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二幕 困難な救助ミッション(3)
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「ロックウィーナ、ルパートは好みの女性のタイプを何と言っていましたか?」
「あ、それは……」
言うとルパートは恥ずかしいよね。彼を思いやるなら黙っていてあげるべきだけど……。少し考えたが普段からムカつく奴なのでキースにバラすことにした。
「いつも一生懸命で裏表が無い年下の女性らしいです。護られていることを当たり前だと思わずに、自分も戦おうとする芯の強さが有る人なら尚良しだと」
「それを聞いてあなたはどう思いましたか?」
「女性冒険者で薬師のセシリーさんがその条件に当てはまるので、ルパート先輩は彼女を狙っていると思いました。彼女がギルドへ来た時はいつも愛想良く接していますし」
「あはは……そうですか」
キースは乾いた笑いを見せた後に、頭を抱えているルパートの肩を軽く叩いた。
「ルパート、もう少し積極的に行かないと伝わりませんよ?」
そうだね。セシリーの居るパーティに対してルパートは笑顔だけれど、「気をつけて行ってらっしゃい」くらいしか言えていない。狙っているのならもう少し積極的に話しかけないとね。
「いいから、そういう話は! 次の家に行くぞ!」
珍しく赤い顔をしたルパートは早足で家を出ていった。キースに好みのタイプを知られたことがよほど恥ずかしかっと見える。ざまぁ。
急いで彼の後を私とキースで追ったのだが、ルパートは入口すぐ横でちゃんと待ってくれていた。戦闘力が低い私達を護ろうとしているのだろう。この点に関しては素直に感謝だ。
身勝手なちゃらんぽらんな先輩だとずっと思っていたが、今日のルパートを見る限り認識を改めた方が良いのかもしれない。
私達は探索を再開した。そして八軒目で、ルパートは中を見る前に宣言した。
「気配を消せ。中に誰か居る」
すきま風の僅かな流れで気配を察知したのだろうか。私達は足音を忍ばせて家の中へ入った。さっきのオークのような獣臭や殺気は感じられない。ルパートは慎重に、しかし迷わず奥の部屋へ向かった。
奥の部屋にも一見誰も居ないように見えたのだが、
「ギルドの者だ。助けに来た」
ルパートが声をかけたすぐ後に壁際、間取りから推測してクローゼットの扉の中からガタンと音が鳴った。ちょっとだけ私は驚いて肩を縮めた。ルパートがクローゼットへ近付き、警戒しながら扉を開けた。
「……あ……」
クローゼット内には横たわる戦士タイプの男性と、彼に寄り添うように座る魔術師風の女性が居た。
ルパートはすぐに屈んで、横たわる男性の首筋に己の指を当てて脈動を確認した。
「………………」
ルパートは私達へ向けて頭を左右に振った。駄目だった。戦士に見える男性の方は既に死亡していたようだ。ルパートは無表情で、男性の服の首元に付いていた特徴的な大きなボタンを引き千切った。捜索対象者が死亡している場合は遺品を持ち帰らなければならない。
「助け……て。この村から出して……」
生き残っていた女性が掠れた声で懇願した。唇が乾いて割れている。私は携帯していた水筒の蓋を外して彼女に手渡した。
「大丈夫、助けます。私達はその為に来たんです。まずはこれを飲んで」
女性は受け取った水筒の水を勢いよく飲んだ。途中で咳込んだが必死に水筒に口を付けていた。一昼夜何も口にしていなかった感じだ。
魔術師で長いハニーブロンド、身長167センチで細見、年齢26歳の女性。目の前の彼女は要救助者の特徴と一致していた。
「あなたはシモーヌさんですか?」
私の問いかけに女性は何度も頷いた。
「あなたは四人でパーティを組んでいたはずですが、他の二人のおおよその居場所は判りますか?」
