【完結】ホラー乙女ゲームに転生しちゃった…

天冨 七緒

文字の大きさ
32 / 52

私を心配してくれる友人…

しおりを挟む
あれから攻略対象の婚約者達からは何もないが、何も知らない貴族達は面白おかしく噂を広げていた。それなのに、見えないところでは別の思惑が動き出している。
何が起きているのかというと、男爵家には大量の婚約希望の手紙が届き、教室では自称エレナの親友が増えた。
光属性だけでなく聖女という称号を与えられた貴重な存在として目立っていた。「聖女」と公表された訳ではないが、王子の側近達が周囲を囲んでいれば察してしまう。

入学当時に平民から男爵となった過去は一瞬で広まり知られているので、平民の生徒は仲間のように異常な程の親密さを演じながら接し、貴族達は養女となった先が男爵位というのを良いことに権力でエレナを取り込もうとしていた。
多くの者がエレナを利用しようと考える中、極少数がエレナを拒絶している。
それは、婚約者がエレナに興味を持ち出した令嬢と、同じ平民でありながら特別を手にしたエレナに対して嫉妬している者達だった。
だからといって彼らに何かができる訳でもなく、遠くから嫌味を言うくらいだった。それでも精神的に疲れ始めていた。

「大丈夫?」

私に心配の声を掛けてくれたのは、フィリップス子爵令嬢だった。

「…平気です」

「皆、ワンダーソン令嬢に対してどう接して良いのか分からないでいるのね」

「私…男爵令嬢で…」

「えぇ、光属性持ちの聖女と判定された男爵令嬢…大抵の場合は、高位貴族が先頭となりワンダーソン令嬢への対応を明確にするのだけど、様々な立場が難しくしているわ」

「様々な立場…」

貴族特有の?

「約二十年振りの聖女が第一王子と同じ年代に誕生。神から与えられた奇跡、聖女の能力を王家に取り入れるべきでは?という話が持ち上がっているらしいの」

「王家に取り入れる…第二妃って事ですか?」

もう、そんな話が出ているの?

「いいえ、王妃って事です」

王妃…

「それだと…」

「そう、クレアベール様とは婚約解消。そうなった時、ジョバルディー公爵側に付いている貴族はワンダーソン男爵に鞍替えするのか、それとも反王族派になるのか、貴族達は考えあぐねいているの。その親の緊張が私達にも伝染し学園でも、このハッキリとしない状況に不安を抱えた生徒の感情に次々と引きずられている状態ね」

「私は王妃なんて考えてません」

ゲームでも誰一人婚約解消はしなかったし、私は王妃にもなるつもりもない。

「…あなたがそうであっても、私達は貴族であり国民の一人。国の利益になると判断されれば私達は従うしかないわ。王命による結婚も珍しくないのが貴族だもの」

そうだ、ここは貴族社会。国王陛下の命令は絶対的であり、政略結婚も当然のごとく受け入れられる世界。寧ろ政略結婚は貴族の証明のようなもの…

聖女とは万人を幸せにする存在ではないの?

「一人で辛い時は私に話して。私に何か出来るか分からないけどワンダーソン令嬢は一人じゃないわ」

…フィリップス子爵令嬢はゲームのように私を助けてくれた。
キャラクターからくるものなのか、これが本来の性格なのか私には判断出来ないが、一人ぼっちの世界で彼女の存在は大きくなっている。
今日のハーフアップな髪型は彼女を大人っぽく見せた。

「…今日は黄色なんですね」

「へ?」

私が前触れもなく色について話したので、フィリップス令嬢はなんの事か分からないでいた。

「教会で会った時はピンクだったので。黄色もフィリップス令嬢にとてもよくお似合いです」

「ありがとうございます、私…黄色が好きなんです」

フィリップス令嬢の花のような笑顔に私も癒された。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

私、魅了魔法なんて使ってません! なのに冷徹魔道士様の視線が熱すぎるんですけど

紗幸
恋愛
社畜女子だったユイは、気づけば異世界に召喚されていた。 慣れない魔法の世界と貴族社会の中で右往左往しながらも、なんとか穏やかに暮らし始めたある日。 なぜか王立魔道士団の団長カイルが、やたらと家に顔を出すようになる。 氷のように冷静で、美しく、周囲の誰もが一目置く男。 そんな彼が、ある日突然ユイの前で言い放った。 「……俺にかけた魅了魔法を解け」 私、そんな魔法かけてないんですけど!? 穏やかなはずの日々に彼の存在が、ユイの心を少しずつ波立たせていく。 まったりとした日常の中に、時折起こる小さな事件。 人との絆、魔法の力、そして胸の奥に芽生え始めた“想い” 異世界で、ユイは少しずつ——この世界で生きる力と、誰かを想う心を知っていく。 ※タイトルのシーンは7話辺りからになります。 ゆったりと話が進みますが、よろしければお付き合いください。 ※カクヨム様にも投稿しています。

処理中です...