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あれから夫人を筆頭に様々な人から、根掘り葉掘り質問された。
魔力のことから養女となった経緯に、両親のこと。
目の前の集団と話しているが、遠巻きに見ている人間も聞き耳をたてているのに気付き、丁寧に失礼のないように事実を口にした。
貴婦人達は私が平民で、森の中で生活をしていたことを知ると扇子で口許を隠しながら隣の人達と噂話をしだす。
聞こえはしないが、私に対して良くない感情を抱いているのは彼らの目が物語っていた。
どのくらい時間が経ったのかわからない質問責めにもようやく終わりを迎えたのは、外が騒がしくなり男性達が帰って来た時だった。
誰がどんな大物を捉えたのか、夫人達は私のことなど忘れ一気に男性達へと意識が向かった。
「貴方」
この人声を聞いただけで、全身を捉えられたように体が強ばる。
「はひっ」
緊張して変な声になってしまった。
ゆっくり振り向くとそこにいたのは予想通りのジョバルディー公爵令嬢がいた。先ほどのキツイ言葉は私を守るためとフィリップス子爵令嬢に聞かされるも、実際はわからない。
判断するには材料が少なすぎる。
なので今回何故私は呼び止められ、何について話があるのかで公爵令嬢が悪役なのかどうかを判断することにした。
「正直に話すのは素晴らしいことよ、だけど貴方は既に貴族なのだから過去の事を事細かに話す必要はないわ。貴族の質問は上手に交わし、養女として受け入れてくれた男爵の名誉を傷つけることのないようにしなさい」
「…はい」
ジョバルディー公爵令嬢はそれだけ言って去って行った。
平民を軽視する貴族に、過去平民だった事を話す必要はないと言われたように感じた。
悪役令嬢は悪い人ではないのかもしれない。
そんなことを考えていると、いつの間にか最後の一人となりテントを後にした。
外に出ると三箇所に人の群れができていた。
獲物を囲む人達と、狩りで興奮が収まらない男性達、そしてクイーンになりたい女性達。
私は少し離れた場所で、これ以上話題に上がらないようにした。
今回の勝者はサリモン・フィルデガード、彼はクリストフ王子の側近の一人で攻略対象の一人。
護衛を任されている人物だが、狩猟などでは王子より存在を発揮する。
猪突猛進な所もあり、勝負事になると全力で挑み王子に勝つこともしばしば…
それでも王子が傍に置くのは、彼が直球な性格で王族以外に寝返ることがないと信頼しているからだ。
そんな彼が獲物を贈った人物、今回のクイーンは彼の婚約者であるエスメラルダ・ナターシャル伯爵令嬢。
サリモンを選んだ時のライバル令嬢である。
ゲーム中の彼女は私に強く当たることはなく、婚約者にしつこいくらい理由を尋ねているのが印象的だった。
サリモンは堅っ苦しい話を嫌い、そんな婚約者を煩わしく思っているように見えた。
彼はいつも単純明快な人だ。
彼がどれだけの量を狩ったのか気になり確認すると、四本の白い…フェレット?と鹿を一頭に熊も一頭仕留めていた。
大抵の人は小動物三匹だったり大物一頭を仕留めることができれば充分なところ、彼は大物二頭に小動物四…ん?三?
