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第七師団と合流(4)
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「お姉様はどうして故郷を出ようと思ったんですかぁ?」
「あはははは……。勝手に村の独身男と縁組みされそうになったから逃げてきたの」
乾いた笑いが自然と出た。田舎の悪しき風習だ。
「え、マジ? 無理やり結婚させられそうだったってこと!?」
「貴族みたいだな」
「高貴な血筋とか関係無く、過疎地ではね、単に若い女が少なくて取り合いになるんだよ。あはははは。里帰りしたら即結婚になりそうだから、あれっきり故郷には戻ってないな~」
実際にこちらの生活を教える為に親へ手紙を出したら、独身男性の釣書が何枚も送られてきたよ……。ママン……。
「ひっど~い、お姉様可哀想! でも私も他人事じゃないかも……。親戚が見合いしろって煩いんですよ」
「皆様はリリアナ様に期待なさっているのですよ」
「でもやっぱりぃ、私は生涯を共にするなら、信頼できて心底好きになれた人がいいなぁ」
リリアナは私をチラリと見た。共感して欲しいのね? 任せて!
「その気持ちすっごく解るよ! そりゃ慎重になるよね? だから私もこの歳まで独身なの! 何とかしたいとは日々思ってるんだけど、なかなか上手くいかないよね!!」
「あ……うん、そうですね……」
私の返答に明らかに肩を落としたリリアナ。テンション高くし過ぎて引かれちゃったかな?
「ロックウィーナはまだ若くて綺麗じゃん。焦らなくていいよ」
「ありがと。でも焦らないってのは無理。母からの手紙だと、同い年の幼馴染がもう二人目を出産したって。マキアもあと数年したら解るから。あ、男の人と女の人では違うのかな?」
「いや……、俺も既に焦ってるかも……」
「マキアこそまだ若いじゃない」
「うん……でも」
「本気で恋をしたことが無いから焦るよな、おまえの場合」
エンがまたもや禁句でマキアの心をズバッと抉った。
「!………………」
今回もマキアは唇を結んで横を向いてしまった。せっかく明るく会話ができていたのに~。
私とリリアナ、アスリーが顔を見合わせる中、戦犯のエンは我関せずと本を読んでいた。…………彼も問題有りな気がしてきた。
☆☆☆
体感時間で二時間ほど経っただろうか? 討伐隊の一団は進軍を止めて三十分の休憩を取ることになった。
次の休憩がいつになるか判らない。トイレを済ませることが最重要事項だ。停められた馬車から私達は全員降りた。
(とはいえ、困ったな……)
見渡す限り男・男・男だ。こんな中で用足しなんてできない。でもここで出しておかないと、一時間後くらいに膀胱が限界値を迎えそうだ。ある意味大ピンチ。
「困りごとか? 冒険者ギルドのお嬢さん」
途方に暮れていた私の背後から爽やかな声が響いた。振り返るとそこには輝けるイケオジ……もとい、白銀の鎧を装着したルービック師団長が佇んでいた。
(でえぇっ!?)