シモーヌは苦しそうに言った。
「二人とは……村の東側で別れた……。人型のモンスターに襲われて……強くて歯が立たなくて……。ダグが私を連れて逃げてくれたけど、ダグも大きな傷を負っていて……昨夜動かなくなって……」
推測するに彼女の傍で死亡していたのがダグだろう。そして残る二人は東側で強いモンスターと戦って、現在の生死は不明。
「東側ならエリアスさんとセスさんが捜索している区域だな。俺達はとりあえず彼女を連れて待ち合わせ場所へ向かおう。アンタ立てるか?」
ルパートに問われてシモーヌはヨロヨロと立ち上がったが、すぐにフラついて倒れそうになった。その身体を私が抱いて支えた。
怪我はしていないようだが、長い時間クローゼットに隠れて身動きできない状態だったのだろう。仲間が息絶えるという精神的苦痛も味わっている。強風が吹き荒れる野原を自力で歩かせるのは酷だと私は判断した。
「背負います。背中に乗って」
「いえ、それは僕が担当しましょう」
キースがシモーヌを背負った。
「この中で戦えないのは僕だけですからね。ロックウィーナはルパートと共に臨戦態勢でいて下さい」
キースの背中で人の体温を感じたせいか、シモーヌは少しだけ柔らかい表情になった。
「よし、行くぞ」
部屋から出ようとする私達だったが、シモーヌが待ったをかけた。
「あのっ、ダグは!?」
「……彼は連れて行けない。ギルドに登録した時に説明を受けただろ? 俺達職員は生存者と遺品しか回収しない。死者の為に仲間を危険に曝す訳にはいかないんだ」
「で、でも……彼は……私の……」
「遺体を回収して欲しかったらギルドに戻って冒険者に依頼しろ。もしくは自分でやるんだな」
ルパートはキッパリと言い放った。絶望したシモーヌは再び生気の無い顔に戻ってしまったが、これは冒険者ギルドの原則なのだ。情けをかけてしまったが故に、更に犠牲を増やしてしまった事例が過去に何度も有ったそうだ。
シモーヌを背負ったキースと私は、無言になって歩くルパートの後を追った。
「あ、それは……」
言うとルパートは恥ずかしいよね。彼を思いやるなら黙っていてあげるべきだけど……。少し考えたが普段からムカつく奴なのでキースにバラすことにした。
「いつも一生懸命で裏表が無い年下の女性らしいです。護られていることを当たり前だと思わずに、自分も戦おうとする芯の強さが有る人なら尚良しだと」
「それを聞いてあなたはどう思いましたか?」
「女性冒険者で薬師のセシリーさんがその条件に当てはまるので、ルパート先輩は彼女を狙っていると思いました。彼女がギルドへ来た時はいつも愛想良く接していますし」
「あはは……そうですか」
キースは乾いた笑いを見せた後に、頭を抱えているルパートの肩を軽く叩いた。
「ルパート、もう少し積極的に行かないと伝わりませんよ?」
そうだね。セシリーの居るパーティに対してルパートは笑顔だけれど、「気をつけて行ってらっしゃい」くらいしか言えていない。狙っているのならもう少し積極的に話しかけないとね。
「いいから、そういう話は! 次の家に行くぞ!」
珍しく赤い顔をしたルパートは早足で家を出ていった。キースに好みのタイプを知られたことがよほど恥ずかしかっと見える。ざまぁ。
急いで彼の後を私とキースで追ったのだが、ルパートは入口すぐ横でちゃんと待ってくれていた。戦闘力が低い私達を護ろうとしているのだろう。この点に関しては素直に感謝だ。
身勝手なちゃらんぽらんな先輩だとずっと思っていたが、今日のルパートを見る限り認識を改めた方が良いのかもしれない。
私達は探索を再開した。そして八軒目で、ルパートは中を見る前に宣言した。
「気配を消せ。中に誰か居る」
すきま風の僅かな流れで気配を察知したのだろうか。私達は足音を忍ばせて家の中へ入った。さっきのオークのような獣臭や殺気は感じられない。ルパートは慎重に、しかし迷わず奥の部屋へ向かった。
