて説明できませんよ? 心で対抗するどころか精神崩壊を引き起こされます。平常心を保つ訓練を受けている俺達でさえ、事実を知った今このザマなんですからね」
「国民に真実を伝える必要は無い」
「え、じゃあどうしたら……」
「アンドラや汚職議員といった国の憂い事を早期解決せよ。国民を安心させ、彼らに今後も国が安泰であると……、ずっと存続するものだと信じさせるんだ。その信じる心が世界を安定させるだろう」
「え……あ、もしかして、国の内部が乱れているから人喰い霧が発生しちゃったんですか!?」
マシューの意見に私達はハッとした。
「俺はそう考えている。突拍子も無い話だと思われるかもしれないが」
「いや……俺は魔王様の考えを支持します」
メンバーの中では年若いマキアが、ハッキリと自分の考えを口にした。
「ループ中の俺達はずっとラグゼリア王国を舞台に、芝居をしていたような感じだったのでは? でも今は監督である神様がどっかに行っちゃって、おまけに台本も無いときた。舞台の上は大混乱ですよ。このままじゃ演目を続けられません。世界もきっとこんな感じなんです」
芝居好きの彼らしい例えだった。
「ああ……なるほど、そう考えると理解しやすいな。観客が怒って席を立つ前に手を打たないと」
ユーリが後押しして、他の皆も納得した。
「世界の治安を回復させることが、舞台を継続させる手段となるのか」
「てことは観客は国民だな」
「現在しっちゃかめっちゃかな舞台に、観客が大ブーイングをしている最中か」
「はい、きっとそうなんです! アドリブやアクロバティックな動作を駆使してピンチを切り抜けましょう。あの天才役者レンフォードみたいに!!」
世界を何とかする……となると大事過ぎて足が竦むが、監督不在でバラバラな舞台を私達で立て直そう……なら何とかなりそうだ。考え方一つでずいぶんと心が軽くなった。
アルクナイトがまとめた。
「聖騎士達よ任務に励め。今後は事情を知り、国の中枢で働くおまえ達騎士団が世界の舵を握ることになる。もちろん俺も部下と共に動くがな」
ギルドマスターが挙手した。
「冒険者ギルドも秩序回復に積極的に動きます。汚職議員については手出しできませんので、当面は隠れているアンドラ構成員の摘発に焦点を絞ります。いいよな、みんな?」
「やるさ。何もしないで大人しく霧に喰われてたまるか」
「僕も異論は無いよ」
「あの魔王様……、今日話したことをアスリーにも伝えていいですか?」
「いいぞ女装男。あの執事のジジイは役に立つからな」
ギルドメンバーはマスターに賛同した。かつてアンダー・ドラゴンの一員だったユーリも頷いていた。
「私達も、しばらくは騎士団と別行動になるがすぐに動く。ただし冒険者としてな」
聖騎士達も唇を結んで決意を表した。
「国が安定すればきっと霧が晴れますよね! ……あ、でも、霧の向こうにはもう何も無いんでしたっけ……」
自分の発言で暗くなりかけたマキアを、相棒のエンが慰めた。
「邪魔な霧さえ排除できれば世界が力を取り戻して、喰われた部分を少しずつ修復とか復活させるんじゃないか? エドガー連隊長やマシュー中隊長を短期間にポンと生み出すくらいなんだから」
「そっか……世界も頑張っているんだよな!」
「ポンてアンタら……」
された表現にマシューは口を尖らせたが、すぐに柔らかく笑った。
「ま、生まれたばかりでまた消されるのは面白くないし? 世界の均衡を守る為に人知れず働きますか! ヤベッ、俺ってば世界を救う勇者じゃん!」
彼の軽口は久し振りに室内の空気を明るくしてくれた。エドガーは複雑そうだったが。
「まだ自分が生まれたばかりというのが信じられない。どういった経緯で私達は世界に生み出されたのだろうか」
アルクナイトが推測した。
「おそらくヒゲとニャンコは明るい中年から派生したんだ。師団長には側近となる優れた騎士が必要だと世界が判断したのだろう。そして皆の記憶が上書きされた」
「え、私とマシューは師団長から派生したのか!?」
「じゃあ師団長、俺達のパパですか!?」
「ば、馬鹿なことを言うな!」
「パパ、俺パパの愛馬に乗ってみたいです」
「駄目だ、メリンダには誰も乗せない!!」
一気に騒々しくなった。
「ま、世界には綿密なキャラメイクをする時間までは無かったはずだから、性格その他はおまえ達自身が決定した個性だろうがな」
「そうか……。心の大切な部分は自分のものか」
エドガーの表情が漸く少し緩んだ。ヒゲと言う酷い渾名も受け入れることにしたようだ。
国内の秩序を正して国民を安心させる。そして私達は駒ではなく、個々の自立した生命体なのだと自覚する。それが世界崩壊を止める為に、今の私達にできること。
それで本当に人喰い霧を消せるのだろうか……?
