ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

文字の大きさ
75 / 291

新六幕 十日目の先へ(1)

しおりを挟む
 14時。私達は拠点であるフィースノーの街から二キロ離れた森の中に居た。望遠鏡の先に映し出される景色は、私にとっては二度目のものだった。
 簡素な丸太小屋。そこに住んでいるのは林業を営む善良なオヤジではない。ひげを生やしたスキンヘッド男、トンビのような鳥のタトゥーを首の後ろに入れた男、トゲトゲが付いた腕輪をはめた男。木こりには到底見えない終末男達は犯罪組織アンダー・ドラゴンの構成員であり、小屋は組織が所有するアジトの一つなのだ。

「小屋の前に居るのはチンピラ三人か」

 やっぱり来ていたアルクナイトが、望遠鏡も使わず魔眼で遠視をした。

「ええ。でも小屋の中にもう一人居ます。そいつが火炎瓶を投げてくるので、皆さん注意して下さい」

 私は一周目の記憶を思い出して注意喚起した。私達の行動によって未来は変わるが、まだアンダー・ドラゴンへ直接関与はしていない。ここのアジトに関しては、一周目と同じ構成員配置と見ていいだろう。

「あと少ししたら、本拠地とアジトを繋ぐ連絡係が現れるはずです」
「……未来で俺に剣をぶっ刺す相手ですよね?」

 苦笑するマキアの目を、私は真っ直ぐ見てゆっくり言った。

「今度はそうならない。ここで本拠地の情報を持つ連絡係を捕らえてしまえば、私達の任務は無事に終わるのよ。明日別のアジトへ出向かなくても済む。首領やエンの兄弟子と戦う未来が消えるの。あなた達は絶対に死なせない」

 その為に私は時間を逆行したのだ。
 マキアの瞳も、決意を込めた強い眼差しへと変わった。

「そうですね。絶対に成功させましょう。ありがとうございます、ロックウィーナさん」

 気合を入れて出動した二周目。道中では雑談をせず皆シリアスモードだった故に、私とマキア、エンの間には若干の距離感が有った。

「あのねマキア、エンもだけど、私に敬語は必要無いよ。一周目で二人と過ごした時間は短かったけど、他愛の無いお喋りをたくさんしてね、私達は友達になれたんだよ」
「え、そうだったんですか!?」
「うん。今回も私は友達になりたい。二人が良ければ」
「もちろんです! なぁ、エン?」

 マキアは大きく、エンもかすかに頷いた。ヤバイ、また泣きそう。

「………ん? ちょっと身なりの良い男が小屋へ近付いていきます。アレが連絡係でしょうか?」

 見張りをしていたキースが私に望遠鏡を渡した。確認して私は断言した。

「そうです……! アイツに間違い有りません」
「よし、じゃあ行くぞ」

 全員が立ち上がった。ルパートが場を仕切った。

「打ち合わせ通り、俺とエンが右手方向から斬り込む。左手にはエリアスさんとマキアが回り込む。挟み撃ちにするぞ」
「ああ」

 身体を屈めてエリアスは、背中の大剣をさやから引き抜いた。分厚い鋼が日光を反射していた。私にはそれが希望の輝きに見えた。

「キースさん、ウィー、魔王様はここで網を張っていてくれ。もしも俺達が取り逃がしたら、連絡係の捕獲は頼んだぞ」

 小屋の前で左右から挟撃きょうげき。脚の速い連絡係が逃走を図るとしたら、建物が無いこちらの方向へ走ってくるだろう。

「任せろチャラ男。だが全員に告ぐ。三下はどーでもいいが、くれぐれも連絡係は殺すなよ」

 これこそが最重要事項だったりする。私達のパーティは戦力強化し過ぎた。士気もべらぼうに高い。調子に乗った誰かのうっかりで、サクッと連絡係が他界してしまうかもしれないのだ。

「俺様は全系統の魔法が使える頼れるナイスガイだが、攻撃に特化しているので回復魔法があまり得意ではないんだ。白も流石に死者の蘇生まではできないだろう?」
「無理ですねぇ。腕や脚の一本くらいなら飛んでも何とか治療できますが、首がもげたらお手上げです」
「そういうことだ。肝に銘じておけよ、斬っていいのは腕と脚まで。首ちょんぱは厳禁だ」

 アンタらが怖いんですけど。

「首は斬らない……首は斬らない……」

 エンがブツブツ繰り返し呟いている。えっ、自己暗示をかけないと駄目なくらい忍者は好戦的なの!?

「行くぞ!」
「おお!」

 一抹の不安が心をよぎったが、戦士達は力強く駆けていった。どうか上手くいきますように。

「へっ?」
「な、何だぁ!?」
「ぎゃ、ぎゃああ殺される!!」 

 チンピラ1~3は突然現れた、一メートル五十センチの大剣を構えて猛スピードで走り寄る大男(勇者様)を見て悲鳴を上げた。その隙に逆方向から音もなく接近していたエンによって、何もできないまま急所に当て身を入れられて気絶した。
 更にエンは「腕は斬ってもOK!」という恐ろしい文言を吐きながら、小屋から火炎瓶を持って出てきたチンピラその4に襲いかかった。

「ひ────っ!?」

 チンピラその4は恐怖で後退し、小屋の壁に自身の頭を強く打ち付けて自滅した。意識を失った彼の手から火炎瓶が落ちたが、地面に当たる前にエンがキャッチした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

処理中です...