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婚約者という名の悪役令嬢
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その後のお祭りイベントは、他の攻略対象が現れることなく普通のお祭りだった。
今回のイベントでフラグを折っていたつもりでも、実際はハーレムルートに入っているというのが分かった。これからどうするべきかを考えていると、あっという間に残りの休暇も終わっていた。
そして私は忘れていたが、攻略対象とお祭りに参加すると偶然その場を目撃した者により休暇中に噂が広まる。
学園が始まると更に噂は盛り上がり、婚約者達が悪役令嬢達として動き出す。
つまりは、イヤガラセが始まるのだ。
「ワンダーソン令嬢よろしいかしら?」
「…はぃ」
久しぶりの学園に足を踏み入れ、注目されていたが「聖女」とは別の視線に気付いた。周囲の生徒はコソコソと話していても耳に入り、内容に驚く。
しまったと思っても既に遅く、怒りを含んだ声に呼び止められた。
先ず始めに現れたのはクリストフ王子の婚約者、クレアベール・ジョバルディー公爵令嬢だった。
「貴方は平民ではなく、男爵令嬢ですのよね?」
「…はぃ」
「では、貴族令嬢の基本的マナーはご存知かしら?」
「…基本的…マナー…ですか?」
「えぇ。殿方に対し過度な接触、並びに婚約者のいる方に対し密着行為は淑女に反していると考えたことはないのかしら?」
接触…密着…した覚えはないが何て答えたら良いのか…
「…」
言葉が出てこなかった。
「平民であれば、このようなことは申しませんが貴方は貴族。誰がなんと言おうと上に立つ者として相応しい行動をとらなければなりません」
「…はい」
反論はありません、その通りだと思います…
「私が何に対して言っているのか分かりますよね?」
「はい」
王子との近すぎる距離、婚約者を差し置いて親密すぎるサリモン、他者に興味の無いマシューズさえ虜にした。と噂されていた。
どれも誤解だが、他者から見れば勘違いさせてしまっているのは私…
「身分を考えた行動を気に掛けるべきよ」
「はい…申し訳ありません」
私が頭を下げると、クレアベールはそれ以上言うことはなく立ち去った。
学園中に広まりつつある噂を消すことは出来ないが、クレアベールからの忠告と今後私が行動を改めれば騒がしい日常も落ち着くはず。多分、この噂を沈静化させるためにクレアベールが現れたのだ。今回の忠告も取り巻きなどは引き連れることはないが、多少の人目のある場所で行われたのもクレアベールの意図だろう。王子の婚約者があれで終わらせたのを周囲に目撃させ、私に何かあればクレアベールが諌めてくれる。
言い訳ではないが、私もこの状況は望んでいないので彼女の行動は有り難かった。
ヒロインの行く先々に攻略対象が待ち構えているので、遠回りしてでもそちらに行かないよう行動するも、いつの間にかレールに乗ってしまっている。いくら方向転換しても行き着く先は同じ。
皆がそちらに行くように手引きしていると感じるほど、私は運命に逆らえないのだろうか?
あれから気を付けてはいるものの、学園にいる間は護衛としてサリモンが常に傍にいて、噂を否定するも行動が伴っていなかった。それに、聖女として国が補助しているのを見せるためにマシューズが服や身に付ける装飾品を用意している。それを詳しく知らない者はマシューズが個人的にエレナ・ワンダーソンに贈り物をしていると騒ぎ立て噂を盛り上げていた。
そして再び…
「ワンダーソン令嬢」
「…はい」
「以前挨拶出来ませんでしたが、私マシューズの婚約者エレンターナ・タロンヴィスと申します」
「タロンヴィス様…私はエレナ・ワンダーソンと申します」
悪役令嬢その三との初めての対面。
「マシューズが今、どのような立場なのか理解しております。ですが、ここまで噂が広まってしまいますと、婚約者の私が目を瞑り続けるのは我が家門の名誉に関わります」
「…はい」
婚約者が婚約者でない者に贈り物をすると良からぬ噂がたち、贈り物を受け取ってしまった令嬢は肩身の狭い思いをする…では、婚約者が婚約者でない者に贈り物をしていることを知ってしまったら婚約者としては動かざるを得ない…
「貴方が正式に聖女と公表されるまでは、私は貴方とマシューズの関係に苦言を呈しておかなければなりません」
「…はい」
とてもごもっともだと理解しております。
「…平民だった貴方には慣れないかもしれませんが、貴族とは常に他者の視線に晒されています。付け入られる隙を与えてはいけません」
「えっ…」
「私からはそれだけです。ごきげんよう」
「…ご…ごきげんよう」
クレアベール様同様エレンターナ様からも助言のような忠告を受けた。
二人とも貴族として当然の注意であり、ゲームなどでよくある言いがかりではなかった。
私も出来るなら周囲に迷惑を掛けたくなく、どうにかと動くも他の転生者のように上手く立ち回ることが出来ないでいる。これでサリモンの婚約者まで現れてしまったら…と不安に思ったいたが、サリモンの婚約者からは接触がなかった。
