218 / 291
ヤンデレ集団Bチーム(4)
しおりを挟む
「話すのは構わないけど……何故に私?」
「おまえが適任だ。おまえには緊張感の無いホワホワした雰囲気が有る。私達では頭越しに批判して死闘になりかねん」
まさかのソルにまで後押しされた。ホワホワって何だ。でも男同士で話し合うと喧嘩を飛び越えて死闘にまで発展するのか。そりゃ~私が一肌脱がないとなぁ。
「頼んだぞ」
ソル、ユーリ、キースは私に丸投げしてスタスタ歩き出した。こら。
残ったのは私と、気まずそうに笑うマシューだけだった。
「ごめんね」
マシューが取り敢えず謝ってきた。私はきっと微妙な表情で彼を見ていた。
彼に対して別に怒りは無い。生死問わず、アンダー・ドラゴンの構成員を無力化するのが私達の目的だ。マシューはミッションを遂行しただけ。
……でも雑な方法で人を殺めた彼には深い闇を感じてしまう。
どう接したらいいのか判らない。踏み込むべきなのか、距離を置くべきなのか。上官であるルービックもマシューの扱いには困っていたからなぁ。
「……悪いと思ってないでしょう?」
謝罪の言葉に感情が込められていなかったので確認した。
私とマシューは、先に行った仲間達から十メートルくらい遅れて歩いている。
「まーね。重犯罪者に対する適切な処置だと俺は思っているよ。でもキミの目の前でやるべきではなかったってことだろうね」
キースが「ロックウィーナを気遣え」って怒鳴ったから、マシューはその点だけが悪いと考えていた。
実際問題としてスプラッターな光景を強制視聴させられて気分が悪い。食欲が減退して今日の昼食はパスしたい気分。だけど問題はそれだけじゃない。
「私よりも、部屋の中に居た女性達を思い遣るべきだったね。彼女達の肌を見たでしょう? 男達に散々いたぶられたんだと思う」
「だから仇を取ってやったんじゃないか」
「それで彼女達は喜んだ?」
「………………」
娼婦が上げた悲痛な叫び声を思い出したのか、マシューは神妙な面持ちになった。
「あの女性達はねマシュー、男の暴力によって既に傷付いている状態だったんだよ。そこへ別の男による、更に凄まじい暴力シーンが展開されたらどうなるかな?」
解りやすく説明しようとしてつい、幼子を諭すようなゆっくり口調になってしまった。しかしマシューは馬鹿にされたと怒らず、静かに笑ったのだった。
「……今の言い方、昔のサティーにそっくりだな」
サティーさんか。
「あなたの剣の先生だったんだよね?」
「と言うより人生の先生だな」
「人生……。そんなに深い部分に関わる先生だったの?」
「うん。子供の頃の俺はさ、エディオン家に要らない男だったんだよ」
「え…………」
マシューは目を細めて陽が真上に移動した空を見上げた。
「武門の家系の三男坊。俺とエリアスさんは出自こそ似ているけれど、幼少期での周囲の扱いがまるで違うんだ。エリアスさんは兄弟の中でも一番強くて、幼い頃から一族期待の存在だったそうだね。以前魔王様から聞いたよ。対して俺は背ばっかり高いヒョロガリの虚弱体質だった」
そうだったんだ……。もしかしてなかなか肉が付かない体質? だからいっぱい食べているのかな?