奥の部屋にも一見誰も居ないように見えたのだが、
「ギルドの者だ。助けに来た」
ルパートが声をかけたすぐ後に壁際、間取りから推測してクローゼットの扉の中からガタンと音が鳴った。ちょっとだけ私は驚いて肩を縮めた。ルパートがクローゼットへ近付き、警戒しながら扉を開けた。
「……あ……」
クローゼット内には横たわる戦士タイプの男性と、彼に寄り添うように座る魔術師風の女性が居た。
ルパートはすぐに屈んで、横たわる男性の首筋に己の指を当てて脈動を確認した。
「………………」
ルパートは私達へ向けて頭を左右に振った。駄目だった。戦士に見える男性の方は既に死亡していたようだ。ルパートは無表情で、男性の服の首元に付いていた特徴的な大きなボタンを引き千切った。捜索対象者が死亡している場合は遺品を持ち帰らなければならない。
「助け……て。この村から出して……」
生き残っていた女性が掠れた声で懇願した。唇が乾いて割れている。私は携帯していた水筒の蓋を外して彼女に手渡した。
「大丈夫、助けます。私達はその為に来たんです。まずはこれを飲んで」
女性は受け取った水筒の水を勢いよく飲んだ。途中で咳込んだが必死に水筒に口を付けていた。一昼夜何も口にしていなかった感じだ。
魔術師で長いハニーブロンド、身長167センチで細見、年齢26歳の女性。目の前の彼女は要救助者の特徴と一致していた。
「あなたはシモーヌさんですか?」
私の問いかけに女性は何度も頷いた。
「あなたは四人でパーティを組んでいたはずですが、他の二人のおおよその居場所は判りますか?」
シモーヌは苦しそうに言った。
「二人とは……村の東側で別れた……。人型のモンスターに襲われて……強くて歯が立たなくて……。ダグが私を連れて逃げてくれたけど、ダグも大きな傷を負っていて……昨夜動かなくなって……」
推測するに彼女の傍で死亡していたのがダグだろう。そして残る二人は東側で強いモンスターと戦って、現在の生死は不明。
「東側ならエリアスさんとセスさんが捜索している区域だな。俺達はとりあえず彼女を連れて待ち合わせ場所へ向かおう。アンタ立てるか?」
ルパートに問われてシモーヌはヨロヨロと立ち上がったが、すぐにフラついて倒れそうになった。その身体を私が抱いて支えた。
怪我はしていないようだが、長い時間クローゼットに隠れて身動きできない状態だったのだろう。仲間が息絶えるという精神的苦痛も味わっている。強風が吹き荒れる野原を自力で歩かせるのは酷だと私は判断した。
「背負います。背中に乗って」
「いえ、それは僕が担当しましょう」
キースがシモーヌを背負った。
「この中で戦えないのは僕だけですからね。ロックウィーナはルパートと共に臨戦態勢でいて下さい」
キースの背中で人の体温を感じたせいか、シモーヌは少しだけ柔らかい表情になった。
「よし、行くぞ」
部屋から出ようとする私達だったが、シモーヌが待ったをかけた。
「あのっ、ダグは!?」
「……彼は連れて行けない。ギルドに登録した時に説明を受けただろ? 俺達職員は生存者と遺品しか回収しない。死者の為に仲間を危険に曝す訳にはいかないんだ」
「で、でも……彼は……私の……」
「遺体を回収して欲しかったらギルドに戻って冒険者に依頼しろ。もしくは自分でやるんだな」
ルパートはキッパリと言い放った。絶望したシモーヌは再び生気の無い顔に戻ってしまったが、これは冒険者ギルドの原則なのだ。情けをかけてしまったが故に、更に犠牲を増やしてしまった事例が過去に何度も有ったそうだ。
シモーヌを背負ったキースと私は、無言になって歩くルパートの後を追った。
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