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動き出す運命
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制服に着替えると、見慣れたゲーム姿のヒロインが鏡の前に存在していた。
「…本物だ」
これから本格的にゲームのような出来事が本当に起こるのだろうか?
ゲームをプレイしていた時は選択肢の中から正解を選んで行動したが、現実ではそんな選択肢は存在しない。
攻略対象の好感度を上げる模範的な答えを知っているが、本当にそんなことをして良いんだろうか?
攻略対象には全員婚約者がいる。
貴族社会では男性に非があったとしても女性側に傷がつき、その後はまともな結婚は難しくなり後妻か訳あり貴族にしか嫁げなくなるというのが定番だ。
これが現実だとすれば、私は見ず知らずの誰かを不幸にして恋愛を行うことになる…そんなの絶対に嫌っ。私は、ゲームの選択肢通りには動かない
そう心に誓い、男爵が用意してくれた馬車で学園に向かう。
男爵位とはいえ貴族なので、誘拐の恐れがあるので馬車で通うようにと強く約束させられた。
元平民の私にここまでしてくれる男爵夫妻は、本当に良い人なんだと思う。
私はここまでしてくれる男爵家のためにも、不名誉な噂が立たないよう真面目に過ごすことを決めた。
私の気持ちが決まると馬車も止まり、学園に着いたことを知らせた。
扉を開ければ目の前には恋愛ゲームの舞台となる学園があった。
「はぁ…凄い…本物だ…」
圧倒される建物。
ゲームとして作り込まれているとはいえ、実物の建物に暫く立ち尽くしていた。
登校時間とはいえ次第に生徒も疎らになりだしたので、急いで人々の流れに乗りクラス表を確認した。緊張しながら自分の…エレナ・ワンダーソンの名前を探せばゲーム通り、私はBクラスだった。
同じクラスには攻略対象である王子の側近、騎士のサリモン・フィルデガードがいる。
彼は騎士としての誇りが高く余念がない。伯爵家嫡男で同格の婚約者もいる。
二人の関係は甘いものではないが格別悪いということもない。
攻略は簡単な方で、訓練場を覗き褒めて一緒にいる時間を増やすだけで好感度が高まる人物。初心者はまず彼から攻略したらいいと言われているくらい、難易度は低い。
彼の事を知っているからと言って攻略しようとは思わない。私の行動で傷つく人がいるから。他人の幸せを壊す人間は他人に幸せを壊されても文句は言えない、と私は思う。なので二人の関係はどうであれ、婚約者のいる彼に近づくつもりはない。
「…きゃっ」
しまった。
廊下を考え事をしながら歩いていると、曲がり角で反対から来た人にぶつかってしまった。まるで漫画のような状況だった。
「大丈夫か?」
気付いた時には男性の腕の中にいた。
「ぁっすみません…」
男性の腕の中から離れ相手を確認すると、見覚えのある人間に驚いた。
「君は…」
「…わ…私…は…その…ワンダーソン男爵の養女となりました…エレナ…ワンダーソン…です」
相手に頭を下げ床を見つめた。
記憶をフル回転させるも、目の前の男性は攻略対象一番人気の王子にしか見えなかった。
そうだ…確か…ゲームでは学園内で迷子になっているヒロインを王子に助けてもらうという出会いだった。
私は偶然にもゲーム通り、王子ルートの出会いイベントを起こしてしまった。
「…やはり、私はクリストフ・トルニダード。君の事は報告を受けているよ、何かあればいつでも相談に乗る」
名前だけでなくフルネームを名乗られてしまった…
この国に住んでいながら国の名前を知らなかったという言い訳は出来ないし、国と同じ名前であれば誰でも気付く…気付かないわけがない。
もしこれで「知らなかった」と口にした場合、鈍感ヒロインではなく、ただのバ…なので、「相手が王子だとは知りませんでした」という言い訳が通用しなくなってしまった。
「…ありがとうございます」
それ以上の接触はなかったが、私の意思とは別に運命は動き出してしまったといえる。
王子と別れ一人教室に向かうその間、ずっと王子のことを考えていた。恋愛的な意味ではない…ないが、ぶっちゃけ一番人気なだけあって格好良かった。
「…本物だ」
これから本格的にゲームのような出来事が本当に起こるのだろうか?
