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合宿中は恋のフラグが乱立する!?(8)
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☆☆☆
昼休憩だ。隊は荒野で進軍を止めた。三時間ほど馬車で揺られて固まった身体をほぐしながら、ルパート達と合流して昼食を摂った。
ルパートに会うのは緊張したが、他にもメンバーが居たので特に何も起こらなかった。良いのか悪いのか。
「小娘、俺に逢えなくて一日千秋の思いで過ごしているのだろう? 可哀想に」
代わりに魔王が世迷言を吐いてきたが華麗にスルーした。
昼食後は女性兵士エリアでトイレを済ませた。本当、彼女達が居てくれて助かっている。
「あれ、マキア」
馬車へ戻る途中でマキアと偶然に出会った。彼も用足しかと一瞬思ったが、男性ならわざわざ遠くへ行かなくても事足りるよね。
「ロックウィーナも散歩?」
「まぁね」
私はトイレだったのだが話を合わせた。そうか、彼は散歩していたのね。
「座りっぱなしで腰が痛くなるよな。兵士さん達は馬に直接乗ったり、乗り心地が悪い荷馬車が大半だから俺らはまだ恵まれてるけど」
「だね。でも私も身体がキツイよ。思いっ切り訓練場で身体を動かしたいなぁ」
「はは、ロックウィーナは武闘派だもんな。あ、悪い意味で言ってるんじゃないから!」
マキアが何故か慌て出した。
「……気を悪くしてない? 女の人は逞しいとか言われるの嫌がるからさ」
「ああ、そういう人も居るけど私には褒め言葉だよ。伊達に出動班に居ないって」
「あはは、キミはさっぱりしてるよね」
「そんなことないよ? 失恋を六年間も引き摺ったもん」
「そうなの!? 最後はどうケリを付けた!?」
「文字通り蹴りで」
私はその場で回し蹴りを披露した。
「うわ、スゲェ」
前の周回でムーンサルトキックをルパートにかわされたのは悔しかった。安定しやすいサマーソルトにするべきだったか。その鬱憤を連絡係に叩き込んだからいいけどさ。
「やっぱキミはさっぱりしてるよ。俺とは違う」
マキアは笑ったが、何となく自嘲めいていた。
「……マキア、どうかしたの?」
「うん……」
マキアは立ち止まって目線を足元に落とした。
「俺は駄目なんだ。いっつもハッキリしない態度を取っちゃってる」
「そんなことは無いでしょう」
マキアは快活な青年というイメージだ。
「ううん。今まで付き合った女のコ全員に言われた。あなたは本音で私と向き合っていないって」
「………………」
「昨日エンが言った通りなんだ。俺が迂闊に相手を褒めてその気にさせて、それで付き合うことになるんだけどさ、いつも上手くいかない……」
「マキアは相手を、ちゃんと好きだった?」
下向きのマキアはつらそうな表情をしていた。
「素敵なコだと思った。だから褒めた。でも告白された時は、まだ恋をする前だった」
この点でマキアを責める気は無い。相手を知る為にお試しで交際を始めるカップルは大勢居る。
「付き合っていく内に、もっと好きになれると思ったんだ。実際にそうだったよ? 少しずつ気持ちは高まっていった。でもね、それでもね、相手との間に温度差が出ちゃうんだ」
「それはまぁ、そうだね。相手は大好きな状態でスタートしているのに、マキアはゆっくり好きになっていく訳だから。でもそれで怒るのは相手が悪くない?」
「いや、俺が悪いんだ。付き合う前に褒めてたからさ、向こうは俺も大好き状態でスタートしたと思ったんだよ。それが違った訳だから」
ああ、そうか。
「マキアは誤解させたことに罪悪感を感じて、相手が望む恋人を演じていたんじゃない?」
「!…………」