仕留められた獲物をよく見ると、真っ二つになったフェレットだった。
狩猟は基本弓矢で行うものだと思っていたが、サリモンは剣で仕留めるのを得意とする。
素早いフェレットを剣で真っ二つに出来てしまうのは、彼が並大抵の騎士ではないと判断できる。
そんなサリモンにも常に競っている怪力の男がいた。
彼は常にサリモンと良い勝負をして今回こそはと気合いをいれていたが、結果は惨敗。
小動物を四匹捕らえ大物を狙っていたところ、獣の返り血が目に飛び視力が回復するのに時間が掛かり後半はまともな狩猟が出来なかった。
大物も逃がしてしまったとか、私の知らないところで狩猟大会には様々なドラマが生まれていた。
そして、今回の狩猟大会優勝者とクイーンが発表されると今度は捕らえた獲物の料理が始まる。
収穫された全ての獲物を一ヶ所に集めると、獲物の塔が出来ていた。
多くのテントがありながら一つのテントに集まっていたのは、テント毎に用途が違っていたことを知った。
貴族の休憩場以外のテントは動物の皮を剥ぎ、更に別のテントでは調理を行う場、騎士専用に医療班と様々だ。
狩猟大会は獲物を捕らえて終わりではなく、その後この場にいる貴族達と共に食事をするまでが大会らしい。
魔力のことから養女となった経緯に、両親のこと。
目の前の集団と話しているが、遠巻きに見ている人間も聞き耳をたてているのに気付き、丁寧に失礼のないように事実を口にした。
貴婦人達は私が平民で、森の中で生活をしていたことを知ると扇子で口許を隠しながら隣の人達と噂話をしだす。
聞こえはしないが、私に対して良くない感情を抱いているのは彼らの目が物語っていた。
どのくらい時間が経ったのかわからない質問責めにもようやく終わりを迎えたのは、外が騒がしくなり男性達が帰って来た時だった。
誰がどんな大物を捉えたのか、夫人達は私のことなど忘れ一気に男性達へと意識が向かった。
「貴方」
この人声を聞いただけで、全身を捉えられたように体が強ばる。
「はひっ」
緊張して変な声になってしまった。
ゆっくり振り向くとそこにいたのは予想通りのジョバルディー公爵令嬢がいた。先ほどのキツイ言葉は私を守るためとフィリップス子爵令嬢に聞かされるも、実際はわからない。
判断するには材料が少なすぎる。
なので今回何故私は呼び止められ、何について話があるのかで公爵令嬢が悪役なのかどうかを判断することにした。
「正直に話すのは素晴らしいことよ、だけど貴方は既に貴族なのだから過去の事を事細かに話す必要はないわ。貴族の質問は上手に交わし、養女として受け入れてくれた男爵の名誉を傷つけることのないようにしなさい」
「…はい」
ジョバルディー公爵令嬢はそれだけ言って去って行った。
平民を軽視する貴族に、過去平民だった事を話す必要はないと言われたように感じた。
悪役令嬢は悪い人ではないのかもしれない。
そんなことを考えていると、いつの間にか最後の一人となりテントを後にした。
外に出ると三箇所に人の群れができていた。
獲物を囲む人達と、狩りで興奮が収まらない男性達、そしてクイーンになりたい女性達。
私は少し離れた場所で、これ以上話題に上がらないようにした。
今回の勝者はサリモン・フィルデガード、彼はクリストフ王子の側近の一人で攻略対象の一人。
護衛を任されている人物だが、狩猟などでは王子より存在を発揮する。
猪突猛進な所もあり、勝負事になると全力で挑み王子に勝つこともしばしば…
それでも王子が傍に置くのは、彼が直球な性格で王族以外に寝返ることがないと信頼しているからだ。
そんな彼が獲物を贈った人物、今回のクイーンは彼の婚約者であるエスメラルダ・ナターシャル伯爵令嬢。
サリモンを選んだ時のライバル令嬢である。
ゲーム中の彼女は私に強く当たることはなく、婚約者にしつこいくらい理由を尋ねているのが印象的だった。
サリモンは堅っ苦しい話を嫌い、そんな婚約者を煩わしく思っているように見えた。
彼はいつも単純明快な人だ。
彼がどれだけの量を狩ったのか気になり確認すると、四本の白い…フェレット?と鹿を一頭に熊も一頭仕留めていた。
大抵の人は小動物三匹だったり大物一頭を仕留めることができれば充分なところ、彼は大物二頭に小動物四…ん?三?
仕留められた獲物をよく見ると、真っ二つになったフェレットだった。
狩猟は基本弓矢で行うものだと思っていたが、サリモンは剣で仕留めるのを得意とする。
素早いフェレットを剣で真っ二つに出来てしまうのは、彼が並大抵の騎士ではないと判断できる。
そんなサリモンにも常に競っている怪力の男がいた。
彼は常にサリモンと良い勝負をして今回こそはと気合いをいれていたが、結果は惨敗。
小動物を四匹捕らえ大物を狙っていたところ、獣の返り血が目に飛び視力が回復するのに時間が掛かり後半はまともな狩猟が出来なかった。
大物も逃がしてしまったとか、私の知らないところで狩猟大会には様々なドラマが生まれていた。
そして、今回の狩猟大会優勝者とクイーンが発表されると今度は捕らえた獲物の料理が始まる。
収穫された全ての獲物を一ヶ所に集めると、獲物の塔が出来ていた。
多くのテントがありながら一つのテントに集まっていたのは、テント毎に用途が違っていたことを知った。
貴族の休憩場以外のテントは動物の皮を剥ぎ、更に別のテントでは調理を行う場、騎士専用に医療班と様々だ。
狩猟大会は獲物を捕らえて終わりではなく、その後この場にいる貴族達と共に食事をするまでが大会らしい。
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