20 / 52
聖女に…
しおりを挟む
コンコンコン
「司祭様が到着されました」
新たな登場人物の存在に、国王陛下が頷くと扉が開かれる。現れたのは数名の侍者と司祭。私が今日王宮に呼ばれたのは、狩猟大会で発揮した力が光属性のものか、それとも類い稀な聖女の力なのかを判断するため。聖女なのかを判断できるのは司祭のみ。
「お待たせいたしました」
本来であれば聖女認定儀式は教会で行われる。なので、今回の私は異例中の異例なこと。それだけ、皆が私を聖女ではないかと期待していることになる。
これで私が聖女でなければ居たたまれないが、私は聖女だと知っている。
司祭の後ろに侍者二人が箱を持参して控えていた。三人は国王陛下に一礼し、司祭が合図すると二人の侍者は準備を始めた。手袋をして台座を作り、大きな水晶を取り出した。
落としてはいけないという二人の緊張は私にも伝わる。
黙々と準備する二人を眺めていると、司祭の視線が私にあることに気が付いた。司祭と目線が合うと優しく微笑まれ頷かれる。
「準備が整いました」
侍者は準備を整え終わると水晶から離れた。
「エレナ嬢、こちらは司祭のピエール。本日エレナ嬢の聖女認定を執り行う」
クリストフ王子から司祭の紹介を受けた。
「初めまして、私は司祭のピエール・ワンダーソンだ」
「…ワンダーソン?」
ワンダーソンって名字はこの国には沢山あるものなの?
「あぁ、ロナルドは私の弟。私は君の叔父にあたる」
叔父さん?確かに言われると二人は似ているような…弟が男爵を引き継ぎ、兄は司祭の道に進むとは珍しい。何か訳ありだったりするのか?
「初めまして、この度ワンダーソン男爵の養女になりましたエレナ・ワンダーソンです。よろしくお願いします」
「よろしく、聖女認定は魔力検査と変わらないから緊張することはない。では、こちらに」
司祭に導かれると催眠にかかったように、用意された水晶の前まで歩いていた。
「ここに手を翳して、魔力を流してください」
司祭の指示通りに手を翳し、魔力を流す。
水晶が何色に光るかで属性が分かるのは学園で行った検査と一緒。ここで違うのは、この水晶は聖女の力に触れると水晶の中だけに留まることなく、中心からオーロラのように光が溢れだし辺りを光で包み込む。
「おぉー」
私の魔力はゲームの通り、聖女と呼ばれるものだった。
「エレナ嬢、貴方は我が国たった一人の聖女と認定されました」
司祭により私が聖女だと認定されてしまった。
「えっと…ありがとうございます…」
「聖女の能力は私共も全てを把握しているわけではありません。ですので今後何かあれば私の方に連絡をしていただきたい」
司祭も興奮を押さえるも、満面の笑みは隠しきれていなかった。
聖女と司祭はどうしても関係が親密になってしまう…
今、この国にいる聖女が私だけとなればこのような反応も仕方がない。
「はい」
「ん?司祭よ、令嬢は教会で保護する必要があるんじゃないのか?」
国王陛下は司祭に尋ねた。
「本来であれば私達と教会で寝食を共にしてほしいのが理想ですが、貴族になったばかりと聞いております。学園にも通い始めた令嬢を、更に別の生活環境に置くのは負担に感じるのではないでしょうか?」
司祭は興奮しながらも、冷静に私の生活環境を考えてくれていた。
「ん~確かにそうだな、だがそれでは聖女の安全が保証されないだろう?」
私は国王陛下と司祭の会話に口を挟むことなく、成り行きを見続けるしか出来ない。私が聖女になってしまったばかりに、偉い大人達を困らせてしまっている。
「聖女には常に護衛騎士を配置するべきです」
「そうだな、第二騎士団を着かせよう」
二人は互いに納得できる解決策を見つけ、私を確認し頷いた。
「学園では私とサリモン・フィルデガード、マシューズ・カントルークにも協力してもらいます」
うわっ…王子から攻略対象の名前が出てしまった。
当然といえば当然なのかもしれない。彼らは王子の側近であり、信頼のおける者。
「そうだな、それに教師にも事前に話しておくべきだな」
あぁ…嫌な予感がする。
「そうですね、ジャック・グリード先生が適任かと」
…王子が挙げた人物は、教師だが普通の教師ではなく攻略対象でもある教師だった。
これで攻略対象全員が揃ってしまう事になる。
乙女ゲームにならないように気を付けて動いていても、運命に抗うことは簡単ではなかった。
「司祭様が到着されました」