彼は唇を結んだ。図星か。これで「本音で向き合っていない」と繋がった。ただ相手に合わせていただけだったんだ。
「それは悪手だよ」
「うん……」
マキアは更に項垂れた。
「俺って、ホント最低。いい加減でダメダメなんだ」
「それは違う」
「違わないよ」
「違う。あなたは決死の覚悟で、私とキース先輩を助けてくれた。いい加減でも駄目でもない」
「え?」
記憶の無いマキアは怪訝そうに顔を上げた。しかしすぐに、私がかつて説明して聞かせたことを思い出した。
「……そうだった。俺は前の周回で自爆していたんだったね」
「ええ……」
私は下げていた両手に握りこぶしを作った。私にとってはまだ十数日前のつらい記憶。目の前の友達が死んでしまったのだ。
「自爆するあなたは、凄く凄く熱かったと思う。離れていた私も空気に焼かれそうになった。あなたが道連れに掴んでいた連絡係の男は、半狂乱になって暴れていたもの。それでもあなたは呪文を唱え続けた」
「………………。きっと俺は自棄になってたんだよ。その前に連絡係から剣をぶっ刺されてたんだよね? だからさ、どうせ死ぬならって……」
「ううん、死ぬならもっと楽な方法が有ったはず。でもあなたは私達を逃がす為に、自爆することを選んだんだよ。熱かったろうに、苦しかったろうに……」
「ロックウィーナ!? 泣かないで」
悔しさで涙が零れた。あの時何もできず、護られているだけだった私。
「あなたは最後にレンフォードって叫んだ。気持ちを最大限に高める為に。そしてあなたは……あなたは…………」
言葉が詰まって出てこない。息が苦しい。マキアが私を抱きしめた。
「ごめん。もう自分を卑下しないよ。だからロックウィーナ、キミはそんな過去を思い出さないで」
マキアの言葉も震えていた。記憶は無くても、彼は自分が焼かれる夢を見ていたと言っていた。
「マキア……」
「……うん?」
「もう、悪夢は見ていない…………?」
「大丈夫、大丈夫だよ。連絡係を捕らえた日から見てない」
「そっか。良かった……」
「………………」
私を抱きしめるマキアの腕に力が込められ、私は彼の胸の中でしばし泣いた。
昼休憩だ。隊は荒野で進軍を止めた。三時間ほど馬車で揺られて固まった身体をほぐしながら、ルパート達と合流して昼食を摂った。
ルパートに会うのは緊張したが、他にもメンバーが居たので特に何も起こらなかった。良いのか悪いのか。
「小娘、俺に逢えなくて一日千秋の思いで過ごしているのだろう? 可哀想に」
代わりに魔王が世迷言を吐いてきたが華麗にスルーした。
昼食後は女性兵士エリアでトイレを済ませた。本当、彼女達が居てくれて助かっている。
「あれ、マキア」
馬車へ戻る途中でマキアと偶然に出会った。彼も用足しかと一瞬思ったが、男性ならわざわざ遠くへ行かなくても事足りるよね。
「ロックウィーナも散歩?」
「まぁね」
私はトイレだったのだが話を合わせた。そうか、彼は散歩していたのね。
「座りっぱなしで腰が痛くなるよな。兵士さん達は馬に直接乗ったり、乗り心地が悪い荷馬車が大半だから俺らはまだ恵まれてるけど」
「だね。でも私も身体がキツイよ。思いっ切り訓練場で身体を動かしたいなぁ」
「はは、ロックウィーナは武闘派だもんな。あ、悪い意味で言ってるんじゃないから!」
マキアが何故か慌て出した。
「……気を悪くしてない? 女の人は逞しいとか言われるの嫌がるからさ」
「ああ、そういう人も居るけど私には褒め言葉だよ。伊達に出動班に居ないって」
「あはは、キミはさっぱりしてるよね」
「そんなことないよ? 失恋を六年間も引き摺ったもん」
「そうなの!? 最後はどうケリを付けた!?」
「文字通り蹴りで」
私はその場で回し蹴りを披露した。
「うわ、スゲェ」
前の周回でムーンサルトキックをルパートにかわされたのは悔しかった。安定しやすいサマーソルトにするべきだったか。その鬱憤を連絡係に叩き込んだからいいけどさ。
