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王宮
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王宮へ向かう馬車の中は沈黙が支配し、お父様も瞼を閉じ冷静さを保つも指が緊張を表していた。私はこの後王宮で何が起き、どんな結果になるのか知っているので緊張はあっても不安はない。
馬車が停車し到着したのかと窓の外を確認する。数名の騎士に囲まれ、訪問名簿と照らし合わせ馬車そのものを調査された。王宮の敷地に入るだけで念入りに調べられた。全ての貴族がそうなのか、王宮に不慣れな男爵だから時間が掛かっているのか。怪しいものを持参していないと確信してはいても王宮で許可されていない物を所持しているかもしれないと思うと不安になる。騎士に囲まれ検査を終えると問題ないと判断され、馬車が再び動き出し門を抜けた。
コンコンコン
合図を受け、漸く王宮に到着した。馬車内の施錠を解き扉を開け、男爵から先に降り私も続いた。
「うわぁっ」
ゲームで見たが、本物の王宮は迫力が違い圧倒された。
「ワンダーソン様」
馬車から降りれば私達の到着を執事が待ち構えていた。
「はい」
「私が謁見の間まで案内させていただきます」
執事の案内で謁見の間まで歩くも、男爵家の屋敷と王宮では広さが違う。歩いているのに風景が変わらず本当に辿り着けるのか、実際は迷路の中に迷い込んでいるような感覚で歩く。執事とは決してぐれないよう距離を一定に保ち続けた。
「こちらでお待ちください」
「はい」
謁見の間を護るように両側にいる騎士の手により扉が開かれる。広い空間に案内され、国王陛下の登場をを中央で立ち止まり男爵と二人で待つ。荘厳な雰囲気が更なる緊張を呼び、耳元に心臓があるのではと思うくらい鼓動が早まる。落ち着かせるため深呼吸を繰り返していると、数名の騎士が現れ男爵は頭を下げたので私も習いたてのカーテシーの体勢で待った。
感覚が研ぎ澄まされているのか、足音や衣擦れの小さな音を捉え国王陛下なのかと予想する。
「頭を上げよ」
国王陛下の許可を得て頭を上げると、国王と共にクリストフ王子も一緒だった。
「ロナルド・ワンダーソンにございます。国王陛下にご挨拶申し上げます。こちらは、娘のエレナです」
「…エ…レナ・ワンダーソンにございます」
本物の国王陛下を前にすると頭の中が真っ白になり、自身の名前さえも忘れそうになった。
「エレナ嬢、狩猟大会では大変だったな。体調の方は問題ないか?」
「はいっ、もう回復し問題ありません」
緊張していると実感すると、国王陛下の問いにも被せぎみに答えてしまった。
「それは良かった。エレナ嬢は以前森の奥に住んでいたのだったか?」
「はい」
クリストフ王子が私の事を知っていたのには驚いたが、国王陛下にも知られているとは思わなかった。もしかして、聖女の可能性がありと言うことで調査されていたのかもしれないと思うと、過去の自分の行動を思い返していた。
この世界に来て間もないので、調べられても変な過去は出てこないだろう…
本物のエレナが悪人でなければ…
森の奥にひっそりと暮らす夫婦って、悪く考えると怖いよね…
盗賊一家だったり、犯罪組織の隠れ家だったり…えっ?違うよね?
「その時、不幸にも両親を…と聞いたが事実か?」
「…はい、長雨による土砂災害に巻き込まれ…」
「そうだったか、それは辛いな。もしなにか困ったことがあればクリストフに言いなさい」
エレナになって一日で両親を災害で失ったので、私にエレナの両親の記憶はない。辛かったな?と聞かれても実感がなく返答に困る。
国王陛下の横に立つクリストフ王子も、優しく微笑み頷いた。
陛下からの許可を得たからといって、本当に私がクリストフ王子を頼ってしまえば悪役令嬢が黙っていないだろう。そうなれば本格的に私と王子の恋愛ゲームが始まってしまう。
「…ぁりがとう…ございます」
感謝しつつ、頼ることはないと決まっていた。
「して、エレナ嬢は稀な光属性だったと聞いたがそれは本当か?」
国王陛下は本題一つ目に入った。
「はい、学園の検査で光属性だと判定されました」
私が光属性だと認めると、国王陛下は満足げに笑った。
やはり、魔法の世界。貴重な光属性は王族も欲している能力らしい。
「そうか。男爵は光属性と知って養子に迎えたのか?」
「いえ、私の管理する森の災害にエレナの両親が巻き込まれたのを知り養子に迎えました。その後、光属性だと判明しました」
男爵は私が光属性だからではなく善意からで、必死に「邪な気持ちは無いんです」と主張していた。
国王陛下は疑っていたが、私には分かる。
