【完結】ホラー乙女ゲームに転生しちゃった…

天冨 七緒

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ゲームに縛られる必要はない

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狩猟大会の翌日からは、男爵から充分に休養するようにと言われた。それは、学園をしばらく休みなさいという意味だった。いつまで休めば良いのかわからないが、男爵の許可が得られるまで私は屋敷から出ることなく大人しくしていた。

その間、ゲームを思い出しこれからのことを考える。
物語は筋書き通りに進み、私が選択肢を変えても起こることは同じなんだと思い知らされた。

きっと今頃男爵には王族から召喚命令の手紙が届き、そしてそこには私の名前も書かれているはず。貴族になったばかりの令嬢を王宮に召還する事は滅多になく、そこには何らかの意図がある。
今回は、狩猟大会で見せた能力が本当に私によるものなのかを確かめる為だ。そして、その力は聖女なのかを確認させられる。
王族からの要請を男爵が断るという選択肢は存在せず、私は言われるがまま王宮に足を踏み入れるのだろう。
そして、ここから本当の恋愛ゲームが動き出す。

今後の事を考えていれば、案の定使用人に男爵の執務室へと向かうよう呼ばれた。

こんこんこん

「エレナです」

「あぁ、入りなさい」

執務室に入ると、テーブルの上に置かれた手紙が目に入った。
座るように促され、男爵が使用人に紅茶を用意させるところをみて話が長くなることを予感した。

「もう体の方は大丈夫なのか?」

「はい、充分休みました」

「あの日、何が起きたのか覚えている範囲で聞いても良いか?」

「はい。魔獣の叫び声で存在を確認し、誰かの「逃げろ」という声で流れに沿って走っていたんてすが途中で転んでしまい気が付いたら目の前に魔獣がいました。怖くて目を閉じていたので、その後魔獣がどうなったのかは私にもわからないです」

「…そうか、アレは君がやったのか?」

アレとは、きっと魔獣が光に包まれ消滅した事を言っているのだろう。
ゲームでは後に私の力だということが判明するが、今現在は不明のまま。ここで私が「はい、私の中に眠る聖女の力が覚醒しました」なんて自分から言うのは違うだろう。そんな自意識過剰発言は避けたい。

「私には…わかりません」

これが精一杯だった。

「そうだな…」

話が区切られるも、手紙については一向に触れられていない。これからなのだろう。男爵は紅茶で喉を潤してから、王族からの召喚についての話をするのかもしれない。貴族とはいえ、下位の男爵がパーティーでもない日に王宮に足を踏み入れることは今までになかっただろう。そんな彼に王宮への召還命令だ、緊張していつまでも口に出せないでいる。男爵の緊張が移らないように、私も紅茶を頂いた。

「…エレナ」

「(ついに来た)…はい」

「今回の狩猟大会の件で、王宮が中心となって調査が行われている。そこで一番近くにいたエレナにも事件当日の話を窺いたいと王族から直接手紙を頂いた」

「(やっぱり)…はい」

「手紙では、エレナの体調もあるので急ぐ必要はないと書かれていた。どうする?行けそうか?」

「はい、私はもう平気です」

男爵は安堵したような表情に変わる。

「そうか。このところ貴族達もあの日の話題で持ちきりなんだ。何が起きたのか早く解明してほしいと急かされていてな…」

「そうですよね…」

男爵のお父様は貴族から圧を掛けられていたのだろう。

「今日中に返事を書くが、王宮へは明日でも構わないか?」

「私は構いませんが、明日では王族の方に失礼になるのでは?」

「いや、王族もいち早く解明させたいと連絡が来ていてな。何時でも準備が出来ているので、エレナの様態が安定次第で構わないからと言われている」

聖女の力なのかを一日でも早く解明したい気持ちが伝わってくる。
なので私は明日、王宮へ向かうことに決まった。
王宮には攻略対象の一人…じゃない、二人がいる。忘れていたが、クリストフ王子には弟がいて、その彼も攻略対象の一人だ。同級生の第一王子クリストフ王子に、二つ年下の第二王子ジョルジオ王子。
聖女に決まると王宮への出入りも自由とは言わないが、男爵令嬢では叶えられない事も許される。なので、二つ離れているジョルジオ王子との学園ロマンスはなくとも恋愛が可能となる。ゲームではどちらかの王子を選ぶと、もう一人の王子が必ず嫉妬心から邪魔をしてくる。主人公を取り合う構図がプレイヤーを盛り上がらせていた。
明日はまだ出会い、自己紹介程度の関わりあいで終わる。

ちなみに、ジョルジオ王子には婚約者がいない。
もし、私がジョルジオ王子を選んでも誰も傷つけることはないってことだ。
なら私はジョルジオ王子を…って、恋愛ゲームが基の世界だからといって必ずしも誰かを好きになり攻略しなければならない訳ではない。あれはゲームだったから一人一人恋愛したが、ここは現実。
実際選択肢とは関係ない会話をすることも出来るし、イベントに参加しないという事もできる。全ては私次第。
喩えハッピーエンドを迎えたとしても、その先があり完全に選択肢の無い人生が始まる。結婚し家族が増えることもあるだろうし、喧嘩して別れたりするかもしれない。そこに「真実の愛」とまでは言わないが、偽りではない「真実の思い」がなければ関係は続かないだろう。
現実なんだから、攻略対象だけが恋愛対象ではない。
モブというキャラクターもいないんたから、すべての人が恋愛対象だと思う。
偶然すれ違った人を好きになるのも自由だし、学園で落とし物を拾った人を好きになるかもしれない。
ゲームに縛られる必要はない。
ゲーム通りの事件が起きたとしても、出会う人は私が決める事が出来る。
誰かを婚約解消させることもしたくないし、多くの男性を従えてハーレムなども考えていない。

私は普通の幸せを望む。
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