「やっぱキミはさっぱりしてるよ。俺とは違う」
マキアは笑ったが、何となく自嘲めいていた。
「……マキア、どうかしたの?」
「うん……」
マキアは立ち止まって目線を足元に落とした。
「俺は駄目なんだ。いっつもハッキリしない態度を取っちゃってる」
「そんなことは無いでしょう」
マキアは快活な青年というイメージだ。
「ううん。今まで付き合った女のコ全員に言われた。あなたは本音で私と向き合っていないって」
「………………」
「昨日エンが言った通りなんだ。俺が迂闊に相手を褒めてその気にさせて、それで付き合うことになるんだけどさ、いつも上手くいかない……」
「マキアは相手を、ちゃんと好きだった?」
下向きのマキアはつらそうな表情をしていた。
「素敵なコだと思った。だから褒めた。でも告白された時は、まだ恋をする前だった」
この点でマキアを責める気は無い。相手を知る為にお試しで交際を始めるカップルは大勢居る。
「付き合っていく内に、もっと好きになれると思ったんだ。実際にそうだったよ? 少しずつ気持ちは高まっていった。でもね、それでもね、相手との間に温度差が出ちゃうんだ」
「それはまぁ、そうだね。相手は大好きな状態でスタートしているのに、マキアはゆっくり好きになっていく訳だから。でもそれで怒るのは相手が悪くない?」
「いや、俺が悪いんだ。付き合う前に褒めてたからさ、向こうは俺も大好き状態でスタートしたと思ったんだよ。それが違った訳だから」
ああ、そうか。
「マキアは誤解させたことに罪悪感を感じて、相手が望む恋人を演じていたんじゃない?」
「!…………」
彼は唇を結んだ。図星か。これで「本音で向き合っていない」と繋がった。ただ相手に合わせていただけだったんだ。
「それは悪手だよ」
「うん……」
マキアは更に項垂れた。
「俺って、ホント最低。いい加減でダメダメなんだ」
「それは違う」
「違わないよ」
「違う。あなたは決死の覚悟で、私とキース先輩を助けてくれた。いい加減でも駄目でもない」
「え?」
記憶の無いマキアは怪訝そうに顔を上げた。しかしすぐに、私がかつて説明して聞かせたことを思い出した。
「……そうだった。俺は前の周回で自爆していたんだったね」
「ええ……」
私は下げていた両手に握りこぶしを作った。私にとってはまだ十数日前のつらい記憶。目の前の友達が死んでしまったのだ。
「自爆するあなたは、凄く凄く熱かったと思う。離れていた私も空気に焼かれそうになった。あなたが道連れに掴んでいた連絡係の男は、半狂乱になって暴れていたもの。それでもあなたは呪文を唱え続けた」
「………………。きっと俺は自棄になってたんだよ。その前に連絡係から剣をぶっ刺されてたんだよね? だからさ、どうせ死ぬならって……」
「ううん、死ぬならもっと楽な方法が有ったはず。でもあなたは私達を逃がす為に、自爆することを選んだんだよ。熱かったろうに、苦しかったろうに……」
「ロックウィーナ!? 泣かないで」
悔しさで涙が零れた。あの時何もできず、護られているだけだった私。
「あなたは最後にレンフォードって叫んだ。気持ちを最大限に高める為に。そしてあなたは……あなたは…………」
言葉が詰まって出てこない。息が苦しい。マキアが私を抱きしめた。
「ごめん。もう自分を卑下しないよ。だからロックウィーナ、キミはそんな過去を思い出さないで」
マキアの言葉も震えていた。記憶は無くても、彼は自分が焼かれる夢を見ていたと言っていた。
「マキア……」
「……うん?」
「もう、悪夢は見ていない…………?」
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