男爵という人物は、とても優しい。優しいから、災害が起きて危険を省みずにいち早く自らの目で状況を確認しに来たのだと今なら思える。
私はいい人の養子になった…
馬車が停車し到着したのかと窓の外を確認する。数名の騎士に囲まれ、訪問名簿と照らし合わせ馬車そのものを調査された。王宮の敷地に入るだけで念入りに調べられた。全ての貴族がそうなのか、王宮に不慣れな男爵だから時間が掛かっているのか。怪しいものを持参していないと確信してはいても王宮で許可されていない物を所持しているかもしれないと思うと不安になる。騎士に囲まれ検査を終えると問題ないと判断され、馬車が再び動き出し門を抜けた。
コンコンコン
合図を受け、漸く王宮に到着した。馬車内の施錠を解き扉を開け、男爵から先に降り私も続いた。
「うわぁっ」
ゲームで見たが、本物の王宮は迫力が違い圧倒された。
「ワンダーソン様」
馬車から降りれば私達の到着を執事が待ち構えていた。
「はい」
「私が謁見の間まで案内させていただきます」
執事の案内で謁見の間まで歩くも、男爵家の屋敷と王宮では広さが違う。歩いているのに風景が変わらず本当に辿り着けるのか、実際は迷路の中に迷い込んでいるような感覚で歩く。執事とは決してぐれないよう距離を一定に保ち続けた。
「こちらでお待ちください」
「はい」
謁見の間を護るように両側にいる騎士の手により扉が開かれる。広い空間に案内され、国王陛下の登場をを中央で立ち止まり男爵と二人で待つ。荘厳な雰囲気が更なる緊張を呼び、耳元に心臓があるのではと思うくらい鼓動が早まる。落ち着かせるため深呼吸を繰り返していると、数名の騎士が現れ男爵は頭を下げたので私も習いたてのカーテシーの体勢で待った。
感覚が研ぎ澄まされているのか、足音や衣擦れの小さな音を捉え国王陛下なのかと予想する。
「頭を上げよ」
国王陛下の許可を得て頭を上げると、国王と共にクリストフ王子も一緒だった。
「ロナルド・ワンダーソンにございます。国王陛下にご挨拶申し上げます。こちらは、娘のエレナです」
「…エ…レナ・ワンダーソンにございます」
本物の国王陛下を前にすると頭の中が真っ白になり、自身の名前さえも忘れそうになった。
「エレナ嬢、狩猟大会では大変だったな。体調の方は問題ないか?」
「はいっ、もう回復し問題ありません」
緊張していると実感すると、国王陛下の問いにも被せぎみに答えてしまった。
「それは良かった。エレナ嬢は以前森の奥に住んでいたのだったか?」
「はい」
クリストフ王子が私の事を知っていたのには驚いたが、国王陛下にも知られているとは思わなかった。もしかして、聖女の可能性がありと言うことで調査されていたのかもしれないと思うと、過去の自分の行動を思い返していた。
この世界に来て間もないので、調べられても変な過去は出てこないだろう…
本物のエレナが悪人でなければ…
森の奥にひっそりと暮らす夫婦って、悪く考えると怖いよね…
盗賊一家だったり、犯罪組織の隠れ家だったり…えっ?違うよね?
「その時、不幸にも両親を…と聞いたが事実か?」
「…はい、長雨による土砂災害に巻き込まれ…」
「そうだったか、それは辛いな。もしなにか困ったことがあればクリストフに言いなさい」
エレナになって一日で両親を災害で失ったので、私にエレナの両親の記憶はない。辛かったな?と聞かれても実感がなく返答に困る。
国王陛下の横に立つクリストフ王子も、優しく微笑み頷いた。
陛下からの許可を得たからといって、本当に私がクリストフ王子を頼ってしまえば悪役令嬢が黙っていないだろう。そうなれば本格的に私と王子の恋愛ゲームが始まってしまう。
「…ぁりがとう…ございます」
感謝しつつ、頼ることはないと決まっていた。
「して、エレナ嬢は稀な光属性だったと聞いたがそれは本当か?」
国王陛下は本題一つ目に入った。
「はい、学園の検査で光属性だと判定されました」
私が光属性だと認めると、国王陛下は満足げに笑った。
やはり、魔法の世界。貴重な光属性は王族も欲している能力らしい。
「そうか。男爵は光属性と知って養子に迎えたのか?」
「いえ、私の管理する森の災害にエレナの両親が巻き込まれたのを知り養子に迎えました。その後、光属性だと判明しました」
男爵は私が光属性だからではなく善意からで、必死に「邪な気持ちは無いんです」と主張していた。
国王陛下は疑っていたが、私には分かる。
男爵という人物は、とても優しい。優しいから、災害が起きて危険を省みずにいち早く自らの目で状況を確認しに来たのだと今なら思える。
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