飛び退りそうになるのを必死に堪えて、私は深くお辞儀をして名乗った。
「こ、こんにちは。ギルド職員のロックウィーナと申します!」
師団長なんて私にとって雲の遥か上の存在だ。こんな高官と直接話す機会に恵まれるとは思わなかった。
「畏まらなくていい、顔を上げてくれ。何かを探していたようだが、どうした?」
ルパートに聞いていた通り気さくな方のようだ。しかしどうしたものか、適したトイレスポットを探しているとは伝えにくい。
「あの……、こちらの師団に女性兵士の方はいらっしゃいますか?」
「あ……そうか、そうだな。男の中では困ることが有るよな。気づけずにすまなかった」
イケオジは察しが素晴らしく良かった。エリアスに並ぶな。
「あちらに女性兵士が固まっている。付いておいで。顔を繋ごう」
おまけに親切だった。三千余名の兵士達のトップに君臨するお方が、自ら案内役を買って出てくれたのだ。
場は混雑していたが、灰色の鎧を着た一般兵が、白銀の鎧の師団長に道を空けてくれたので、私達はスムーズに目的地まで移動することができた。
「師団長!」
「え、師団長!?」
「全員起立!!」
座って寛いでいた女性兵士達が一斉に直立した。師団全体の中では少人数だが、それでも四十人ほど居た。彼女達は緊張した面持ちで私達を見た。
「楽にしてくれ。こちらは冒険者ギルドのロックウィーナ嬢だ。ギルドからは女性独りだけの参加なので、何かと不便することだろう。休憩中や就寝時はキミ達に混ぜてやってくれ」
「はっ、承知致しました!」
ありがたい。
ルービック師団長は私を振り返ってまた笑顔になった。
「ロックウィーナ嬢」
「あの、どうか呼び捨てになさって下さい」
「そうか。ではロックウィーナ、他に何か聞きたいことは有るか?」
聞きたいこと? そりゃあアンダー・ドラゴンの様子とか壊滅作戦の細かい内容とか知りたいけれど、それを確認するのはルパートの役目だろうし……。
他に尋ねたいこと……、う~んと…………。
うわ、眩しいイケオジがじっと見ている!
「鎧って、着脱が大変じゃないですか?」
緊張のあまり、私の口からは間抜けな質問が飛び出していた。何聞いてんのよ私。いや確かに気になってはいたけどさ、今聞くべきことじゃないよね!?
「……………………」
ルービック師団長はしばし沈黙した後、
「プッ!」
小さく噴き出した。
「うん、大変なんだ。部分鎧ならともかく、私のようなほぼフルアーマーは一人で装着できないからね。手伝ってくれる部下も大変だ」
笑いながら丁寧に答えてくれる師団長。善い人だ。場が和んで女性兵士達も笑顔になった。私は非常に恥ずかしい思いをしたけれども。
「……すみません。素直に作戦内容について伺うべきでした」
「フッ、何故それを聞かなかった?」
「ルパート先ぱ……主任が伺うことだと思ったので。何度も同じ説明を師団長にお願いするのは気が引けました」
「ブハッ!」
今度は大きく師団長が噴き出した。
「あはははは……。勝手に村の独身男と縁組みされそうになったから逃げてきたの」
乾いた笑いが自然と出た。田舎の悪しき風習だ。
「え、マジ? 無理やり結婚させられそうだったってこと!?」
「貴族みたいだな」
「高貴な血筋とか関係無く、過疎地ではね、単に若い女が少なくて取り合いになるんだよ。あはははは。里帰りしたら即結婚になりそうだから、あれっきり故郷には戻ってないな~」
実際にこちらの生活を教える為に親へ手紙を出したら、独身男性の釣書が何枚も送られてきたよ……。ママン……。
「ひっど~い、お姉様可哀想! でも私も他人事じゃないかも……。親戚が見合いしろって煩いんですよ」
「皆様はリリアナ様に期待なさっているのですよ」
「でもやっぱりぃ、私は生涯を共にするなら、信頼できて心底好きになれた人がいいなぁ」
リリアナは私をチラリと見た。共感して欲しいのね? 任せて!
「その気持ちすっごく解るよ! そりゃ慎重になるよね? だから私もこの歳まで独身なの! 何とかしたいとは日々思ってるんだけど、なかなか上手くいかないよね!!」
「あ……うん、そうですね……」
私の返答に明らかに肩を落としたリリアナ。テンション高くし過ぎて引かれちゃったかな?