ゲームをプレイしていた時は選択肢の中から正解を選んで行動したが、現実ではそんな選択肢は存在しない。
攻略対象の好感度を上げる模範的な答えを知っているが、本当にそんなことをして良いんだろうか?
攻略対象には全員婚約者がいる。
貴族社会では男性に非があったとしても女性側に傷がつき、その後はまともな結婚は難しくなり後妻か訳あり貴族にしか嫁げなくなるというのが定番だ。
これが現実だとすれば、私は見ず知らずの誰かを不幸にして恋愛を行うことになる…そんなの絶対に嫌っ。私は、ゲームの選択肢通りには動かない
そう心に誓い、男爵が用意してくれた馬車で学園に向かう。
男爵位とはいえ貴族なので、誘拐の恐れがあるので馬車で通うようにと強く約束させられた。
元平民の私にここまでしてくれる男爵夫妻は、本当に良い人なんだと思う。
私はここまでしてくれる男爵家のためにも、不名誉な噂が立たないよう真面目に過ごすことを決めた。
私の気持ちが決まると馬車も止まり、学園に着いたことを知らせた。
扉を開ければ目の前には恋愛ゲームの舞台となる学園があった。
「はぁ…凄い…本物だ…」
圧倒される建物。
ゲームとして作り込まれているとはいえ、実物の建物に暫く立ち尽くしていた。
登校時間とはいえ次第に生徒も疎らになりだしたので、急いで人々の流れに乗りクラス表を確認した。緊張しながら自分の…エレナ・ワンダーソンの名前を探せばゲーム通り、私はBクラスだった。
同じクラスには攻略対象である王子の側近、騎士のサリモン・フィルデガードがいる。
彼は騎士としての誇りが高く余念がない。伯爵家嫡男で同格の婚約者もいる。
二人の関係は甘いものではないが格別悪いということもない。
攻略は簡単な方で、訓練場を覗き褒めて一緒にいる時間を増やすだけで好感度が高まる人物。初心者はまず彼から攻略したらいいと言われているくらい、難易度は低い。
彼の事を知っているからと言って攻略しようとは思わない。私の行動で傷つく人がいるから。他人の幸せを壊す人間は他人に幸せを壊されても文句は言えない、と私は思う。なので二人の関係はどうであれ、婚約者のいる彼に近づくつもりはない。
「…きゃっ」
しまった。
廊下を考え事をしながら歩いていると、曲がり角で反対から来た人にぶつかってしまった。まるで漫画のような状況だった。
「大丈夫か?」
気付いた時には男性の腕の中にいた。
「ぁっすみません…」
男性の腕の中から離れ相手を確認すると、見覚えのある人間に驚いた。
「君は…」
「…わ…私…は…その…ワンダーソン男爵の養女となりました…エレナ…ワンダーソン…です」
相手に頭を下げ床を見つめた。
記憶をフル回転させるも、目の前の男性は攻略対象一番人気の王子にしか見えなかった。
そうだ…確か…ゲームでは学園内で迷子になっているヒロインを王子に助けてもらうという出会いだった。
私は偶然にもゲーム通り、王子ルートの出会いイベントを起こしてしまった。
「…やはり、私はクリストフ・トルニダード。君の事は報告を受けているよ、何かあればいつでも相談に乗る」
名前だけでなくフルネームを名乗られてしまった…
この国に住んでいながら国の名前を知らなかったという言い訳は出来ないし、国と同じ名前であれば誰でも気付く…気付かないわけがない。
もしこれで「知らなかった」と口にした場合、鈍感ヒロインではなく、ただのバ…なので、「相手が王子だとは知りませんでした」という言い訳が通用しなくなってしまった。
「…ありがとうございます」
それ以上の接触はなかったが、私の意思とは別に運命は動き出してしまったといえる。
王子と別れ一人教室に向かうその間、ずっと王子のことを考えていた。恋愛的な意味ではない…ないが、ぶっちゃけ一番人気なだけあって格好良かった。
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