生まれた不安を頭を振ってすぐに打ち消した。できると信じるんだ。強く願え。
私達は時間のループ破壊というとんでもないことをやり遂げたんだ。またやれるよ、絶対に。
みんなと一緒なら。きっと今度だって。
「信じたい。だが……私達がそう思うだけで解決するとはとても思えない。世界は大きく、私達はあまりにも矮小だ」
確かに、会議室に集った十数名で世界の綻びを止めるのは無謀な気がした。
「俺達だけじゃない。ラグゼリア王国には大勢の国民が居るだろうが」
アルクナイトの言葉にマシューが噛み付いた。
「そりゃそうですけど魔王殿、国民にこの世界が小説の舞台だったなんて説明できませんよ? 心で対抗するどころか精神崩壊を引き起こされます。平常心を保つ訓練を受けている俺達でさえ、事実を知った今このザマなんですからね」
「国民に真実を伝える必要は無い」
「え、じゃあどうしたら……」
「アンドラや汚職議員といった国の憂い事を早期解決せよ。国民を安心させ、彼らに今後も国が安泰であると……、ずっと存続するものだと信じさせるんだ。その信じる心が世界を安定させるだろう」
「え……あ、もしかして、国の内部が乱れているから人喰い霧が発生しちゃったんですか!?」
マシューの意見に私達はハッとした。
「俺はそう考えている。突拍子も無い話だと思われるかもしれないが」
「いや……俺は魔王様の考えを支持します」
メンバーの中では年若いマキアが、ハッキリと自分の考えを口にした。
「ループ中の俺達はずっとラグゼリア王国を舞台に、芝居をしていたような感じだったのでは? でも今は監督である神様がどっかに行っちゃって、おまけに台本も無いときた。舞台の上は大混乱ですよ。このままじゃ演目を続けられません。世界もきっとこんな感じなんです」
芝居好きの彼らしい例えだった。
「ああ……なるほど、そう考えると理解しやすいな。観客が怒って席を立つ前に手を打たないと」
ユーリが後押しして、他の皆も納得した。
「世界の治安を回復させることが、舞台を継続させる手段となるのか」
「てことは観客は国民だな」
「現在しっちゃかめっちゃかな舞台に、観客が大ブーイングをしている最中か」
「はい、きっとそうなんです! アドリブやアクロバティックな動作を駆使してピンチを切り抜けましょう。あの天才役者レンフォードみたいに!!」
世界を何とかする……となると大事過ぎて足が竦むが、監督不在でバラバラな舞台を私達で立て直そう……なら何とかなりそうだ。考え方一つでずいぶんと心が軽くなった。
アルクナイトがまとめた。
「聖騎士達よ任務に励め。今後は事情を知り、国の中枢で働くおまえ達騎士団が世界の舵を握ることになる。もちろん俺も部下と共に動くがな」
ギルドマスターが挙手した。
「冒険者ギルドも秩序回復に積極的に動きます。汚職議員については手出しできませんので、当面は隠れているアンドラ構成員の摘発に焦点を絞ります。いいよな、みんな?」
「やるさ。何もしないで大人しく霧に喰われてたまるか」
「僕も異論は無いよ」
「あの魔王様……、今日話したことをアスリーにも伝えていいですか?」
「いいぞ女装男。あの執事のジジイは役に立つからな」
ギルドメンバーはマスターに賛同した。かつてアンダー・ドラゴンの一員だったユーリも頷いていた。
「私達も、しばらくは騎士団と別行動になるがすぐに動く。ただし冒険者としてな」
聖騎士達も唇を結んで決意を表した。
「国が安定すればきっと霧が晴れますよね! ……あ、でも、霧の向こうにはもう何も無いんでしたっけ……」
自分の発言で暗くなりかけたマキアを、相棒のエンが慰めた。
「邪魔な霧さえ排除できれば世界が力を取り戻して、喰われた部分を少しずつ修復とか復活させるんじゃないか? エドガー連隊長やマシュー中隊長を短期間にポンと生み出すくらいなんだから」
「そっか……世界も頑張っているんだよな!」
「ポンてアンタら……」
された表現にマシューは口を尖らせたが、すぐに柔らかく笑った。
「ま、生まれたばかりでまた消されるのは面白くないし? 世界の均衡を守る為に人知れず働きますか! ヤベッ、俺ってば世界を救う勇者じゃん!」
彼の軽口は久し振りに室内の空気を明るくしてくれた。エドガーは複雑そうだったが。
「まだ自分が生まれたばかりというのが信じられない。どういった経緯で私達は世界に生み出されたのだろうか」
アルクナイトが推測した。
「おそらくヒゲとニャンコは明るい中年から派生したんだ。師団長には側近となる優れた騎士が必要だと世界が判断したのだろう。そして皆の記憶が上書きされた」
「え、私とマシューは師団長から派生したのか!?」
「じゃあ師団長、俺達のパパですか!?」
「ば、馬鹿なことを言うな!」
「パパ、俺パパの愛馬に乗ってみたいです」
「駄目だ、メリンダには誰も乗せない!!」
一気に騒々しくなった。
「ま、世界には綿密なキャラメイクをする時間までは無かったはずだから、性格その他はおまえ達自身が決定した個性だろうがな」
「そうか……。心の大切な部分は自分のものか」
エドガーの表情が漸く少し緩んだ。ヒゲと言う酷い渾名も受け入れることにしたようだ。
国内の秩序を正して国民を安心させる。そして私達は駒ではなく、個々の自立した生命体なのだと自覚する。それが世界崩壊を止める為に、今の私達にできること。
それで本当に人喰い霧を消せるのだろうか……?
生まれた不安を頭を振ってすぐに打ち消した。できると信じるんだ。強く願え。
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