ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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新六幕 十日目の先へ(3)

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☆☆☆


 アジトに居たアンダー・ドラゴンの構成員を全員、私達はフィースノーの街まで連行し、王国兵団の詰所へ引き渡してきた。首領と直に会っていた連絡係を捕縛できたことは大手柄だった。
 連絡係は組織本拠地の場所を吐くことを拒むだろうが、おっかない尋問(拷問)道具を持った強面こわもて兵士の皆さんに接待されるのだ、情報提供は時間の問題だろう。

「あとは兵団に任せよう。冒険者ギルドが関わるのはここまでだ」

 ギルドへ戻ったらマスターにそう言われて、私達は任務が完了したことを実感した。

「じゃあもう大丈夫なんですね? 俺達死ななくて済むんですね? レンフォード!! これからみんなで飲みに繰り出しましょうよ!」

 明るいマキアがウェーイとなりかけたが、

「阿保、まだ時間のループの問題が残っている。明日一日何が有るか判らないんだから、体調は万全にしておくべきだ。そもそもおまえはほぼ下戸げこだろうが」

 エンが冷静にさとしてくれた。クナイを構えて「首は斬らない……」と自己暗示をかけていた彼とは別人のようだ。

「エンの言う通りだ。今日明日は大人しくしていろ。特別におまえ達には明日有休をやる。出動も雑務も何もしなくていいからゆっくりしていろ」
「えっ!?」
「有休!?」

 マスターの言葉に過剰反応したのは私とルパートだった。

「有給休暇だな? くれるんだな? マジでいいんだな?」
「そんなに念を押すなよ。まるでウチがブラック企業みたいに聞こえるだろ?」
「まんまブラックじゃねーか! ここ数年間、有休消化できたのは2~3日だけだろう!?」
「普通の休みは一週間に一度はくれてやってるだろーがよ!」
「足りねえ! それに金が欲しい!」

 マキアが遠慮がちに尋ねた。

「あの……有給休暇って、冒険者ギルドでは年間で十二日貰えますよね? それに週休二日制では?」
「ウチの支部でそれは無理なの。慢性的な人手不足で」
「そーなんだよ、だから仕方がねーんだよ」
「それを何とかするのがマスターの仕事だろうが!」
「そもそもおまえとセスが新人いびりするのが悪いんだ! 新しく入ってもすぐに辞めちまう!」
「アイツらはウィーのシャワー覗こうとしたり、下着盗ろうとした犯罪者だから!!」
「ぎゃー! まだギルドにお客さん居ます! そんなこと大声で言わないで!!」
「待て、それは初耳だぞ。未遂だろうな!? 手口は!?」
「エリアスさんは、そんなこと掘り下げなくていいですから!」

 ギルドに来ている冒険者達が騒ぐ私達を遠巻きに見ていた。時刻は16時を回ったところだ。
 受付嬢であるリリアナが、カウンター越しに私を気遣った。

「ウィーお姉様、お疲れなのに大丈夫ですかぁ? まぁったく……粗暴な男達はこれだから困るんです。不能になって賢者タイムに入りやがれですよ」

 うん。その発言もマズいんじゃないかな。

「あ、リリアナちゃん、こんにちは!」

 女のコ大好きなマキアが、エロ発言にもめげずにリリアナに話しかけた。

「朝も会ったけど、俺マキアって言います! 良ければ今度一緒にお食事でもどうですか?」
「あ、そういうのやってないんで。それに僕は男なんで」

 一瞬にしてリリアナの仮面をリーベルトは外した。冒険者達には聞こえていなかったようだが、至近距離で衝撃の事実を知らされたマキアはフリーズし、エンも目を見開いた。
 遠慮がちにキースが確認した。

「本当に……男性でしたか」
「はい。黙っていてすみません。あ、キースお兄様はお姉様にグイグイ行かないので好きですよ♡」
「はは……。ありがとうございます」
「もういいから、おまえらとっとと上がれや」

 マスターが片手をパタパタ振って、居住スペースへ行くようにうながした。

「そうですね、部屋へ戻って休みましょう。あ、飲み会は無理として、みんなでゆっくりお喋りしながら夕食会はどうですか?」
「ああ、それはいいな」
「んじゃあ、18時半に食堂に集合ってことで」

 キースの提案にエリアスとルパートが賛同した。私ももちろん賛成だ。今日のミッション成功はみんなで作り上げたんだ。互いをねぎらいたい。

「レクセン支部の二人もそれでいいか?」
「はい。……ほらマキア、しっかりしろ」
「リリアナちゃんが……男。あんなに可愛いのに……」

 エンは固まったままのマキアを引きっていき、他のみんなもゾロゾロ移動した。

(そういえば……)

 いつも茶々を入れてくるアルクナイト。一言も二言も多い彼が、さっきは会話に参加しようとしなかった。どうしたんだろう?
 私は黙ったまま歩く彼の横顔を観察した。
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