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六幕 アジトを探れ!(3)
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為になるんだかならないんだか判らない会議を終えた私達は、一つ目のアジトに向けて早速出発することになった。
「ウィーお姉様ぁ!」
冒険者ギルドのエントランスホールを通り抜けようとした時、受付嬢のリリアナに呼び止められた。
「行かれるんですかぁ? また危険な任務らしいじゃないですかぁ!」
「うん。ま、ここで働いている限り危険は避けられないから」
「でも私お姉様が心配でぇ……」
リリアナの言動はいちいち芝居がかっている。だからブリッ子は計算した上での演技だと思うのだが、大きな瞳がウルウルしているのを見ていると、つい頭を撫でてヨシヨシしてあげたくなる。彼女の方がだいぶ背が高いんだけどね。172センチくらい有るんじゃないかな? 顔だけではなくスタイルも良くて羨ましい。
「リリアナちゃん! レクセン支部のマキアです! 俺も頑張るからね!」
横からマキアがにゅっと顔を出した。食堂でもリリアナ可愛い可愛いと連呼していたし、さてはギルドに着いて早々一目惚れしたな。
リリアナはマキアに向けて抜群の笑顔を返した後、
「お気をつけて行ってらっしゃいねぇ」
ただその一言だけで会話を放棄した。
「リリアナちゃんて非番の日はいつ……」
「お姉様ぁ、お守りにこの結界石を持っていって下さいねぇ」
「え、結界石って高いじゃない。こんなに大きいの、どうしたの?」
「ギルドの就職祝いに父から貰ったんですぅ。でも私は内勤でしょう? お姉様が使って下さいな」
「リリアナちゃん、良ければフィースノーの街の案内を……」
「要らないって言われてもこの石、お姉様に押し付けちゃいますぅ。えいっえいっ」
発言を無視されたマキアは、リリアナにチヤホヤされている私を恨めしそうな目で見た。慣れなさい。リリアナは男性には塩対応なんだよ。すっごく可愛いからきっと過去にストーカーとかされて、男に良い印象を持っていないんじゃないかな。
結局私は高価な結界石を持たされることになった。
「ありがとう、心強いよ」
「ご無事をお祈りしていますぅ」
レースのハンカチをヒラヒラさせてリリアナは私を見送った。ぞろぞろとギルドを出る私達。横に並んだマキアが沈んだ声で質問してきた。
「リリアナちゃんて……百合っスか?」
どうだろう。私も怪しいなと思うことが何度か有った。
「判んないや。リリアナとそっち方面の話をしたことが無いから」
「あっ、ロックウィーナさんは恋バナ苦手でしたね、すみません!」
そういう設定だったの忘れてた。食堂ではルパートのことを聞かれたくなかったから、適当なことを言ってお茶を濁したんだった。本当は恋バナ興味有ります。恋人欲しいです。
「ごめんね、もう大丈夫だよ。あれから考えてみたんだ。それで私も少しは恋愛に目を向けなきゃ駄目だなって、今はそう思うようになったから」
「マジで!? 切り替え早いっスね!」
ハハハ。
「でも嬉しいです。俺ずっと恋バナしたかったんですよ。でも同世代の同僚のエンがアレでしょ?」
アレだねぇ。異性との交流を面倒臭がるタイプに見えるね。エンは不機嫌そうにそっぽを向いた。
「レクセン支部の出動メンバーの中では俺とエンが年少で、他はみんな年が離れた先輩なんですよ。あんまり軽いノリで話せないんです。だからロックウィーナさんとは、いろいろとお話をしたいなって思ってました!」
マキアは23歳だっけ。25の私と近いな。
そういえば私、男友達も碌に居ないや。田舎で一緒に遊んでいた幼馴染みの男の子は、私の姉の恋人でもあったからあまり親しくできなかったんだよね。
マキアは話しやすい青年だから、友達になれたらいいな。
「私で良ければこれから宜しく。同世代の友達欲しかったんだ」
「こちらこそ! やったぁ、レンフォード!!」
隠すことなく喜びを表現するマキアは見ていて気持ちいい。ところで……。
「レンフォードって何?」
「あっ、王都で大人気の役者の名前です。俺も舞台観たこと有るけど感情表現がスゲェの、マジ天才。王都やレクセンでは嬉しかったり驚いたり、とにかく感情が昂ぶった時に彼に因んで、レンフォードって叫ぶのが若者の間で流行ってるんですよ」
「へぇ、レンフォードかぁ。マキアは今そんなに嬉しかったの?」
「相当ですよ。だってロックウィーナさんに、同世代の友達なんて言ってもらえたんですからね!」
私なんかと……いや、自分を下げては友達になってくれたマキアに失礼だな。思えばルパートに失恋して以来、ずっと背を丸めて卑屈になっていた気がする。これからはもっと胸を張って生きよう。
「私も嬉しいよ。友達なんだからもう呼び捨てにしてね。あとタメ口でいいから」
「おおお、レンフォード!」
「俺だって同世代だろうが」
ルパートが口を尖らせて割り込んできた。
「先輩は先輩でしょう? 友達じゃないんで」