気を張っていた分拍子抜けだが、噂は消えることがなく好奇の目にさらされ続けた。
今回のイベントでフラグを折っていたつもりでも、実際はハーレムルートに入っているというのが分かった。これからどうするべきかを考えていると、あっという間に残りの休暇も終わっていた。
そして私は忘れていたが、攻略対象とお祭りに参加すると偶然その場を目撃した者により休暇中に噂が広まる。
学園が始まると更に噂は盛り上がり、婚約者達が悪役令嬢達として動き出す。
つまりは、イヤガラセが始まるのだ。
「ワンダーソン令嬢よろしいかしら?」
「…はぃ」
久しぶりの学園に足を踏み入れ、注目されていたが「聖女」とは別の視線に気付いた。周囲の生徒はコソコソと話していても耳に入り、内容に驚く。
しまったと思っても既に遅く、怒りを含んだ声に呼び止められた。
先ず始めに現れたのはクリストフ王子の婚約者、クレアベール・ジョバルディー公爵令嬢だった。
「貴方は平民ではなく、男爵令嬢ですのよね?」
「…はぃ」
「では、貴族令嬢の基本的マナーはご存知かしら?」
「…基本的…マナー…ですか?」
「えぇ。殿方に対し過度な接触、並びに婚約者のいる方に対し密着行為は淑女に反していると考えたことはないのかしら?」
接触…密着…した覚えはないが何て答えたら良いのか…
「…」
言葉が出てこなかった。
「平民であれば、このようなことは申しませんが貴方は貴族。誰がなんと言おうと上に立つ者として相応しい行動をとらなければなりません」
「…はい」
反論はありません、その通りだと思います…
「私が何に対して言っているのか分かりますよね?」
「はい」
王子との近すぎる距離、婚約者を差し置いて親密すぎるサリモン、他者に興味の無いマシューズさえ虜にした。と噂されていた。
どれも誤解だが、他者から見れば勘違いさせてしまっているのは私…
「身分を考えた行動を気に掛けるべきよ」
「はい…申し訳ありません」
私が頭を下げると、クレアベールはそれ以上言うことはなく立ち去った。
学園中に広まりつつある噂を消すことは出来ないが、クレアベールからの忠告と今後私が行動を改めれば騒がしい日常も落ち着くはず。多分、この噂を沈静化させるためにクレアベールが現れたのだ。今回の忠告も取り巻きなどは引き連れることはないが、多少の人目のある場所で行われたのもクレアベールの意図だろう。王子の婚約者があれで終わらせたのを周囲に目撃させ、私に何かあればクレアベールが諌めてくれる。
言い訳ではないが、私もこの状況は望んでいないので彼女の行動は有り難かった。
ヒロインの行く先々に攻略対象が待ち構えているので、遠回りしてでもそちらに行かないよう行動するも、いつの間にかレールに乗ってしまっている。いくら方向転換しても行き着く先は同じ。
皆がそちらに行くように手引きしていると感じるほど、私は運命に逆らえないのだろうか?
あれから気を付けてはいるものの、学園にいる間は護衛としてサリモンが常に傍にいて、噂を否定するも行動が伴っていなかった。それに、聖女として国が補助しているのを見せるためにマシューズが服や身に付ける装飾品を用意している。それを詳しく知らない者はマシューズが個人的にエレナ・ワンダーソンに贈り物をしていると騒ぎ立て噂を盛り上げていた。
そして再び…
「ワンダーソン令嬢」
「…はい」
「以前挨拶出来ませんでしたが、私マシューズの婚約者エレンターナ・タロンヴィスと申します」
「タロンヴィス様…私はエレナ・ワンダーソンと申します」
悪役令嬢その三との初めての対面。
「マシューズが今、どのような立場なのか理解しております。ですが、ここまで噂が広まってしまいますと、婚約者の私が目を瞑り続けるのは我が家門の名誉に関わります」
「…はい」
婚約者が婚約者でない者に贈り物をすると良からぬ噂がたち、贈り物を受け取ってしまった令嬢は肩身の狭い思いをする…では、婚約者が婚約者でない者に贈り物をしていることを知ってしまったら婚約者としては動かざるを得ない…
「貴方が正式に聖女と公表されるまでは、私は貴方とマシューズの関係に苦言を呈しておかなければなりません」
「…はい」
とてもごもっともだと理解しております。
「…平民だった貴方には慣れないかもしれませんが、貴族とは常に他者の視線に晒されています。付け入られる隙を与えてはいけません」
「えっ…」
「私からはそれだけです。ごきげんよう」
「…ご…ごきげんよう」
クレアベール様同様エレンターナ様からも助言のような忠告を受けた。
二人とも貴族として当然の注意であり、ゲームなどでよくある言いがかりではなかった。
私も出来るなら周囲に迷惑を掛けたくなく、どうにかと動くも他の転生者のように上手く立ち回ることが出来ないでいる。これでサリモンの婚約者まで現れてしまったら…と不安に思ったいたが、サリモンの婚約者からは接触がなかった。
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