新たな登場人物の存在に、国王陛下が頷くと扉が開かれる。現れたのは数名の侍者と司祭。私が今日王宮に呼ばれたのは、狩猟大会で発揮した力が光属性のものか、それとも類い稀な聖女の力なのかを判断するため。聖女なのかを判断できるのは司祭のみ。
「お待たせいたしました」
本来であれば聖女認定儀式は教会で行われる。なので、今回の私は異例中の異例なこと。それだけ、皆が私を聖女ではないかと期待していることになる。
これで私が聖女でなければ居たたまれないが、私は聖女だと知っている。
司祭の後ろに侍者二人が箱を持参して控えていた。三人は国王陛下に一礼し、司祭が合図すると二人の侍者は準備を始めた。手袋をして台座を作り、大きな水晶を取り出した。
落としてはいけないという二人の緊張は私にも伝わる。
黙々と準備する二人を眺めていると、司祭の視線が私にあることに気が付いた。司祭と目線が合うと優しく微笑まれ頷かれる。
「準備が整いました」
侍者は準備を整え終わると水晶から離れた。
「エレナ嬢、こちらは司祭のピエール。本日エレナ嬢の聖女認定を執り行う」
クリストフ王子から司祭の紹介を受けた。
「初めまして、私は司祭のピエール・ワンダーソンだ」
「…ワンダーソン?」
ワンダーソンって名字はこの国には沢山あるものなの?
「あぁ、ロナルドは私の弟。私は君の叔父にあたる」
叔父さん?確かに言われると二人は似ているような…弟が男爵を引き継ぎ、兄は司祭の道に進むとは珍しい。何か訳ありだったりするのか?
「初めまして、この度ワンダーソン男爵の養女になりましたエレナ・ワンダーソンです。よろしくお願いします」
「よろしく、聖女認定は魔力検査と変わらないから緊張することはない。では、こちらに」
司祭に導かれると催眠にかかったように、用意された水晶の前まで歩いていた。
「ここに手を翳して、魔力を流してください」
司祭の指示通りに手を翳し、魔力を流す。
水晶が何色に光るかで属性が分かるのは学園で行った検査と一緒。ここで違うのは、この水晶は聖女の力に触れると水晶の中だけに留まることなく、中心からオーロラのように光が溢れだし辺りを光で包み込む。
「おぉー」
私の魔力はゲームの通り、聖女と呼ばれるものだった。
「エレナ嬢、貴方は我が国たった一人の聖女と認定されました」
司祭により私が聖女だと認定されてしまった。
「えっと…ありがとうございます…」
「聖女の能力は私共も全てを把握しているわけではありません。ですので今後何かあれば私の方に連絡をしていただきたい」
司祭も興奮を押さえるも、満面の笑みは隠しきれていなかった。
聖女と司祭はどうしても関係が親密になってしまう…
今、この国にいる聖女が私だけとなればこのような反応も仕方がない。
「はい」
「ん?司祭よ、令嬢は教会で保護する必要があるんじゃないのか?」
国王陛下は司祭に尋ねた。
「本来であれば私達と教会で寝食を共にしてほしいのが理想ですが、貴族になったばかりと聞いております。学園にも通い始めた令嬢を、更に別の生活環境に置くのは負担に感じるのではないでしょうか?」
司祭は興奮しながらも、冷静に私の生活環境を考えてくれていた。
「ん~確かにそうだな、だがそれでは聖女の安全が保証されないだろう?」
私は国王陛下と司祭の会話に口を挟むことなく、成り行きを見続けるしか出来ない。私が聖女になってしまったばかりに、偉い大人達を困らせてしまっている。
「聖女には常に護衛騎士を配置するべきです」
「そうだな、第二騎士団を着かせよう」
二人は互いに納得できる解決策を見つけ、私を確認し頷いた。
「学園では私とサリモン・フィルデガード、マシューズ・カントルークにも協力してもらいます」
うわっ…王子から攻略対象の名前が出てしまった。
当然といえば当然なのかもしれない。彼らは王子の側近であり、信頼のおける者。
「そうだな、それに教師にも事前に話しておくべきだな」
あぁ…嫌な予感がする。
「そうですね、ジャック・グリード先生が適任かと」
…王子が挙げた人物は、教師だが普通の教師ではなく攻略対象でもある教師だった。
これで攻略対象全員が揃ってしまう事になる。
乙女ゲームにならないように気を付けて動いていても、運命に抗うことは簡単ではなかった。
19
あなたにおすすめの小説
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる