18 / 52
ゲームに縛られる必要はない
しおりを挟む
狩猟大会の翌日からは、男爵から充分に休養するようにと言われた。それは、学園をしばらく休みなさいという意味だった。いつまで休めば良いのかわからないが、男爵の許可が得られるまで私は屋敷から出ることなく大人しくしていた。
その間、ゲームを思い出しこれからのことを考える。
物語は筋書き通りに進み、私が選択肢を変えても起こることは同じなんだと思い知らされた。
きっと今頃男爵には王族から召喚命令の手紙が届き、そしてそこには私の名前も書かれているはず。貴族になったばかりの令嬢を王宮に召還する事は滅多になく、そこには何らかの意図がある。
今回は、狩猟大会で見せた能力が本当に私によるものなのかを確かめる為だ。そして、その力は聖女なのかを確認させられる。
王族からの要請を男爵が断るという選択肢は存在せず、私は言われるがまま王宮に足を踏み入れるのだろう。
そして、ここから本当の恋愛ゲームが動き出す。
今後の事を考えていれば、案の定使用人に男爵の執務室へと向かうよう呼ばれた。
こんこんこん
「エレナです」
「あぁ、入りなさい」
執務室に入ると、テーブルの上に置かれた手紙が目に入った。
座るように促され、男爵が使用人に紅茶を用意させるところをみて話が長くなることを予感した。
「もう体の方は大丈夫なのか?」
「はい、充分休みました」
「あの日、何が起きたのか覚えている範囲で聞いても良いか?」
「はい。魔獣の叫び声で存在を確認し、誰かの「逃げろ」という声で流れに沿って走っていたんてすが途中で転んでしまい気が付いたら目の前に魔獣がいました。怖くて目を閉じていたので、その後魔獣がどうなったのかは私にもわからないです」
「…そうか、アレは君がやったのか?」
アレとは、きっと魔獣が光に包まれ消滅した事を言っているのだろう。
ゲームでは後に私の力だということが判明するが、今現在は不明のまま。ここで私が「はい、私の中に眠る聖女の力が覚醒しました」なんて自分から言うのは違うだろう。そんな自意識過剰発言は避けたい。
「私には…わかりません」
これが精一杯だった。
「そうだな…」
話が区切られるも、手紙については一向に触れられていない。これからなのだろう。男爵は紅茶で喉を潤してから、王族からの召喚についての話をするのかもしれない。貴族とはいえ、下位の男爵がパーティーでもない日に王宮に足を踏み入れることは今までになかっただろう。そんな彼に王宮への召還命令だ、緊張していつまでも口に出せないでいる。男爵の緊張が移らないように、私も紅茶を頂いた。
「…エレナ」
「(ついに来た)…はい」
「今回の狩猟大会の件で、王宮が中心となって調査が行われている。そこで一番近くにいたエレナにも事件当日の話を窺いたいと王族から直接手紙を頂いた」
「(やっぱり)…はい」
「手紙では、エレナの体調もあるので急ぐ必要はないと書かれていた。どうする?行けそうか?」
「はい、私はもう平気です」
男爵は安堵したような表情に変わる。
「そうか。このところ貴族達もあの日の話題で持ちきりなんだ。何が起きたのか早く解明してほしいと急かされていてな…」
「そうですよね…」
男爵のお父様は貴族から圧を掛けられていたのだろう。
「今日中に返事を書くが、王宮へは明日でも構わないか?」
「私は構いませんが、明日では王族の方に失礼になるのでは?」
「いや、王族もいち早く解明させたいと連絡が来ていてな。何時でも準備が出来ているので、エレナの様態が安定次第で構わないからと言われている」
聖女の力なのかを一日でも早く解明したい気持ちが伝わってくる。
なので私は明日、王宮へ向かうことに決まった。
王宮には攻略対象の一人…じゃない、二人がいる。忘れていたが、クリストフ王子には弟がいて、その彼も攻略対象の一人だ。同級生の第一王子クリストフ王子に、二つ年下の第二王子ジョルジオ王子。
