求め続けたモノ

猫谷 一禾

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はじまり

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 ここは〖きよの国〗四季がある国。
春、夏、秋、冬と季節が移ろう国。
水と火が豊富な国。

世の中が全て人の手で賄われる世界。故にカラクリが異様に発達した世界。


 カナゲは頼まれている仕事に懸命に向き合っていた。少年から青年に変わろうとしている姿は成長を感じられ、見る者を微笑ましい気分にさせる。しかし、その見た目とは裏腹にカナゲは既に歳が19だった。体の成長は止まったのに、何時までも幼く見られてしまう。背は小さい訳ではなかったが線が細く頼りなげに見えてしまう。


 カナゲには家族がいなかった。5年前に家が強盗に合ったのだ。夜中、両親の部屋に入った強盗はそのまま両親を殺害した。別の部屋で寝ていたカナゲは1人助かった。その時14歳、両親が突然居なくなり途方にくれていた。家も家賃が払えず追い出されてしまった。家を追われたことは14歳の少年には人生を悲観するに当然の出来事だった。街を彷徨いまずは頼れる人を探す。しかし、カナゲの家族には頼れるような人はいなかった。
カナゲの心の裏側にそれでも家を出られてどこかほっとしている部分もあった。両親が亡くなった場所で生活するのは辛いものがあったからだ。


あてもなく彷徨う、絶望が背後から近付いてくる。道端で生活する人が居ることは知っている、いよいよ自分もその仲間入りかと思っていた。そんな時に大きなメイン通りから横に入った小道で、盛大に荷物をぶちまけている子供と出会った。あまりの惨状で手伝わずにはいられなかった。


〖ありがとう、家に来てお礼がしたい〗


この一言でカナゲの生活が一変した。
連れていかれた家は、裕福な家庭ではなかった。どちらかと言うと貧しい家庭であった。それでも汚れて疲弊しているカナゲに事情を訪ねて家に招き入れてくれたのだ。


カナゲに新しい家族が出来た瞬間だった。


貧しい家庭は仕事をしなければ食べていけない。カナゲは働き手として恩返しがしたかった。
カナゲを受け入れてくれた家族は父親、母親、子供が3人。どの子供もカナゲより年下であった。


俺が1番戦力になる、頑張ろう!


この思いで、多少無理をしながら頼まれた仕事をこなしていた。少しでも助けになれば、と少しでもお金を稼げるように、と。

「カナ兄ちゃん!」
「ん?なんだ、サイ」
「えとね~どーしても上手く編めないんだよ」
「あぁ…あみ籠か。教えようか?」
「えー今日だけ、今日だけ代わりにやって~。明日、明日からちゃんとやるから!」
「えぇ~……もぅ…しょうが無いなぁ」

カナゲはひとりっ子だった為、嬉しかった。特にこの甘え上手な次男サイは要領良く甘えて来ていると分かっても頼みを聞いてしまっていた。

「ありがとうーカナ兄ちゃん!イツ兄ちゃんだったら絶対に駄目だって言うんだよ」

この家族は長男のイツ、長女のココ、次男のサイがいた。10歳、8歳、6歳で長男のイツとは4歳差であった。14歳のカナゲからしたら6歳のサイは本当に可愛い弟で何でもしてやりたくなってしまうのだった。

「イツはキチンとしているから…俺はイツには頭が上がらないから……イツの言うこと聞いてサイにはあみ籠頑張ってもらわないとダメかな?」
「わぁ!!嘘嘘、嘘だよーイツ兄ちゃんだって、大目に見てくれる時あるよー」
「あはは……」

幸せで、幸せで……両親を失った時には、家を追い出され時には、こんなに笑える日が来るとは思っていなかった。
いつまでもいつまでも、この幸せが続くと思っていた。物語の最後のように、めでたしめでたし、と締めくくられるように。


カナゲの幸せは5年続いた。最早当たり前の生活の中、その事件は起きてしまった。


ガターン

『わーっわーっ』
『貴様~~』

家の中でいつものように仕事のひとつ、あみ籠を作っていた時、家の外から騒ぎが聞こえてきた。

「なんだろう?」

一緒に作業をしていた長女のココと顔を見合せ外に出てみる。1歩外に出てみると、そこには信じられない光景が展開されていた。

「申し訳ありません!申し訳ありません!」
「謝って済む問題だとでも?」
「ひっ……許して下さい。ごめんなさい」

家の外、目の前の通りの真ん中では縮こまって両手と頭を地面につけて謝っている家族の父親と、長男のイツ、次男のサイの3人だった。

「やっなに……」

青い顔をしてガタガタと震えるココがカナゲに寄り添う。信じられなかった、目の前の光景が受け入れがたかった。

「カナ兄ちゃん……」

縋るようにカナゲの袖を握って見上げてくるココ。
驚愕のあまり固まってしまったカナゲであったが、ここで呆然とただ見ているだけなど出来なかった。足を踏み出そうとした時、丁度家から出てきた母親がカナゲの背中を押した。

「お願い、一緒に謝って!」
「っ……はい!」

つんのめる形で前に出たカナゲはその勢いのまま3人の所まで行った。

「も、申し訳ありません!」

一緒になって膝をつき、両手と頭を地面につけて謝る。

「……貴様は誰だ……なんの関係がある」
「あ、この者たちと…一緒に住んでいます。家族同然です」
「カナ兄ちゃん……」

次男のサイが涙目で横を向く。父親が先頭で、後ろに2人がくっ付くようにして固まっていた。カナゲはその横に一緒に縮こまった。

「訳もわからず謝るのか、貴様は……」
「……家族同然の方たちが謝っています。俺も一緒に謝るのは当然です!何をしたかは分かりません…しかし、許して頂きたいのです!」
「はっ……貴様1人が出てきたところで変わらん。この杖に傷をつけたのだ、死を持って償え」
「えっ!」

思わず顔を上げてしまった。
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