「ロックウィーナはまだ若くて綺麗じゃん。焦らなくていいよ」
「ありがと。でも焦らないってのは無理。母からの手紙だと、同い年の幼馴染がもう二人目を出産したって。マキアもあと数年したら解るから。あ、男の人と女の人では違うのかな?」
「いや……、俺も既に焦ってるかも……」
「マキアこそまだ若いじゃない」
「うん……でも」
「本気で恋をしたことが無いから焦るよな、おまえの場合」
エンがまたもや禁句でマキアの心をズバッと抉った。
「!………………」
今回もマキアは唇を結んで横を向いてしまった。せっかく明るく会話ができていたのに~。
私とリリアナ、アスリーが顔を見合わせる中、戦犯のエンは我関せずと本を読んでいた。…………彼も問題有りな気がしてきた。
☆☆☆
体感時間で二時間ほど経っただろうか? 討伐隊の一団は進軍を止めて三十分の休憩を取ることになった。
次の休憩がいつになるか判らない。トイレを済ませることが最重要事項だ。停められた馬車から私達は全員降りた。
(とはいえ、困ったな……)
見渡す限り男・男・男だ。こんな中で用足しなんてできない。でもここで出しておかないと、一時間後くらいに膀胱が限界値を迎えそうだ。ある意味大ピンチ。
「困りごとか? 冒険者ギルドのお嬢さん」
途方に暮れていた私の背後から爽やかな声が響いた。振り返るとそこには輝けるイケオジ……もとい、白銀の鎧を装着したルービック師団長が佇んでいた。
(でえぇっ!?)
飛び退りそうになるのを必死に堪えて、私は深くお辞儀をして名乗った。
「こ、こんにちは。ギルド職員のロックウィーナと申します!」
師団長なんて私にとって雲の遥か上の存在だ。こんな高官と直接話す機会に恵まれるとは思わなかった。
「畏まらなくていい、顔を上げてくれ。何かを探していたようだが、どうした?」
ルパートに聞いていた通り気さくな方のようだ。しかしどうしたものか、適したトイレスポットを探しているとは伝えにくい。
「あの……、こちらの師団に女性兵士の方はいらっしゃいますか?」
「あ……そうか、そうだな。男の中では困ることが有るよな。気づけずにすまなかった」
イケオジは察しが素晴らしく良かった。エリアスに並ぶな。
「あちらに女性兵士が固まっている。付いておいで。顔を繋ごう」
おまけに親切だった。三千余名の兵士達のトップに君臨するお方が、自ら案内役を買って出てくれたのだ。
場は混雑していたが、灰色の鎧を着た一般兵が、白銀の鎧の師団長に道を空けてくれたので、私達はスムーズに目的地まで移動することができた。
「師団長!」
「え、師団長!?」
「全員起立!!」
座って寛いでいた女性兵士達が一斉に直立した。師団全体の中では少人数だが、それでも四十人ほど居た。彼女達は緊張した面持ちで私達を見た。
「楽にしてくれ。こちらは冒険者ギルドのロックウィーナ嬢だ。ギルドからは女性独りだけの参加なので、何かと不便することだろう。休憩中や就寝時はキミ達に混ぜてやってくれ」
「はっ、承知致しました!」
ありがたい。
ルービック師団長は私を振り返ってまた笑顔になった。
「ロックウィーナ嬢」
「あの、どうか呼び捨てになさって下さい」
「そうか。ではロックウィーナ、他に何か聞きたいことは有るか?」
聞きたいこと? そりゃあアンダー・ドラゴンの様子とか壊滅作戦の細かい内容とか知りたいけれど、それを確認するのはルパートの役目だろうし……。
他に尋ねたいこと……、う~んと…………。
うわ、眩しいイケオジがじっと見ている!
「鎧って、着脱が大変じゃないですか?」
緊張のあまり、私の口からは間抜けな質問が飛び出していた。何聞いてんのよ私。いや確かに気になってはいたけどさ、今聞くべきことじゃないよね!?
「……………………」
ルービック師団長はしばし沈黙した後、
「プッ!」
小さく噴き出した。
「うん、大変なんだ。部分鎧ならともかく、私のようなほぼフルアーマーは一人で装着できないからね。手伝ってくれる部下も大変だ」
笑いながら丁寧に答えてくれる師団長。善い人だ。場が和んで女性兵士達も笑顔になった。私は非常に恥ずかしい思いをしたけれども。
「……すみません。素直に作戦内容について伺うべきでした」
「フッ、何故それを聞かなかった?」
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