聖女に決まると王宮への出入りも自由とは言わないが、男爵令嬢では叶えられない事も許される。なので、二つ離れているジョルジオ王子との学園ロマンスはなくとも恋愛が可能となる。ゲームではどちらかの王子を選ぶと、もう一人の王子が必ず嫉妬心から邪魔をしてくる。主人公を取り合う構図がプレイヤーを盛り上がらせていた。
明日はまだ出会い、自己紹介程度の関わりあいで終わる。
ちなみに、ジョルジオ王子には婚約者がいない。
もし、私がジョルジオ王子を選んでも誰も傷つけることはないってことだ。
なら私はジョルジオ王子を…って、恋愛ゲームが基の世界だからといって必ずしも誰かを好きになり攻略しなければならない訳ではない。あれはゲームだったから一人一人恋愛したが、ここは現実。
実際選択肢とは関係ない会話をすることも出来るし、イベントに参加しないという事もできる。全ては私次第。
喩えハッピーエンドを迎えたとしても、その先があり完全に選択肢の無い人生が始まる。結婚し家族が増えることもあるだろうし、喧嘩して別れたりするかもしれない。そこに「真実の愛」とまでは言わないが、偽りではない「真実の思い」がなければ関係は続かないだろう。
現実なんだから、攻略対象だけが恋愛対象ではない。
モブというキャラクターもいないんたから、すべての人が恋愛対象だと思う。
偶然すれ違った人を好きになるのも自由だし、学園で落とし物を拾った人を好きになるかもしれない。
ゲームに縛られる必要はない。
ゲーム通りの事件が起きたとしても、出会う人は私が決める事が出来る。
誰かを婚約解消させることもしたくないし、多くの男性を従えてハーレムなども考えていない。
私は普通の幸せを望む。
その間、ゲームを思い出しこれからのことを考える。
物語は筋書き通りに進み、私が選択肢を変えても起こることは同じなんだと思い知らされた。
きっと今頃男爵には王族から召喚命令の手紙が届き、そしてそこには私の名前も書かれているはず。貴族になったばかりの令嬢を王宮に召還する事は滅多になく、そこには何らかの意図がある。
今回は、狩猟大会で見せた能力が本当に私によるものなのかを確かめる為だ。そして、その力は聖女なのかを確認させられる。
王族からの要請を男爵が断るという選択肢は存在せず、私は言われるがまま王宮に足を踏み入れるのだろう。
そして、ここから本当の恋愛ゲームが動き出す。
今後の事を考えていれば、案の定使用人に男爵の執務室へと向かうよう呼ばれた。
こんこんこん
「エレナです」
「あぁ、入りなさい」
執務室に入ると、テーブルの上に置かれた手紙が目に入った。
座るように促され、男爵が使用人に紅茶を用意させるところをみて話が長くなることを予感した。
「もう体の方は大丈夫なのか?」
「はい、充分休みました」
「あの日、何が起きたのか覚えている範囲で聞いても良いか?」
「はい。魔獣の叫び声で存在を確認し、誰かの「逃げろ」という声で流れに沿って走っていたんてすが途中で転んでしまい気が付いたら目の前に魔獣がいました。怖くて目を閉じていたので、その後魔獣がどうなったのかは私にもわからないです」
「…そうか、アレは君がやったのか?」
アレとは、きっと魔獣が光に包まれ消滅した事を言っているのだろう。
ゲームでは後に私の力だということが判明するが、今現在は不明のまま。ここで私が「はい、私の中に眠る聖女の力が覚醒しました」なんて自分から言うのは違うだろう。そんな自意識過剰発言は避けたい。
「私には…わかりません」
これが精一杯だった。
「そうだな…」
話が区切られるも、手紙については一向に触れられていない。これからなのだろう。男爵は紅茶で喉を潤してから、王族からの召喚についての話をするのかもしれない。貴族とはいえ、下位の男爵がパーティーでもない日に王宮に足を踏み入れることは今までになかっただろう。そんな彼に王宮への召還命令だ、緊張していつまでも口に出せないでいる。男爵の緊張が移らないように、私も紅茶を頂いた。
「…エレナ」
「(ついに来た)…はい」
「今回の狩猟大会の件で、王宮が中心となって調査が行われている。そこで一番近くにいたエレナにも事件当日の話を窺いたいと王族から直接手紙を頂いた」
「(やっぱり)…はい」