「私は友達だ。4歳差だが気持ちは若いぞ。流行にも敏感だ。レンフォード!」
エリアスも混ざった。レンフォードの使い方が違う。
「ウィーお姉様ぁ!」
冒険者ギルドのエントランスホールを通り抜けようとした時、受付嬢のリリアナに呼び止められた。
「行かれるんですかぁ? また危険な任務らしいじゃないですかぁ!」
「うん。ま、ここで働いている限り危険は避けられないから」
「でも私お姉様が心配でぇ……」
リリアナの言動はいちいち芝居がかっている。だからブリッ子は計算した上での演技だと思うのだが、大きな瞳がウルウルしているのを見ていると、つい頭を撫でてヨシヨシしてあげたくなる。彼女の方がだいぶ背が高いんだけどね。172センチくらい有るんじゃないかな? 顔だけではなくスタイルも良くて羨ましい。
「リリアナちゃん! レクセン支部のマキアです! 俺も頑張るからね!」
横からマキアがにゅっと顔を出した。食堂でもリリアナ可愛い可愛いと連呼していたし、さてはギルドに着いて早々一目惚れしたな。
リリアナはマキアに向けて抜群の笑顔を返した後、
「お気をつけて行ってらっしゃいねぇ」
ただその一言だけで会話を放棄した。
「リリアナちゃんて非番の日はいつ……」
「お姉様ぁ、お守りにこの結界石を持っていって下さいねぇ」
「え、結界石って高いじゃない。こんなに大きいの、どうしたの?」
「ギルドの就職祝いに父から貰ったんですぅ。でも私は内勤でしょう? お姉様が使って下さいな」
「リリアナちゃん、良ければフィースノーの街の案内を……」
「要らないって言われてもこの石、お姉様に押し付けちゃいますぅ。えいっえいっ」
発言を無視されたマキアは、リリアナにチヤホヤされている私を恨めしそうな目で見た。慣れなさい。リリアナは男性には塩対応なんだよ。すっごく可愛いからきっと過去にストーカーとかされて、男に良い印象を持っていないんじゃないかな。
結局私は高価な結界石を持たされることになった。
「ありがとう、心強いよ」
「ご無事をお祈りしていますぅ」
レースのハンカチをヒラヒラさせてリリアナは私を見送った。ぞろぞろとギルドを出る私達。横に並んだマキアが沈んだ声で質問してきた。
「リリアナちゃんて……百合っスか?」
どうだろう。私も怪しいなと思うことが何度か有った。
「判んないや。リリアナとそっち方面の話をしたことが無いから」
「あっ、ロックウィーナさんは恋バナ苦手でしたね、すみません!」
そういう設定だったの忘れてた。食堂ではルパートのことを聞かれたくなかったから、適当なことを言ってお茶を濁したんだった。本当は恋バナ興味有ります。恋人欲しいです。
「ごめんね、もう大丈夫だよ。あれから考えてみたんだ。それで私も少しは恋愛に目を向けなきゃ駄目だなって、今はそう思うようになったから」
「マジで!? 切り替え早いっスね!」
ハハハ。
「でも嬉しいです。俺ずっと恋バナしたかったんですよ。でも同世代の同僚のエンがアレでしょ?」
アレだねぇ。異性との交流を面倒臭がるタイプに見えるね。エンは不機嫌そうにそっぽを向いた。
「レクセン支部の出動メンバーの中では俺とエンが年少で、他はみんな年が離れた先輩なんですよ。あんまり軽いノリで話せないんです。だからロックウィーナさんとは、いろいろとお話をしたいなって思ってました!」
マキアは23歳だっけ。25の私と近いな。
そういえば私、男友達も碌に居ないや。田舎で一緒に遊んでいた幼馴染みの男の子は、私の姉の恋人でもあったからあまり親しくできなかったんだよね。
マキアは話しやすい青年だから、友達になれたらいいな。
「私で良ければこれから宜しく。同世代の友達欲しかったんだ」
「こちらこそ! やったぁ、レンフォード!!」
隠すことなく喜びを表現するマキアは見ていて気持ちいい。ところで……。
「レンフォードって何?」
「あっ、王都で大人気の役者の名前です。俺も舞台観たこと有るけど感情表現がスゲェの、マジ天才。王都やレクセンでは嬉しかったり驚いたり、とにかく感情が昂ぶった時に彼に因んで、レンフォードって叫ぶのが若者の間で流行ってるんですよ」
「へぇ、レンフォードかぁ。マキアは今そんなに嬉しかったの?」
「相当ですよ。だってロックウィーナさんに、同世代の友達なんて言ってもらえたんですからね!」
私なんかと……いや、自分を下げては友達になってくれたマキアに失礼だな。思えばルパートに失恋して以来、ずっと背を丸めて卑屈になっていた気がする。これからはもっと胸を張って生きよう。
「私も嬉しいよ。友達なんだからもう呼び捨てにしてね。あとタメ口でいいから」
「おおお、レンフォード!」
「俺だって同世代だろうが」
ルパートが口を尖らせて割り込んできた。
「先輩は先輩でしょう? 友達じゃないんで」
「私は友達だ。4歳差だが気持ちは若いぞ。流行にも敏感だ。レンフォード!」
エリアスも混ざった。レンフォードの使い方が違う。
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