「弱い奴はエディオンに要らないって、俺は親兄弟から言われて育ったんだ。家庭教師だけ付けて放っておかれたから友達も作れなかった。俺の闇魔法の黒い手はさ、誰かに構って欲しいという願望から生まれたんだろうね。もっとも家族に魔法を発現させて見せたら、気味が悪いって余計に避けられる羽目になったけど」
昔のマシューは殻に閉じ籠る青年だったとルービックが言っていた。そんな過去が有ったとしたら心を閉ざしても不思議はない。
「でもってエディオン一族の男はね、十六歳から最低五年間は王国兵団に所属しないと、一人前の大人として認めてもらえないんだよ。入団するのは正直言って嫌だったし怖かった。父に反発する気概も家出する根性も無かったけれど……」
マシューが自嘲した。
「悩んでいた十四の終わりにさ、近親者の中で唯一俺に良くしてくれる叔父に相談したんだよ。そうしたら叔父は当時の厳しいだけの剣術指南の先生を解雇して、代わりに知り合いの騎士を俺に付けてくれたんだ」
「それがサティーさん?」
「そ。女性騎士だってことで兄から笑われたけど、男の先生が付いていた頃の俺は萎縮しっ放しだったから、温かい雰囲気のサティーで良かったんだよ」
柔らかく顔を綻ばせるマシュー。彼はもしかして……。
「人付き合いしてこなかった俺はいろんな面で非常識でさ、よくサティーにしかられたよ。さっきのロックウィーナみたいにね」
笑顔を向けてきたマシューを見て私の胸が痛んだ。
マシューはつらい恋をしているんじゃないかと、以前馬車の中で話した時に感じていた。私の勘は当たっていたようだ。
そしてマシューが恋する相手とはあのサティーなのだろう。
孤独だったマシューに親身に接してくれて、……そして後に叔父さんの伴侶となった女性。
「サティーに鍛えられて俺は弱い少年ではなくなった。陰気な性格はそのままだったから、兵団に入った後は貴族の先輩にすぐ目を付けられちゃって、可愛がりと言う名のイジメに遭ったけれどさ、やり返せるくらいには強くなったんだよ?」
「軍隊は上下関係が厳しい所なんでしょう? やり返して問題にならなかったの?」
「なった。余計にチクチクやられた。でも俺は騎士の試験に受かったし、魔法を使えたので聖騎士に選出されたんだ。そうしたら聖騎士の先輩達がさりげなく俺を護ってくれるようになった。聖騎士は数が少ないから結束力が強いんだよ。みんな早期出世で高官だしね」
「おまえが適任だ。おまえには緊張感の無いホワホワした雰囲気が有る。私達では頭越しに批判して死闘になりかねん」
まさかのソルにまで後押しされた。ホワホワって何だ。でも男同士で話し合うと喧嘩を飛び越えて死闘にまで発展するのか。そりゃ~私が一肌脱がないとなぁ。
「頼んだぞ」
ソル、ユーリ、キースは私に丸投げしてスタスタ歩き出した。こら。
残ったのは私と、気まずそうに笑うマシューだけだった。
「ごめんね」
マシューが取り敢えず謝ってきた。私はきっと微妙な表情で彼を見ていた。
彼に対して別に怒りは無い。生死問わず、アンダー・ドラゴンの構成員を無力化するのが私達の目的だ。マシューはミッションを遂行しただけ。
……でも雑な方法で人を殺めた彼には深い闇を感じてしまう。
どう接したらいいのか判らない。踏み込むべきなのか、距離を置くべきなのか。上官であるルービックもマシューの扱いには困っていたからなぁ。
「……悪いと思ってないでしょう?」
謝罪の言葉に感情が込められていなかったので確認した。
私とマシューは、先に行った仲間達から十メートルくらい遅れて歩いている。
「まーね。重犯罪者に対する適切な処置だと俺は思っているよ。でもキミの目の前でやるべきではなかったってことだろうね」
キースが「ロックウィーナを気遣え」って怒鳴ったから、マシューはその点だけが悪いと考えていた。
実際問題としてスプラッターな光景を強制視聴させられて気分が悪い。食欲が減退して今日の昼食はパスしたい気分。だけど問題はそれだけじゃない。
