【完結】ホラー乙女ゲームに転生しちゃった…

天冨 七緒

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聖女とは…

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あれから私は悪意ある言葉に敏感になり、分かりやすく落ち込むようにした。
そうすると王子が優しく慰めてくれ、私の傍にいる時間が長くなるからだ。
私といるということは、悪役令嬢との時間が減っているのだろうと考えると笑みが生まれた。

「…私といるとジョバルディー様が誤解されてしまいますよね?」

「そのようなことを心配する必要はないから安心してくれ」

クリストフ王子の言葉は、「私達の関係は既に破綻しているから気にする必要はない」とも取れるが、今回のは「私達の関係は強固なもので、聖女など障害にもならない」と言われているようだった。

「…良かったです。私、ジョバルディー様と仲良くしたいですから」

ヒロインが良く言いそうな台詞を口にし、攻略対象に送るザ・ヒロインの微笑みをクリストフ王子に向けた。私は私が嫌いな鈍感ヒロインを演じていることに気付いていたが、止められなくなっていた。

王子を攻略したいという気持ちではなく、悪役令嬢に勝ちたいという気持ちに支配され自分自身を制御できなくなっている。

それからも私への些細な嫌がらせは続くも、常に傍には攻略対象やメインキャラ達が固めてくれていた。イケメンに囲まれて少し優越感も生まれていたが、それ以上に嫌がらせを受けているのだからこれくらいは許されるのだと自分に言い聞かせていた。
私はどこかゲームのように振る舞ったとしても、誰も婚約解消することなく傷付かないのだからこのくらいしても良いだろうと思い始めている。

この頃には私の中に二人の私がいた。

悪役令嬢なんだがら皆に嫌われる存在でなければならないのに、皆にフォローされるなんておかしい「悪者にしてやれ」という私と、自身の婚約者に近付いている人物に苦言を呈するのは当然で「私が控えるべき」という私…天使と悪魔ではないが、一人葛藤していた。

「私が控えるべき」とは思っていても、クレアベールの発言を聞くとどうしても我慢できなくなってしまう。それでもこれ以上醜い感情に支配されないように悪役令嬢ではなく聖女についてを考えることにした。
私の能力は国にとって必要なものなんだろうが、私自身が全く理解していない。先生も司祭も明確な事は話してくれなかった。なので、放課後は図書館に通い過去の聖女についての文献を徹底的に読み込んだ。読み込んだといっても大した数はなく、何冊読んでも同じことしか書かれていなかった。「特別な能力」「王宮の保護下」「誰も素顔を拝見することができない程の存在」国にとって掛け替えのない存在としか分からなかった。
貴重さ故に死因や享年何年だったのかも、はっきりとは記載されていない。
聖女はどんな人物でいったい何をしたんだろうか?
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