「手紙では、エレナの体調もあるので急ぐ必要はないと書かれていた。どうする?行けそうか?」
「はい、私はもう平気です」
男爵は安堵したような表情に変わる。
「そうか。このところ貴族達もあの日の話題で持ちきりなんだ。何が起きたのか早く解明してほしいと急かされていてな…」
「そうですよね…」
男爵のお父様は貴族から圧を掛けられていたのだろう。
「今日中に返事を書くが、王宮へは明日でも構わないか?」
「私は構いませんが、明日では王族の方に失礼になるのでは?」
「いや、王族もいち早く解明させたいと連絡が来ていてな。何時でも準備が出来ているので、エレナの様態が安定次第で構わないからと言われている」
聖女の力なのかを一日でも早く解明したい気持ちが伝わってくる。
なので私は明日、王宮へ向かうことに決まった。
王宮には攻略対象の一人…じゃない、二人がいる。忘れていたが、クリストフ王子には弟がいて、その彼も攻略対象の一人だ。同級生の第一王子クリストフ王子に、二つ年下の第二王子ジョルジオ王子。
聖女に決まると王宮への出入りも自由とは言わないが、男爵令嬢では叶えられない事も許される。なので、二つ離れているジョルジオ王子との学園ロマンスはなくとも恋愛が可能となる。ゲームではどちらかの王子を選ぶと、もう一人の王子が必ず嫉妬心から邪魔をしてくる。主人公を取り合う構図がプレイヤーを盛り上がらせていた。
明日はまだ出会い、自己紹介程度の関わりあいで終わる。
ちなみに、ジョルジオ王子には婚約者がいない。
もし、私がジョルジオ王子を選んでも誰も傷つけることはないってことだ。
なら私はジョルジオ王子を…って、恋愛ゲームが基の世界だからといって必ずしも誰かを好きになり攻略しなければならない訳ではない。あれはゲームだったから一人一人恋愛したが、ここは現実。
実際選択肢とは関係ない会話をすることも出来るし、イベントに参加しないという事もできる。全ては私次第。
喩えハッピーエンドを迎えたとしても、その先があり完全に選択肢の無い人生が始まる。結婚し家族が増えることもあるだろうし、喧嘩して別れたりするかもしれない。そこに「真実の愛」とまでは言わないが、偽りではない「真実の思い」がなければ関係は続かないだろう。
現実なんだから、攻略対象だけが恋愛対象ではない。
モブというキャラクターもいないんたから、すべての人が恋愛対象だと思う。
偶然すれ違った人を好きになるのも自由だし、学園で落とし物を拾った人を好きになるかもしれない。
ゲームに縛られる必要はない。
ゲーム通りの事件が起きたとしても、出会う人は私が決める事が出来る。
誰かを婚約解消させることもしたくないし、多くの男性を従えてハーレムなども考えていない。
私は普通の幸せを望む。
20
あなたにおすすめの小説
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
私、魅了魔法なんて使ってません! なのに冷徹魔道士様の視線が熱すぎるんですけど
紗幸
恋愛
社畜女子だったユイは、気づけば異世界に召喚されていた。
慣れない魔法の世界と貴族社会の中で右往左往しながらも、なんとか穏やかに暮らし始めたある日。
なぜか王立魔道士団の団長カイルが、やたらと家に顔を出すようになる。
氷のように冷静で、美しく、周囲の誰もが一目置く男。
そんな彼が、ある日突然ユイの前で言い放った。
「……俺にかけた魅了魔法を解け」
私、そんな魔法かけてないんですけど!?
穏やかなはずの日々に彼の存在が、ユイの心を少しずつ波立たせていく。
まったりとした日常の中に、時折起こる小さな事件。
人との絆、魔法の力、そして胸の奥に芽生え始めた“想い”
異世界で、ユイは少しずつ——この世界で生きる力と、誰かを想う心を知っていく。
※タイトルのシーンは7話辺りからになります。
ゆったりと話が進みますが、よろしければお付き合いください。
※カクヨム様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる