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六幕 アジトを探れ!(2)
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首を傾げる私をエリアスはグイっと両腕で引き寄せた。あ、これデジャヴ……とか思う間も無く、訓練場でルパートにされたように私はエリアスに抱きしめられていた。
「ええええええええ!?」
「おいぃっ、何してる!!」
私の悲鳴とルパートの怒号が同時に上がった。
胸部は鉄製の鎧を着けているが、私の背中に回された両腕からエリアスの体温が伝わってきた。更にこれでもかという密着感。息ができないくらいギュウギュウにしめられた。
あまりの衝撃的な出来事に私の思考は彼方へと飛んだ。抱きしめられ回数、また増えちゃった☆とかどうでも良いことを考えていた。
ルパートがキーキー騒いでいたが、エリアスは落ち着いたものだった。
「友人とは事ある毎にこうして抱き合うものだ」
「そんな常識初めて聞いたぞ!?」
「レディとして見ていた時は遠慮していた。本当はトロールを倒した後、貴重鉱石を採掘した後、廃村で再会した後、こうして抱き合って喜びを分かち合いたかった」
「我慢してたんだ、偉いね。いっそのことずっと我慢しててくれよ!」
「もう友人だから」
「友達でも遠慮しろ、親しき中にも礼儀ありだ。なんで前より距離が縮まってるんだよ!?」
「親友になったから」
「進展早いな!」
「そこまで!!」
キースの慌てた声が二人を止めた。
「ロックウィーナがタップしてる! 腕の力が強過ぎて息ができないんだ、緩めて!!」
「なんと」
エリアスの腕が開かれ、私はルパートによって救出されてキースに預けられた。ゼイゼイ。怪力の人に抱きしめられるのって命懸けなんだと知った。
「すまなかったロックウィーナ。次からはちゃんと力加減をすると誓う」
次が有るのか。ルパートの言ったように距離が縮まった気がする。私がやらかしたのか、エリアスにしてやられたのか。
「恋っていいなぁ……」
呟いたマキアをエンが何とも言えない目で見た。絞め落とされるところだったんだけどね。
「おー、全員揃ってるな。では始めるぞー」
何も知らないギルドマスターがのほほんと会議室に入ってきた。
「はーい、みんな着席ー。説明するよー」
呑気な声に気が削がれた。私達は各々手近なイスに腰かけた。
マスターは長机の上にフィースノー地方の大きな地図を広げた。数ヶ所に赤い丸印が付けられており、マスターがその丸印を指し示した。
「寄せられた情報から推測して、この三か所にアンダー・ドラゴンのアジトが在ると思われる」
ギルド支部にはお抱えの情報屋が居る。それ以外にも依頼で出かけた冒険者から帰還の際に、出会ったモンスターや気になった場所等の情報を提供して貰える場合が有る。
「一番近いアジトはここだな。取り敢えずここへ赴いて、出入りする人間をチェックしてくれ」
「チェックするだけか? 捕まえて本拠地の場所を吐かせた方が早いだろう」
ルパートの進言をマスターは首を振って否定した。
「下っ端の構成員は本拠地の場所を知らされていない。今までに逮捕された奴らは王国兵団の厳しい尋問を受けたが、誰一人として有力な情報を吐かなかったそうだ」
尋問の名を借りた拷問だろうな。それでも吐かなかったということは、彼らは話して楽になれる情報を持っていなかったのだ。
「そんな訳だから最初は見張るだけに留めてくれ」
「最初だけ?」
「本拠地からの連絡係がアジトに絶対現れるはずだから」
「ああそうか。そいつがターゲットか」
アジトに居る構成員は、街でよく見かける不良やチンピラくんレベルの小者に過ぎない。アンダー・ドラゴンという大組織の名前を使って大きな顔をしているのだ。だがその対価は払わなければならない。犯罪行為で得た金のいくらかを組織に上納している。その繋ぎ役が連絡係だ。
「連絡係を捕まえるか、後を付けて本拠地の場所を探るかすればいいんだな?」
「そういうことだ。どちらにするかはおまえ達の判断に任せる」
「もし見張っていることが奴らにバレて戦闘になったら?」
「戦え。自分の命を護ることが最優先事項だ。その為ならば相手を殺しても構わん。冒険者ギルドに喧嘩を売ったことを後悔させてやれ」
静かにマスターに言われて身が引き締まった。普段は軽い言動をしていても、マスターは死線を掻い潜ってきた勇士なんだと思い知らされる。
「まぁうっかり一つのアジトを壊滅させちゃってもドンマイドンマイ。まだ二つ在るからな、気を取り直してそっちへGO。三つとも全滅させちゃっても気にしない。アンダー・ドラゴンの制圧は元々、王国兵団がやるべき仕事なんだからさ」
やっぱり軽かった。この人は本当に元Sランク冒険者か?
ここでエンが挙手をした。
「はいエンくん」
「……アンダー・ドラゴンと言う呼び名は長くて面倒」
そこかよ。
「あ、私もそう思っていた。長いよな」
「僕もです。省略してアンドラでいいんじゃないですか?」
「いいっスね、アンドラ!」
「それなら面倒じゃない……」
「じゃあこっからアンドラで!」
全員軽かった。でもまぁ、そのくらいの図太い神経じゃないと冒険者やギルドの職員は務まらないんだよね。私もだいぶ感化されてきたな。
「ええええええええ!?」
「おいぃっ、何してる!!」
私の悲鳴とルパートの怒号が同時に上がった。
胸部は鉄製の鎧を着けているが、私の背中に回された両腕からエリアスの体温が伝わってきた。更にこれでもかという密着感。息ができないくらいギュウギュウにしめられた。
あまりの衝撃的な出来事に私の思考は彼方へと飛んだ。抱きしめられ回数、また増えちゃった☆とかどうでも良いことを考えていた。
ルパートがキーキー騒いでいたが、エリアスは落ち着いたものだった。
「友人とは事ある毎にこうして抱き合うものだ」
「そんな常識初めて聞いたぞ!?」
「レディとして見ていた時は遠慮していた。本当はトロールを倒した後、貴重鉱石を採掘した後、廃村で再会した後、こうして抱き合って喜びを分かち合いたかった」
「我慢してたんだ、偉いね。いっそのことずっと我慢しててくれよ!」
「もう友人だから」
「友達でも遠慮しろ、親しき中にも礼儀ありだ。なんで前より距離が縮まってるんだよ!?」
「親友になったから」
「進展早いな!」
「そこまで!!」
キースの慌てた声が二人を止めた。
「ロックウィーナがタップしてる! 腕の力が強過ぎて息ができないんだ、緩めて!!」
「なんと」
エリアスの腕が開かれ、私はルパートによって救出されてキースに預けられた。ゼイゼイ。怪力の人に抱きしめられるのって命懸けなんだと知った。
「すまなかったロックウィーナ。次からはちゃんと力加減をすると誓う」
次が有るのか。ルパートの言ったように距離が縮まった気がする。私がやらかしたのか、エリアスにしてやられたのか。
「恋っていいなぁ……」
呟いたマキアをエンが何とも言えない目で見た。絞め落とされるところだったんだけどね。
「おー、全員揃ってるな。では始めるぞー」
何も知らないギルドマスターがのほほんと会議室に入ってきた。
「はーい、みんな着席ー。説明するよー」
呑気な声に気が削がれた。私達は各々手近なイスに腰かけた。
マスターは長机の上にフィースノー地方の大きな地図を広げた。数ヶ所に赤い丸印が付けられており、マスターがその丸印を指し示した。
「寄せられた情報から推測して、この三か所にアンダー・ドラゴンのアジトが在ると思われる」
ギルド支部にはお抱えの情報屋が居る。それ以外にも依頼で出かけた冒険者から帰還の際に、出会ったモンスターや気になった場所等の情報を提供して貰える場合が有る。
「一番近いアジトはここだな。取り敢えずここへ赴いて、出入りする人間をチェックしてくれ」
「チェックするだけか? 捕まえて本拠地の場所を吐かせた方が早いだろう」
ルパートの進言をマスターは首を振って否定した。
「下っ端の構成員は本拠地の場所を知らされていない。今までに逮捕された奴らは王国兵団の厳しい尋問を受けたが、誰一人として有力な情報を吐かなかったそうだ」
尋問の名を借りた拷問だろうな。それでも吐かなかったということは、彼らは話して楽になれる情報を持っていなかったのだ。
「そんな訳だから最初は見張るだけに留めてくれ」
「最初だけ?」
「本拠地からの連絡係がアジトに絶対現れるはずだから」
「ああそうか。そいつがターゲットか」
アジトに居る構成員は、街でよく見かける不良やチンピラくんレベルの小者に過ぎない。アンダー・ドラゴンという大組織の名前を使って大きな顔をしているのだ。だがその対価は払わなければならない。犯罪行為で得た金のいくらかを組織に上納している。その繋ぎ役が連絡係だ。
「連絡係を捕まえるか、後を付けて本拠地の場所を探るかすればいいんだな?」
「そういうことだ。どちらにするかはおまえ達の判断に任せる」
「もし見張っていることが奴らにバレて戦闘になったら?」
「戦え。自分の命を護ることが最優先事項だ。その為ならば相手を殺しても構わん。冒険者ギルドに喧嘩を売ったことを後悔させてやれ」
静かにマスターに言われて身が引き締まった。普段は軽い言動をしていても、マスターは死線を掻い潜ってきた勇士なんだと思い知らされる。
「まぁうっかり一つのアジトを壊滅させちゃってもドンマイドンマイ。まだ二つ在るからな、気を取り直してそっちへGO。三つとも全滅させちゃっても気にしない。アンダー・ドラゴンの制圧は元々、王国兵団がやるべき仕事なんだからさ」
やっぱり軽かった。この人は本当に元Sランク冒険者か?
ここでエンが挙手をした。
「はいエンくん」
「……アンダー・ドラゴンと言う呼び名は長くて面倒」
そこかよ。
「あ、私もそう思っていた。長いよな」
「僕もです。省略してアンドラでいいんじゃないですか?」
「いいっスね、アンドラ!」
「それなら面倒じゃない……」
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全員軽かった。でもまぁ、そのくらいの図太い神経じゃないと冒険者やギルドの職員は務まらないんだよね。私もだいぶ感化されてきたな。
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