「私よりも、部屋の中に居た女性達を思い遣るべきだったね。彼女達の肌を見たでしょう? 男達に散々いたぶられたんだと思う」
「だから仇を取ってやったんじゃないか」
「それで彼女達は喜んだ?」
「………………」
娼婦が上げた悲痛な叫び声を思い出したのか、マシューは神妙な面持ちになった。
「あの女性達はねマシュー、男の暴力によって既に傷付いている状態だったんだよ。そこへ別の男による、更に凄まじい暴力シーンが展開されたらどうなるかな?」
解りやすく説明しようとしてつい、幼子を諭すようなゆっくり口調になってしまった。しかしマシューは馬鹿にされたと怒らず、静かに笑ったのだった。
「……今の言い方、昔のサティーにそっくりだな」
サティーさんか。
「あなたの剣の先生だったんだよね?」
「と言うより人生の先生だな」
「人生……。そんなに深い部分に関わる先生だったの?」
「うん。子供の頃の俺はさ、エディオン家に要らない男だったんだよ」
「え…………」
マシューは目を細めて陽が真上に移動した空を見上げた。
「武門の家系の三男坊。俺とエリアスさんは出自こそ似ているけれど、幼少期での周囲の扱いがまるで違うんだ。エリアスさんは兄弟の中でも一番強くて、幼い頃から一族期待の存在だったそうだね。以前魔王様から聞いたよ。対して俺は背ばっかり高いヒョロガリの虚弱体質だった」
そうだったんだ……。もしかしてなかなか肉が付かない体質? だからいっぱい食べているのかな?
「弱い奴はエディオンに要らないって、俺は親兄弟から言われて育ったんだ。家庭教師だけ付けて放っておかれたから友達も作れなかった。俺の闇魔法の黒い手はさ、誰かに構って欲しいという願望から生まれたんだろうね。もっとも家族に魔法を発現させて見せたら、気味が悪いって余計に避けられる羽目になったけど」
昔のマシューは殻に閉じ籠る青年だったとルービックが言っていた。そんな過去が有ったとしたら心を閉ざしても不思議はない。
「でもってエディオン一族の男はね、十六歳から最低五年間は王国兵団に所属しないと、一人前の大人として認めてもらえないんだよ。入団するのは正直言って嫌だったし怖かった。父に反発する気概も家出する根性も無かったけれど……」
マシューが自嘲した。
「悩んでいた十四の終わりにさ、近親者の中で唯一俺に良くしてくれる叔父に相談したんだよ。そうしたら叔父は当時の厳しいだけの剣術指南の先生を解雇して、代わりに知り合いの騎士を俺に付けてくれたんだ」
「それがサティーさん?」
「そ。女性騎士だってことで兄から笑われたけど、男の先生が付いていた頃の俺は萎縮しっ放しだったから、温かい雰囲気のサティーで良かったんだよ」
柔らかく顔を綻ばせるマシュー。彼はもしかして……。
「人付き合いしてこなかった俺はいろんな面で非常識でさ、よくサティーにしかられたよ。さっきのロックウィーナみたいにね」
笑顔を向けてきたマシューを見て私の胸が痛んだ。
マシューはつらい恋をしているんじゃないかと、以前馬車の中で話した時に感じていた。私の勘は当たっていたようだ。
そしてマシューが恋する相手とはあのサティーなのだろう。
孤独だったマシューに親身に接してくれて、……そして後に叔父さんの伴侶となった女性。
「サティーに鍛えられて俺は弱い少年ではなくなった。陰気な性格はそのままだったから、兵団に入った後は貴族の先輩にすぐ目を付けられちゃって、可愛がりと言う名のイジメに遭ったけれどさ、やり返せるくらいには強くなったんだよ?」
「軍隊は上下関係が厳しい所なんでしょう? やり返して問題にならなかったの?」
「なった。余計にチクチクやられた。でも俺は騎士の試験に受かったし、魔法を使えたので聖騎士に選出されたんだ。そうしたら聖騎士の先輩達がさりげなく俺を護ってくれるようになった。聖騎士は数が少ないから結束力が強いんだよ。みんな早期出世で高官だしね」
1
あなたにおすすめの小説
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる